転職のノウハウ

2021夏ボーナスの減少から透けて見える未来の転職市場

2021年夏のボーナスの支給額が発表されたが、結果は昨年よりも下がり、これでマイナスは3年連続、2013年に次ぐ8年ぶりの低水準である。一部の調査では、今年の夏のボーナスに納得している人は6割にとどまっているとのことだ。2021年ボーナス事情を通して、未来の転職市場には何が見えているのか、人材コンサルタントの小松俊明が解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

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2021年夏ボーナス減少。そこから見える未来の転職市場とは

Withコロナも2年目に入り、緊急事態宣言も東京では4度目を数える(2021年7月時点)。その最中、2021年夏のボーナスの支給額が発表された。

まず経団連の発表(※1)によれば、前年比で7.28%の減少であり、2018年以降3年連続の減少である。また、今年の下げ幅は金融ショックが発生した2008年から翌年2009年にかけて前年比で約19%減となった時以来となる大幅減であるという。また、2013年に次ぐ8年ぶりの低水準であることにも注目が集まる。

ちなみにこれは大手企業の状況であるが、中小企業を含めた状況については、三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる調査(※2)を参考にすれば、2021年夏のボーナスの支給額は、前年比の2.3%減程度を予想しているという。もちろん、これはボーナスが支給された場合の話であって、コロナ禍の影響を特に強く受けた業界を中心に、夏のボーナスの支給自体を中止した企業もあり、サラリーマンにとって厳しい状態が続いている。

この状況が、今年後半に向けた転職市場にどのような影響をもたらすかについて考察してみよう。

※1:経団連の2021年夏季賞与・一時金。大手企業業種別妥結状況(加重平均)第1回集計結果。調査対象は東証一部上場、従業員500人以上の会社。主要21業種大手251社中104社が回答。
http://www.keidanren.or.jp/journal/times/2021/0708_13.html

※2:三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査産業計。民間企業は事業所規模5人以上。賞与を支給する事業所で働く全常用労働者の平均。(当該事業所で賞与の支給を受けていない労働者も含む)
https://www.murc.jp/publicity/news_release/news_release_210407/
 

ボーナスという言葉の持つ意味が時代とともに変わってきた

今の時代、ボーナスは生活費の一部として、すでに使用目的が確定している人が多いのではないだろうか。つまり、サラリーマンはボーナスが支払われることを見込んで、自己資金を前倒しで切り崩している場合があるため、ボーナスの支給額が思っていた水準に到達しなかったことに落胆した人は多いはずだ。

ボーナスという言葉には、本来は予想以上の成果を上げたことに対する報酬という意味のサプライズの要素が含まれていたはずだが、社会混乱で業績不振の企業が増えている世の中では、ボーナスという言葉には、そうしたプラスイメージを持てず、あくまでももともと支払われるべき給与の一部としてしか見られなくなっているのかもしれない。

私達は、バブル崩壊後の1990年代初頭から続く、失われた30年といわれる時代を生きている。従来は失われた20年を嘆く声が多かったが、知らない間にさらに10年が積み増しされてしまって、今では失われた30年といわれることが多い。

2010年に日本の名目GDPが世界第2位から第3位に転落した後も日本の経済停滞はそのまま続き、2010年代のアベノミクスは日本経済の成長に陰を落とすような失政続きのまま、今日のコロナ禍に至っている。平成の時代そのものが、日本の経済停滞の歴史そのものとなってしまった印象すらある。

これは日本人の給料の推移で確認してみても、納得できる数字がある。国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、30年前にあたる1990年の平均給与は425万2000円(1年勤続者)であったのに対し、昨年2020年10月に発表された2019年度の平均給与は436万円であり、30年経過して11万円しか年収は上昇していない。

OECDが2016年に行った国際比較の数字でも、1997年=100として実質賃金指数を見た場合、日本は10年後に89.7に減少する一方で、先進7カ国のアメリカやドイツでは1割以上上昇(アメリカ115.3、ドイツ116.3)、賃金が高いことで知られる北欧ではスウェーデン138.4、デンマーク123.4と、豊かさが増している。諸外国と比較しても、日本の賃金の推移が芳しくないことがよく見て取れる。

参考)
民間給与実態統計調査(国税庁)
実質賃金指数の推移の国際比較(全労連)
 

収入減でも収入への不満を理由にした転職は目立たず

これだけ長い間にわたり日本経済の停滞が続けば、ビジネスパーソンの転職理由も変わるものであり、その変化はコロナ禍の時代を迎えて、はっきりと顕在化してきた。

転職理由といえば、従来は仕事内容、人間関係、待遇と評価への不満が3大理由であった。この3つのうちの1つが不満の場合は、転職すべきかどうか再検討することが望ましく、実際にもどちらかといえば思いとどまる人が多く、3つのうちの2つ以上に不満があれば、転職する人が増えるのが常であった。

コロナ禍は、旅行関連業界や飲食業界に対して、特に多大な影響をもたらしているが、全業界に対しても総じて大きな変化をもたらしてきた。雇用を守れないことや、事業自体が継続できなかった会社もある。会社や事業がなくなりはしなかったにしても、仕事内容に影響があった人は多いことだろう。

「もっと大変な人がいるはずだ」と自らを諭し、希望する仕事ができなくても雇用があるだけまだましであり、給料が下がっても、もらえているだけまだいいほうだと自分自身を納得させてきた人もいるだろう。

このような中で転職市場自体は冷え込んでいるわけではなく業界による偏りは多少あるものの、人材紹介会社の中途採用案件の取扱数は今でも総じて多い状況がある。人材紹介会社が扱う求人数だけでなく、現場からは中途採用の採用実績もそれなりにあるという声が多いが、その中身をしっかりと見た際、いわゆるキャリアアップや現状への不満解消を目的とした採用は以前ほど多くないというのだ。

では今、誰がどのような理由で転職活動をしているのだろう。

>次ページ 本業・副業合算の働き方、転職先の選び方が主流になる
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