子育て

運動会や発表会に「行きたくない」と言う子ども……どう答える?

運動会や発表会に「行きたくない」と言われたら? 保育園・幼稚園や小学校の行事ですが、子ども自身がモヤモヤを抱えていることがあります。子どもの気持ちを尊重しながら、不安解消のために親ができることや声のかけ方、次の行事へのつなげ方などを考えます。

高橋 真生

執筆者:高橋 真生

子育て・教育ガイド

子どもに、運動会・発表会に行きたくないと言われたら、どう答える?

運動会や発表会に「行きたくない」と言う子ども……どう答える?

ポジティブな印象の強い園や学校の行事。けれども、子どもの頃、マラソンや長なわとび、合唱や劇など、苦手だったり気が重かったりした行事はありませんでしたか?

運動会・遠足・発表会…… 園や学校の行事には「ワクワクする」「楽しい」というようなイメージがありますね。

けれども、さまざまな理由により行事に参加しづらい、したくないという子もいます。子どもがみんな、行事が大好きなわけでも、前向きに取り組めるわけでもないのです。

子どもが行事に参加したくないとき、その子の気持ちを尊重しつつ、「行きたい」「できそう」と思えるために親ができること、避けたいこと、行事後のフォローの仕方などについて考えていきます。
 
<目次>
 

行事を「休みたい」と言われたとき、まず親がすべきこと

子どもが行事を「休みたい」と言ったときには、まずは「わかった」と気持ちをしっかり受け止めてください。つい励ましたり理由を聞いたりしてしまいがちですが、この段階で子どもに必要なのは、何より「安心」です。

行事は当日だけで完結するものではなく、そこまでの過程を通して学ぶものですから、園や学校で過ごす中で「みんなで頑張るべきもの」「楽しいもの」という空気を子どもも感じ取っています。ですから、大きくなればなるほど、行事を休みたいと思うことに不安や罪悪感が出てきてしまい、大人に打ち明けるのには、大きな勇気を必要とするのです。

親が感じる焦りや心配、もどかしさは、子どもへの思いからでしょう。だからこそ、その気持ちが、怒りやプレッシャーという形ではなく、愛情として子どもに伝わるような態度やことばを選んでいきたいですね。

なお、多くの行事は毎年くり返し実施されますから、先を見通せる力が付いてくると、「来年は休む!」と早々に誓いをたてたり、何度も「休むからね」とくり返したりする子もいます。そんなときも、まずは、休みたいと思うその気持ちを受け止めてあげてほしいと思います。
 

参加したくない理由を子どもに聞くときの注意点

行事に参加したくない理由を聞くときには、子どもをよく見て、落ち着いている状態を選んでください。「どうして行きたくないの?」という聞き方は詰問になってしまうため避け、「今、気持ちを話せる?」「何か困っていることがあるの?」などと、穏やかに声をかけることを心がけましょう。

また、子どもが答えてくれたときに、「それは、こういうことだよ」と決めつけたり、「こうしたらいいんじゃない」とすぐにアドバイスをしたりしないこと。もちろん、話を急かしたり遮ったりするのも、望ましいことではありません。大切なのは、子どもが感じていること、そこから一緒に考えることです。

ただし、子どもには、理由を答えられないこともあります。「答えない」のではなく、「答えられない」のです。自分でも理由がわからない、言語化できない、理由が多すぎて説明できない、疲れ切っているなど、いろいろな原因が存在します。

そんなときは、話せるようになるまで待ったり、「どんな運動会だったら行ってみたい?」などことばを引き出すような質問を考えたり、穏やかに見守ってください。
 

疲れ? 体調不良? 仮病? 体への影響を考える

子どもが体の不調を訴えたら、まずは休ませること。もし仮病だったとしても、それは、子どもの抱えている問題や悩みの表現の一つと考えられます

子どもが体の不調を訴えたら、まずは休ませること。もし仮病だったとしても、それは、子どもの抱えている問題や悩みの表現の一つと考えられます

行事の前は、特に悩みがなくても、準備や練習でくたくたになってしまうもの。特に4月・5月の行事は、環境の変化に適応しようとしているときに行われるため、子どもが過度に緊張している場合もあります。もし疲れが見えたら、しっかりと休ませてください。幼い子の場合は、「眠い」とぐずるのも、疲れの影響かもしれません。

仮病と思われるときでも、まずは体調を優先し、その後、ゆっくり話をするといいでしょう。行事への不安や「休みたい」と言えないことがストレスとなり、熱や体の痛みなどを本当に引き起こすことも少なくないからです。

もし仮病だったとしても、程度の差はあれ、子どもの抱えている問題や悩みの表現の一つとも考えられますし、特に幼い子は、行事がストレスになっていることを自覚できず、「おなかが痛い」としか言いようがないということもあります。

その一言に隠れているかもしれない、子どもの思いを見逃さないようにしたいものです。
 

参加しても、休んでも、必ず学びがある

参加するのか、休むのか、親が悩んだときに考えたいのは、その行事に参加する理由です。「当たり前だから」「思い出に残るから」「行事の後、孤立してしまうのが心配だから」など、親の「参加させたい」という気持ちが先走っていないでしょうか。

確かに行事では、社会性、責任感、自己肯定感、集団への所属感などが育まれるだけでなく、失敗や他の子どもとの衝突など、学べることも多いでしょう。けれども、それらは安心・安全な環境があってこそ。深刻な問題を抱えているのに、本人の思いを無視して無理に参加させるのは避けた方がよいはずです。

