中途採用で学歴はどの程度関係するのか
たとえば、高学歴の象徴として東京大学の卒業生を思い浮かべた時、あなたは職場にいる同僚や部下、もしくは上司に対して、東大出身だから優秀であるという評価を下すだろうか。優秀な人物と出会った時、あとからあの人は東大出身らしいよと聞かされて、勉強で優秀だと仕事でも活躍するんだと納得する場合もあるのかもしれない。
一方、職場の同僚の出身大学など気にかけないという人も多いに違いない。実際、難関大学の出身者が仕事もできるとは限らない。そもそも大卒が、高卒や高専卒よりも仕事ができると思うことも、全くの偏見である。進学先の選択には成績の良さ以外にも、その時の家庭環境や本人の健康状態などが影響することも多く、難易度の高い大学に進学した学生は、裕福な家庭出身が多いという統計もある。
学生時代の専門性を会社はどの程度評価するのか
若いころから関心を持った機械工学を高専で早くから専門的に学んだ人、数字を扱うことが得意な自分の特徴を活かして商業高校で経理を専門的に勉強した人は、社会に出た時点で即戦力である可能性が高く、高校や高専で学んだ分野の仕事に就ける可能性も高い。一方、大企業への「就社」を希望する傾向の強い日本の新卒学生の場合、大学で学習した専門分野を活かした「就職」を実現する学生は一部である。理系であっても、自分が研究室で学んだ専門教育とは無縁な就職先を選ぶ学生は少なからずいる。
欧米やアジアの大学生と比べて、日本の学生の大学院進学率が低いのは、専門教育を受けても、それが入社後に評価されないことが多いとの認識があるからではないだろうか。他に類を見ない新卒の就職に関する日本の慣行(4月に新入社員が一斉に入社するというような)を支えているのは、企業による学歴至上主義であるという意見もある。
大企業の多くは、結果的に有名大学出身学生の青田買いを繰り返し、大量採用をしている。ただそれは、学生時代の専門性を評価しているというよりは、「主体性を発揮して、良い学生時代を過ごしたか」「コミュニケーション能力が高いか」「自ら問題を解決できる論理的理解力があるか」など、人間性やバランス感覚、組織の中で働ける対人関係に優れた人物であるかを優先的に評価している。社会人経験がほとんどない新卒の採用においては、地頭の良さと学歴との間に一定の相関関係があると考え、結果的に学歴を担保にした採用に落ち着いているのかもしれない。
中途採用では、学歴より即戦力であることが評価されるワケ
中途採用では学歴は通過点、その後も学び続けているかが重要
私見であるが、私は学歴とは血液型で人の性格を言い当てるようなものだという意見である。高学歴を誇る人には申し訳ないが、学歴とは、マラソンに例えていえば「スタートから5キロ程度の通過点」である。もちろん、スタートした時点で優秀な結果を出したことにも意味があるが、それがその後の長い社会人生活において、どれほどの意味があるかといえば、マラソンでゴールした時、最初の5キロ地点での順位を気にする人があまりいないことと同じではないだろうか。
もちろん、スタートから5キロ地点でトップだった人が、そのままゴールテープをトップで切る場合もあるはずだ。学歴という言葉が、20歳前後で終了したものととらえるから、その意味は人生の時間が経過するとともに薄れていく。一方、生涯学び続けるのが社会人生活の醍醐味であるととらえれば、学んだ履歴としての学歴は、大学や大学院卒の学位のことを指すのではなく、自分が学び続けたテーマ、その一つ一つが学歴である。
中途採用では、社会人として目先の仕事で成果を出せるように、日々学び続ける人を評価するものだ。人が経験と実績をアピールした際に、そこには毎日の取り組みの歴史が透けて見えてくるものだ。趣味で学ぶことも、自らの人生にとっては貴重な糧となるが、仕事に直接活かせることを学んだ場合、それは全て会社への貢献につながる可能性がある。10年前、20年前に学校を卒業した「通過点としての学歴」にはほとんど何の意味も残っていなくても、その後も長い期間、仕事のために「主体的に学び続けてきた学歴」は、中途採用では大きく評価される。
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