アドバイス1 過去のことは忘れて、これからの自分のことを優先に
ひとりで2人の子どもを育てあげ、頑張ってきましたね。いろいろと後悔することがあるかもしれませんが、誰に迷惑をかけることもなく、生活してこられたのですから、もっと自信を持ってください。ただ、これからは自分のことを優先に考え、前を向いていただきたいと思います。子どもは結婚し、別世帯になっているのです。心配するのは当たり前のことですが、借金を肩代わりしたり、契約問題に必要以上に関わらないことです。心を鬼にしてでも、自分たちで問題解決させることです。相談にのってあげるだけで十分で、厳しいことをいうようですが金銭的援助は今後一切しないことです。
第2子の住宅契約については、弁護士をつけ話し合いがされているのであれば、任せていいのではありませんか。第2子の配偶者のご親族もいます。なにもかも自分がやらなくては、と思う必要はまったくありません。そもそも住宅の契約解除は、一定の損害賠償(手付金放棄など)が発生しますが、解約できないことはありません。ましてや、自宅を処分して同居まで考える必要は、まったくありません。
子どもは経済的な自立をしなければいけませんが、ご相談者も子離れをして、自分の今後のことを最優先に考えてください。お孫さん名義の貯蓄をしているだけで十分すぎます。
アドバイス2 60歳時点で1400万円程度の老後資金ができる
そのうえで、ご相談者は、自分の老後資金をこれからしっかりと貯めないといけません。教室を続けるかどうか、という悩みもおありのようですが、20年以上続けてこられ、生徒数が安定しないとはいえ、地域での信頼を得ておられるのではありませんか? つらい、しんどい、と思うのなら辞めたほうがいいかもしれませんが、少しでも楽しいと思えるなら、このまま続けてはいかがでしょうか。なにより老後でも続けることができるのは、強みです。教室の場所や運営の仕方は検討することがあると思いますが、長く続けるために、生徒数を確保するために、どんなことができるのか、考えてみてはいかがでしょう。
逆に、パート・アルバイトは体調が心配です。今回、60歳まで現状の働き方をする前提で試算しますが、体調を崩してまでパートを続けることはありません。健康第一です。
現在、毎月8万円の貯蓄ができていますから、年間で96万円。60歳になるまでの11年間で1056万円。これに現在の貯蓄220万円、いずれ満期になる養老保険の60万円と生命共済の110万円を加えて1446万円。養老保険と生命共済の保険料の払い込みが終れば、その分は貯蓄に回せますので、おおよそ60歳時点で約1600万円を老後資金として確保できることになります。
大きな出費としては、車の買い換えで、あと2回ぐらいは必要。1回100万円とすると200万円。これを差し引くと約1400万円です。今後約10年で、ここまで貯めることができるのですから、何も悲観することはないでしょう。
アドバイス3 60歳以降の働き方次第で貯蓄は取り崩さなくてすむ
60歳以降は、体調次第で考えればいいことですが、58歳で住宅ローンの親への返済は終了します。固定資産税などの支払いがあるので、3万8000円をまるまる貯蓄には回せませんが、2万円程度貯めることができれば、50万円ほどは貯蓄に上乗せできます。さらに住宅費が抑えられますので、60歳以降の家計支出は月10万円程度に削減できます。
ですから、10万円ほどの収入が得られれば、毎月の家計は収支プラスマイナスゼロ。貯蓄からの取り崩しをしなくてもすみます。
65歳以降は公的年金の受給が始まりますが、現段階の見込み額が約30万円。60歳までパート先で厚生年金に加入できれば、少し増額されますが、それでも公的年金だけで生活していくのは厳しいと言わざるをえません。個人年金は年24万円が10年間。これでも生活費は不足します。
つまり65歳以降は、貯蓄の取り崩しが始まることになりますが、少しでも取り崩す額を減らすには、収入を得ることが必要になります。教室を続けていれば、70歳になっても生徒に教えることはできるのではありませんか? 公的年金と個人年金で不足する分が、どの程度になるか、現段階ではわかりませんが、月5万円程度でも収入があれば、貯蓄の取り崩しは最小限で済むので、より長生きに備えることができるはずです。ただし、kokoroさん自身が体調や気持ち(精神面)の面などを考慮したうえで、年を重ねての教室の継続の有無は判断してください。決して経済的な損得だけで考えるのは得策ではないことを付け加えておきます。
最後に2つアドバイスを。
iDeCoについては、現預金を増やすことが優先なので、NISAも含めて考えなくていいと思います。楽しみのひとつとして少額で始めるのもいいですが、値動きがあるものですから、損失が出た場合、ご相談者はストレスを抱えることになりそうです。まずは現預金を増やして、足元を固めてください。
がん保険への加入は、どうしてもと考えるなら仕方ありませんが、加入は必須ではありません。しかし、自宅の火災保険はすぐに加入してください。いろいろな特約をつけるとその分、保険料は高くなりますので、お住まいの地域のハザードマップなども参考にしながら、できるだけシンプルな保険にしてください。
ようやく一人暮らしになったのです。心配ごとは尽きませんが、1つでも楽しみを見つけて、前向きに生活を送ってください。たまには外食などで気分転換したり、生きる活力を得てください。大丈夫です。もっと自信を持ってくださいね。
相談者「kokoro」さんから寄せられた感想
深野先生、このたびはアドバイスと温かい励ましのお言葉をありがとうございました。70歳までは働く覚悟ですので、何か楽しみも探しながら、これから頑張ります。第2子の住宅契約に関しては、締結した3日後には表題登記が行われており手付解除ができないと言われ、売買代金の1割を支払って解約することになりました。第2子の配偶者の親は頼ることができないため、こちらに帰ってくることになりました。人生なかなか計画通りにはいきませんが、先生がおっしゃられたように、なるべく前を向いて生きていきたいと思います。ありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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