最終的にどう判断するかは、ケースバイケースで絶対的な正解はありません。行事のほとんどは、参加・不参加だけではなく、一部参加、見学も可能でしょうから、どうするのが子どもにとって一番よいのか、考えてみてください。

また、もし参加できなくても、悩みを相談して周囲が味方になってくれた経験は、困ったときは一人で抱え込まず、誰かに話してみようという学びにつながります。長い目で見れば、それもまた、とても大切なことではないでしょうか。
 

子どもの不安解消のために親ができること

参加したいのに不安を感じている子どもが「行きたい」「できそう」と思えるためには、できることを増やし、不安を減らすのがポイントです。子どもは「しない」のではなく、「できない」ためとても困っているのです。「行ったら楽しいよ」というように、ことばだけで安易に気持ちを変えようするのではなく、親として、解決に向けて動いてみてください。

●何をするのかわかるように説明する
「いつも」との違いに混乱してしまう子には、いつ、誰と、どこで、どんなことをするのかなどをていねいに説明しましょう。

たとえば予定表を作り、絵や写真を使った手順書の形にしたり、絵カードにしてリングで閉じたりすると、スケジュールや一緒にいる人、持ち物、服装などが視覚的にわかります。会場や過去の動画を見てみてもいいでしょう。どんな方法が一番わかりやすいか、安心かは人によって違いますから、あれこれ試してみてください。

また、少しでも知っていることが多いと参加しやすいということもあります。ごっこ遊びに行事の要素を取り入れたり、普段の読み聞かせにその行事がテーマになった絵本を混ぜたりしてもいいでしょう。

「楽しい」環境を整える
大きな音や大勢の人など環境的な不安がある場合は、先生に相談してみてください。苦手なものを具体的に説明することで、運動会のピストルを旗にしたり、照明を顔に当たらないようにしたりするなど、配慮してもらえることもあります。また、部分的に参加する、役割を変えることなどの対応も考えられます。

避難訓練や発表会など、大きな音や暗い会場などが負担になりそうであれば、事前によく説明し、動画などを見せることで、心の準備ができます。

●苦手なことを練習する
みんなと同じようにできない、なかなか覚えられないなど、できないことがストレスになる場合もあります。

できるようになることで悩みが解消するのであれば、ぜひ一緒に練習してみてください。発表会の歌や楽器の演奏などだけではなく、お泊り会や遠足の食事や着替えが遅いことなどに不安を感じていることもあります。

ただし、内容・量・タイミングが合わないこともありますから、明らかにできないことを求める必要はありません。そのような場合は、先生に相談しましょう。

●人間関係への配慮を学校に相談する
行事には、たとえば運動会のように、協力や努力を目標とする一方で、達成度が評価されたり明確に勝敗がついたりするものがあります。みんなが勝つことを目指している中で、何かができないことよりも、失敗を責められることに萎縮してしまったり、誰かが責められているのを聞くのがつらかったりするケースもあります。

また、グループ決めなどで孤立してしまうことや、誰かと一緒になることに不安を抱えていたりすることもあるでしょう。

先生に相談するときには、行事についての考え方や日中の様子などを聞き、子どもの状態や配慮してほしいこと、事態が深刻で大人の介入を必要とする場合にはそう考えていることを伝えましょう。

園の場合は、先生と顔を合わせる機会も多いため、様子を聞きやすく、話もしやすいと思います。できれば、園長や副担任の先生など、いろいろな先生と話してみましょう。

小学校の場合は、残念ながら、他の子どもへの声かけや指導(たとえば「〇〇さんが困っています」「〇〇さんを仲間に入れてあげて」)が、余計に子どもを傷つけてしまうこともあります。子どもの意思を尊重しながら、してほしくないことは明確に伝えましょう。あまり信頼関係が築けていないようなときは、学校に派遣されているスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなどに話を聞いてもらうこともできます。

●困ったときにどうすればいいか、確認する
困ったときには、先生が助けてくれるということを話した上で、「トイレに行きたくなったら」「走っているときに転んだら」など、具体的な不安に一つ一つ答えていきましょう。話すことで安心できる子もいれば、それらを書き留めておき見返したいという子もいるため、気持ちに沿った方法をとってください。

また、つらくなったときに、信頼できる大人がそばにいたり、外からの刺激を遮断できるような休める場所があったりすれば参加できる子という子もいますから、事前に園や学校と相談しておきましょう。
 

次につなげる! 行事が終わった後の声かけ

行事を体験して知ったこと、楽しかったこと、できたことが、次への安心や意欲につながります

行事を体験して知ったこと、楽しかったこと、できたことが、次への安心や意欲につながります

子どもがその行事を体験して知ったこと、楽しかったこと、できたことが、次への安心や意欲につながります。少しでもできたことがあれば、ぜひほめてあげてください。

目立たなくてもコツコツ続けられた、友だちや小さな子の手助けや応援ができた、最後まであきらめなかった、楽しめた、会場に行けたなど、成長を感じる瞬間は必ずありますよね。けれども、子ども本人は、できたと気づいていなかったり、「これしかできなかった」と思っていたりすることがあるのです。

自分ができるようになったこと、親が見ていてくれたことを聞くのは、子どもにとってとてもうれしいもの。そしてそれは、達成感や自信になります。また、常に「1位でなくてはいけない」「完璧でなくてはいけない」と思い込んでいる子も、一生懸命やればいいんだと安心できるでしょう。

緊張の中のがんばり、刺激で疲れが出る可能性もありますから、ゆっくり休ませてあげてくださいね。

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