クルマの購入と貯蓄ペースアップのアドバイス、お願いします
皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、今後貯蓄ペースを上げたいと考える25歳の会社員男性。同時に仕事のモチベーション維持のため、クルマを購入したいとも考えているが、はたして購入は可能かどうか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
仕事のやる気を出すためにクルマを購入したい
■相談者
まるさん（仮名）
男性／会社員／25歳
神奈川県／社員寮
■家族構成
一人暮らし
■相談内容
お金が思うように貯まらず、今後どのように貯蓄をしていけばよいかご相談させてください。大学卒業後～2年間は転勤で地方におり、帰省の交通費や遊びに使い込み全く貯金をしていませんでした。2年前に関東に戻り入寮したことと給与・賞与が上がったため、帰省費用もなくなり1年で150万円程貯めることができましたが、家賃も水道光熱費もかからない割には貯まっていないと感じております。仕事が比較的激務でモチベーション維持のために欲しいクルマ（諸経費も含めて650万円）を近いうちに購入したいのですが、収入的にこの金額のクルマを買うことは可能でしょうか。また、貯蓄ペースを上げるためのアドバイスをいただきたくご相談させていただきました。よろしくお願いいたします。
■家計収支データ
相談者「まる」さんの家計収支データ
■家計収支データ補足
（1）ボーナスの使いみち
旅行・レジャー費40万円（年4回ほど）、家電・衣類等10万円、小遣い15万円、貯蓄55万円等。
（2）貯蓄の目的
30歳までに500万円。30歳までには結婚したいと考え、結婚費用や家の購入費用のために備えるのが目的。
（3）購入検討のクルマについて
購入時期としては「できるだけ早く欲しい」が、遅くとも28歳までには購入希望。頭金400万円、残り250万円をローンで購入と考えている。
（4）駐車場について
社員用の駐車場があるが寮から遠いため、近くに借りる予定。駐車場料金は月3万円ほど。
（5）食費について
「月8万円」は外食が多いため。平日夜はコンビニか宅配。休日も外食。
（6）趣味娯楽費について
「月5万円」はほぼ交際費。飲み会かゴルフ、レンタカー代など。
（7）社員寮について
30歳まで住むことが可能。結婚すると家賃補助制度あり。
（8）奨学金について
借入額400万円（無利子）、返済期間20年。
■FP深野康彦からの3つのアドバイス
アドバイス1 クルマは現金で購入したい
アドバイス2 決めた貯蓄ペースを維持することを第一に
アドバイス3 収支を把握し、家計管理を行っていく
アドバイス1 クルマは現金で購入したい
最初のご質問ですが、希望されるクルマの購入は可能です。実際に購入した際のキャッシュフローを試算してみましょう。設定として、購入は2年後の27歳のとき。また、駐車場代は月3万円、ガソリン代を月5000円、さらに税金、保険、車検、その他の点検・整備といった維持費用を月割りして、クルマ関連のコストを月5万円とします。
現在の貯蓄ペースですが、残業の有無により収入に波はあると思いますが、ボーナスも含めて年間240万円（企業型DCを含む）とします。2年間で480万円。手持ちの金融資産と合わせて、約870万円となります。
ここで提案ですが、車両購入は総費用650万円に対して、頭金400万円、残り250万円はローンを組むとのことですが、全額現金での購入をお勧めします。手持ち資金が一気に220万円に減りますので、多少の不安を抱くかもしれません。しかし貯蓄ペースが高いので、マネープランから見て、ほぼ心配は要りません。
購入後、クルマのコストが月5万円加算されますので、貯蓄ペースは年間180万円となります。それでも、3年間で540万円の上積みとなり、30歳のときに手持ち資金は760万円。クルマの購入前に近い額となっています。
また、オートローンはどこで組むかは不明ですが、ディーラーなら金利は年4～8％。キャッシュで購入できるのであれば、この分の金利を支払うことは、単純に「もったいない」と言えるでしょう。
もうひとつ、「収入的にこの金額のクルマを買うことは可能でしょうか」という質問について、単に購入できるかどうかではなく、収入に見合ったクルマなのかという思いもあるかもしれません。確かに世間一般に見れば、このクルマは高額です。ただし仕事が激務で、そのモチベーション維持という目的もあるのなら、高額の部分は「必要経費」とも考えられます。
アドバイス2 決めた貯蓄ペースを維持することを第一に
次に、貯蓄ペースを上げる方法についてですが、高額のクルマを購入し維持するわけですから、先に触れたように、単純に貯蓄ペースは下がります。それでも、年間180万円は貯めることが可能です。これはかなり高いペースですので、これを崩さないこと。まずはここを意識してください。「30歳までに貯蓄500万円」という目標も十分クリアできます。また、これを機会に毎月の収支を把握し、支出が多い月は翌月に調整するといった工夫ができれば、確実に貯まっていきます。設定したクルマにかかるコストがもっと高い可能性もあります。それもどのくらいかかるのか、早めに把握しておくことが大切です。
アドバイス3 収支を把握し、家計管理を行っていく
さらにもっと貯蓄したいならば、趣味娯楽費5万円、小遣い3万円あたりを見直すことになります。現在、住宅費や水道光熱費がかからないので、これでも十分貯蓄できますが、一般的には「かなり使っている」と言えます。一方、食費も高いですが、独身で激務という事情を考えればここは仕方がない部分もあるでしょう。ただし、30歳を過ぎると社員寮を出なくてはいけません。生活コストは大きく変わります。家賃と水道光熱費で月10万円はかかるのでは。また、同時期に結婚も希望されています。そうなると、マネープランが大きく変わります。教育資金や住宅資金など、より具体的に準備しなくてはいけません。
もちろん今後については不確定要素が多いわけですが、どのような状況になろうとも慌てないよう、決めた貯蓄ペースを維持すること、そのために家計収支を把握することを心掛けてください。
相談者「まる」さんから寄せられた感想
丁寧かつわかりやすいアドバイスをいただきありがとうございました。クルマの購入も貯蓄を頑張れば手の届く範囲ということがわかり、いっそう仕事を頑張れそうです。おっしゃる通り、収入に見合ったクルマなのかという思いがありましたが、モチベーション維持のための必要経費として割り切りたいと思います。また、今まではあまり収支について明確にしてこなかったので、これからは収支を明確にし、将来に向けて貯蓄をしていこうと考え直す良い機会になりました。今後うまくマネープランできるように頑張ります。ありがとうございました。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください。(相談はすべて無料になります)
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』（明日香出版社）、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』（ダイヤモンド社）など
取材・文／清水京武
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