亀山早苗の恋愛コラム

【実録・飯がまずい妻たち #7】食をめぐる嫁姑の確執…高齢義母が嫌味三昧「もう飽きたわ、あれ」

リモートワークが定着しつつある今、「会社に行かなくても仕事ができるのはありがたい」と家庭との両立がしやすくなったことを喜ぶ女性もいれば、「かえって苦痛になることが増えた」という女性もいる。

亀山 早苗

執筆者:亀山 早苗

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リモートワークはかえって「苦痛」だった

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リモートワークが定着しつつある今、「会社に行かなくても仕事ができるのはありがたい」と家庭との両立がしやすくなったことを喜ぶ女性もいれば、「かえって苦痛になることが増えた」という女性も。
 

同じ敷地に住む義母との確執

「コロナ禍で我が家は以前とはまったく違う状況になりました」

そう言うのは、ヨリコさん(44歳)だ。2歳年上の男性と結婚して13年、11歳と9歳の子がいる。夫はコロナ禍でも毎日出勤、残業も減ったとは言いがたい。一方、ヨリコさんは月に1回程度の出社ですむようになった。

「会社は今までの事務所を閉鎖、雑居ビルの小さな一室に移転しました。もう前のようにみんなが出社することはなくなったということです。まあ、もともとどこにいてもできる仕事ではあるんですが」

上の子は私立中学を目指しているため、彼女が家にいる時間が増えたのはラッキーだったと言う。ところがラッキーでないこともあった。

「もともと義両親とは同じ敷地内で暮らしているんですが、昨年春、緊急事態宣言の中、義父が亡くなったんです。頭が痛いと言っていたんだけど、コロナ禍で病院に行くのを控えてしまったら実際は軽い脳梗塞で。入院直後に今度は重い脳梗塞を起こして帰らぬ人になりました。義父は優しくていい人でした」

義両親は、元料理人の義父が毎日、料理を作っていた。ひとりになった義母は80歳近い高齢の上、「ずっと義父に甘やかされてきた人」だから、うろたえるばかり。

「頭も体もしっかりしているんだから、自分でできることは自分でやってほしいんですが、とにかく『お食事はお願いね』と言ってきました。夫も『こっちで食べるものを運べばいいだけなんだから頼むよ』と。だけど義母はしっかり三食食べたがる。私なんて子どもが学校に行っている昼間は、菓子パンひとつですませることも多いので、ものすごく負担なんです。上の子の塾用のお弁当も作らなくてはいけない日もあるし。そもそも家で遊んでいるわけじゃないんですよ。フルタイムで働いているんですから」

昼食が遅くなると、義母はわざわざヨリコさんのところにやってくる。あてこすりのように、「じゃあ、私がご飯を作ろうかね」と台所に立とうとするので、ヨリコさんとしては仕事中でも立ち上がらざるを得ない。
 

言ってしまった本当のこと、すると義母は?

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このままでは仕事に支障をきたすと思ったヨリコさん、「義母の自立を目指そう」と決意。大きめのタブレットを義母用にキッチンに置き、これを見ながら作ってみてと言ってみた。

「私だってお父さんが働いているころは作ってたんだから、できないことはないのよ」と言いながら作った義母の料理は、「すさまじくまずかった(笑)」そうだ。

「自分でもまずいとわかったんでしょう、すっかり落ち込んでしまって。でもまたチャレンジしてくださいねと励ましたら、本当に数日後、今度は『簡単そうだから』とナポリタンを作ってくれました。ゆですぎのパスタにまったく味のしない代物で、どうしたらいいかと悩むほどでした」

だからといって手を出すと、また「お願いね」と言われてしまう。タブレットを持っていっていいから、昼食は自分の分だけ自分の家で作ってもらえないかとやんわり言ってみた。

「そうしたら、あなたはやっぱり冷たい人ねえって。どうせそう思っているなら言いたいことを言ってしまえと、『だってお義母さんの作る料理、あんまりおいしくないんですよ』と言っちゃったんです。ちょっと仕事でストレスを抱えていたこともあって。そうしたら義母、今度はハンスト。家にこもって食事もせず、夫が行ってもただ泣くばかり。頼り切っている夫が亡くなると、依存先がなくなるので周りが大変な思いをすると改めてよくわかりました」

仕事を休めない夫はイライラが募り、ときにはヨリコさんを怒鳴りつけることもある。以前はそんな人ではなかったのに。

「夕飯だって私が持って行くと、『あなたの料理は固くて食べられない』と言うこともあります。だけどうちは子どもに合わせることが多いから、どうしようもない。義母の分だけ別に作るほどの時間とエネルギーは私にはありませんから」

夫婦は話し合って、結局、義母の夕食だけ宅配会社から運んでもらうことにした。義母はご飯さえ好みの柔らかさに炊けばいいのだ。

「これで一件落着と思ったら、最近、義母が『もう飽きたわ、あれ』と言い出しました。義母としては私に自分の分だけ作れと言いたいんでしょうけど、さすがに夫もそれは無理だとわかっている。飽きても食べてもらうしかない。私は夫にそう言い切りました。夫も『ヨリコは性格がきつい』って。でも私が倒れたらみんなが困るわけで、私は自分で自分を守るしかないんですよね」

しかたなく、夫は母親をなだめておかずの宅配を続けているが、夫婦間はどこかギクシャクするようになった。

「ひとりになった義母が、コロナ禍もあって自由に出かけることもできず、ストレスがたまっているのはわかります。でも散歩くらいすればいいじゃないですか。それもせずに、『ヨリコさん、歯医者さんに行きたいから予約してくれない?』と言う義母に、私もストレスがたまりまくっているんです」

今までにはない事態に、いきなりよりかかられても対処のしようがない。ただでさえ忙しい働く主婦のことを、なぜ義母はわかろうとしないのか。ヨリコさんはそう感じている。おそらく義母は寂しいのだろう。それも承知しているが、かまったらますますつけ込まれるだけで、最後は自分がキレてしまうと彼女は言う。それもおそらく正しいのだろう。どうしたらみんなが心地よくなれるのか。大きな問題を抱えてヨリコさんはため息をつく日々だ。


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