アドバイス1 十分な金融資産があり、教育費も老後も問題なし
お子さんが小さく、ご主人の病気も心配でしょうし、ご相談者ご自身も体調がすぐれないと、不安に思う気持ちはわかります。不安を少しでも解消できるよう、今後のお金の流れを整理してみましょう。まず、現在の家計は無駄遣いもなく、毎月10万円の貯蓄。保険料が多く見えますが、個人年金の保険料が多いからですね。老後資金となって戻ってきますので、このままでいいでしょう。ひとまず、毎月10万円貯蓄できていれば、ご主人が60歳になるまでの4年間で480万円になります。現在の金融資産が3250万円ありますから、合計で3730万円です。
加えて、一時払いの保険の満期金、返戻金すべてを合計すると2706万円。さらにご主人の退職金が2000万円。これらすべての合計は8436万円となります。退職金から個人年金の追加払いで750万円払い込んでも7686万円です。これが、ご主人が60歳までに貯められる金融資産のすべてになります。
この先、お子さんの教育費がかかってきます。中高で250万円、大学が私立だと500万円。合計750万円を差し引いても、約7000万円が老後資金として残ることになります。
教育費の心配も、老後資金の心配も、現状のままであれば、何の問題もないのではありませんか?
アドバイス2 夫60歳時点で保険を整理し、生活費はコンパクトに
ご主人の体調次第ですが、もしも定年の63歳まで働けるとしたら、収入は減りますが、夫が60歳時点で、【6】と【7】の個人年金の支払いが終わります。さらに他の保険を整理することで生活費が抑えられますので、貯蓄を上乗せしていくことも可能です。現在加入している保険のうち、【1】と【2】の夫の5年ごと配当付き終身保険2つは払い済みとします。その他の保険も解約し、【3】の医療保険のみにします。またご相談者の生命保険も解約で問題ありません。それだけの金融資産がありますので、万一のことを考えても心配はいりません。ご主人が60歳になった段階で、これらも解約して、保険料の負担を減らすことを検討してください。
ご主人の医療保険のみ残し、保険を整理すると、毎月の家計支出は27万円程度まで下げることができます。ですから、ご夫婦で収支トントンになるような収入、働き方ができれば、十分と言えます。27万円より多ければ、当然のことながら差額分は貯蓄でもいいですし、自由に使っても問題ありません。60歳から受け取る個人年金はそのまま貯蓄に回せます。
アドバイス3 パートを減らしても大丈夫。健康第一に考えて
ご主人が63歳になれば、公的年金、個人年金の受け取りが年間で約240万円あります。生活費の不足分が仮に年間100万円としても、65歳までの2年間で200万円。約7000万円の老後資金から取り崩しても、65歳時点で6800万円残っています。65歳からは、公的年金も増えますから、おそらく貯蓄からの取り崩しなく、生活していくことができるのではないでしょうか。ご主人に万が一のことがあったとしても、公的年金などで賄えない不足分を年間100万円としても生涯、金銭的に困ることはありません。
このように整理してみると、キキョウさんが今、パートに切り替えても、1000万~1500万円ほど少なくなりますが、5000万円以上は残る計算になります。精神的につらいようでしたら、退職して、失業給付のある間はのんびりとされ、ご主人のお身体のケアをなさってもいいかもしれませんね。何よりも、健康が第一です。
最後に、計算の元になった金融資産の大半が株式投資です。少しずつで構いませんので、売却して利益を確定させていってください。自分が判断し買いたい銘柄以外は、できれば預貯金で確保しておかれることをおすすめします。相場が崩れてしまったら、今回の試算は成り立たなくなってしまいます。売却してこその資産です。含み益があるうちに売却して、老後資金として確保しておくようにしてください。
相談者「キキョウ」さんから寄せられた感想
磐石な老後に向け、ここ5年が勝負と考えていた矢先、思いもよらぬことが立て続き、思い通りに行かない人生設計に歯痒さや時に無力感に苛まされておりました。今回、マネープランクリニックへ思い切ってご相談させていただき、その上、深野先生にアドバイスを頂けたこと、大変感謝しております。アドバイス通り、2つ加入の終身保険の払い済みと株売却については、早速取り掛かります。また、自身の今後の勤め方についても、退職しパート勤めへ切り替えても老後生活へ特に支障なし、教育資金も老後資金も足りるとのこと、救われた思いです。
子どもが手が離れるまで、まだ先は長く、夫婦共に健康に過ごすことの大切さを改めて気付かされました。これからは、もう少し、気持ちをゆったり構え、家族と過ごす時間を優先し暮らせるよう、シフトチェンジしていきます。改めて、ありがとうございました。
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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