中学受験

中学受験に必要なのは親の「狂気」か、温かく見守る姿勢か?合否を左右する親子関係でNGなこと3つ

「親子の受験」といわれる中学受験。親子で受験を乗り越えていくために必要な子どもとのコミュニケーションの取り方について、これまで講師として多くの生徒と保護者を見てきた清水まちこさんにお話を伺いました。

西村 創

執筆者:西村 創

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中学受験を題材にした漫画・ドラマ『二月の勝者ー絶対合格の教室ー』(高瀬志帆)の「母親の狂気」という言葉、インパクトがありますよね。「狂気」は言い過ぎとしても、親が子どもや指導者の前で声を荒げたり、泣き出してしまうこともそこまで珍しくはありません。

これは多くの場合、子どもとのコミュニケーションがうまく取れていないことが原因です。親はどういったことに気を付けるべきなのでしょうか。これまで講師として多くの生徒と保護者を見てきた清水まちこさんにお話を伺いました。
 

親は「温かく見守る」ことしかできないのか?

中学受験の合否も左右する親子関係

中学受験の合否も左右する親子関係

塾から「勉強については、保護者は温かく見守ってください」というアドバイスを、一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 
しかし、子どもに対して言いたいことがある場合、親は我慢しすぎるべきではないでしょう。ため込み過ぎた結果、感情的になったり、とにかく合格さえできればと志望校を無理に下げようとするなど、冷静さを欠く行動を取る方も実際に少なくありません。これは子どものためになりません。

ですから心配なことがあれば、次に説明する子どもとのコミュニケーションをとる際のポイントを押さえた上でしっかり話し合うことをおすすめします。
 

NG1.小言のように言わない! 本当に言いたい言葉を選んで伝える

まず親自身が、子どもに何を言いたいのだろうと、振り返ってみてください。たとえば、焦って勉強している様子が全く見られないから、「勉強しなさい」と言いたいとしましょう。しかしこれでは”小言”になってしまい、子どもには響きにくそうですよね。

では、なぜ勉強してほしいのでしょうか。それは、子どもが望んでいる学校に合格してほしいからだと思いますが、ここでさらに「なぜ合格してほしいのか」まで考えてみます。

すると、「学校見学に行った後、そこに行きたい気持ちを話してくれた子どもの表情が生き生きしていて、頼もしさを感じたから」「受験は子どもにとって大きな挑戦の機会だから、努力をして結果を出すという経験をしてほしいから」「実力相応の環境に進んで自立した人生を歩んでほしいから」など、その子をこれまで見てきた親だからこその理由があるはずです。

それこそが本当に伝えたい言葉であり、子どもの心に火をつけ、自主的に勉強に向かわせることができる可能性があります。小言ではなく、”親の想い”が伝わる言葉を伝えてみましょう。
 

NG2. 聞き流されない! 話し合いの場の雰囲気に工夫を

言葉をしっかりと選んだら、実際に子どもに伝える際に気を付けてほしいことは、その伝え方です。子どもが勉強もしないでテレビやゲームに夢中になっているタイミングで伝えても効果は薄いでしょう。そうではなく、「家族会議」のような話し合いの場を設けて伝えることをおすすめします。より真剣みが伝わるからです。

三者面談などで多くの親子のやりとりを見てきた中、結果が出ない家庭に多いのは、子どもに頻繁に勉強しなさいと言い、子どもの表情が曇っている関係です。このやりとりは、双方の精神衛生を悪くするだけです。
 
くどくどと伝えず、しっかりと話し合いの時間を設けた上で、一度きりのつもりで話せば十分です。その場のリアクションはよくなくても、真剣に伝えることで子どもの心に残ります。それが結果として、行動の変化に結びつく可能性があるでしょう。

担当生徒の保護者から、「家では全然勉強している様子が見られなくて、親の方が焦ってきている。子どもとの衝突も増えた。これからどう接すればいいですか」という相談は毎年何件もあります。その際はこれらのポイントをお伝えし、話し合いの場を設けることを提案してきました。
 
ある生徒からさりげなくその後の様子を聞くと、「親とは改まって話をする機会がなかったけれど、この前、自分に対してどんな想いをもっているか話してくれて、それを聞いたらもう少し頑張ってみようと思った」と話してくれました。

少しずつ自習室に向かう様子も見られるようになり、最終的には志望校に合格しました。
 

NG3.何もかも親が直接伝えない! 学校や塾の先生など第三者を頼る

親子の関係性には様々な形があり、面と向かってのコミュニケーションに自信がない方もいるかもしれません。そういった場合は、学校の担任や塾・予備校の進路指導担当にぜひ相談してみてください。

実際、保護者の方とお話する機会があった生徒に「○○君にはこういう想いをもっているみたいだよ、心配してるんだね」と伝えると、「そんなことは聞いたことなかった、普段はつい反抗してしまうけど、心配かけて申し訳ないと思っている」と本心が聞けたことがありました。

このように、第三者の立場から伝えることが有効な場合もあります。または、三者面談という形で、第三者を交えた話し合いの場を設定してもよいでしょう。
 

人生の中で何回もない機会だからこそ、親子ともに納得いく受験を

各家庭の生徒、保護者とそれぞれ話をしていくと、「親子という近い存在ゆえに、お互いの思っていることは意外に伝わっていないのではないか」と感じる機会がこれまでに多くありました。

最もプレッシャーを感じるのは子どもだとは思いますが、我が子を思うがゆえの「親の狂気」も、指導者の立場からすれば理解ができます。これらの方法を参考に、ぜひ子どもとうまくコミュニケーションを取り、受験を乗り越えてほしいと願っています。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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