転職のノウハウ

学歴不問って本当? 中途採用で学歴はどのような意味を持つのか(2ページ目)

最終学歴を終え10~20年を経た後でも、履歴書への学歴記載を求められることは多い。学歴と仕事の能力には相関関係がないという意見がある反面、特に大手企業では有名大学出身者が採用時に優遇されているようにも見える。学歴がビジネスパーソンの中途採用やキャリア形成においてどのような意味を持つのか、人材コンサルタントの小松俊明が解説する。

小松 俊明

執筆者:小松 俊明

転職のノウハウ・外資転職ガイド

社会に残る学歴差別は今後どうなるのか

そうはいうものの、学歴に対するコンプレックスを持つ人がいないわけではない。もっと勉強すればよかったという後悔は誰にでもある。本当は違う国立大学に行きたかった、MARCHではなく早慶に行きたかったというように、一見高学歴に見える人の間でも、学歴に満足しない人はいる。

特に、新卒の就職の際に学歴が足を引っ張って、人気の大企業には就職できなかったと考える人がいるかもしれない。有名大学出身者を取る傾向のある大企業への就職では、出身大学が不利に働いたケースはあるのだろう。しかし、それがその後の社会人生活でもずっと続くのかといえば、社会人として取り組んだ勉強次第では、常に昔の学歴が不利に働くというわけでもないのではないだろうか。

そうはいっても、日本はほかの国々と比べると、学歴差別が比較的多いのかもしれない。社会の同調圧力が強く、長時間労働の慣習が残り、昇給・昇進などの待遇も横並びで大差がない職場環境があるため、学歴で人より優越感を感じたり、逆に劣等感を持つ人が生まれやすい風土があるのかもしれない。国籍や性別、年齢で採用差別をしてはいけないことは法律にも明記されているが、学歴で採用差別することに特に規定はない。企業の応募条件に、大卒以上であることと書かれているケースは多い。大学院卒でないと採用に至らない職種も、少なからずある。

では、社会に残る学歴差別は今後どうなるのだろうか。その際に、今後注目すべき二つのキーワードをここで紹介しておきたい。一つ目は「教育のグローバル化」、そしてもう一つは、「社会人の生涯学習」である。
 

世界全体で進む「教育のグローバル化」とは

「教育のグローバル化」には、複数の意味がある。一つは、教育を受ける場所や方法の選択肢が広がっていることである。海外の大学や大学院は、英語で授業を受けることができる教育機関が急激に増えている。つまり、その国の母国語がポーランド語やドイツ語、ノルウェー語だったとしても、教育機関では、いろいろな専門分野に英語で提供される学部の専門プログラムが用意されている。

そして、その多くがオンラインで受けられるものが増えてきた。コロナ禍の影響もあり、オンライン授業が世界中に広がったことを受け、その国に行かなくても、オンラインで授業を受けて卒業までいけるようなプログラムがたくさんある。その学費は、外国人学生でも無料の国もあれば、無料ではなくても日本と比較すれば安く、中には日本の国立大学の学費の半額以下で修士や学士がとれるものもある。

日本人にとって英語で授業を受けることはハードルが高いが、アジアや欧州など、英語が母国語でない国では、海外の大学・大学院のオンラインプログラムを受講する人が急増していることから、「教育のグローバル化」は世界全体を巻き込んだ大きな潮流であることは間違いない。

「教育のグローバル化」のもう一つの意味するところは、教育のグローバル化が遅い日本でさえも、事業のグローバル化が進む企業の現場では、海外大学や大学院で学んだ日本人学生や社会人への評価が高まっていることである。

実際に、新卒採用には、海外大学の卒業時期に合わせて、新卒の10月入社を始めた会社も少なくない。新卒採用者に占める海外大学卒業者の割合も増加している。これは中途採用の世界でも全く同じである。社会のグローバル化が進む中で、教育のグローバル化が進むことは世界の既定路線であり、日本ではその歩調が他国よりは遅いとはいえ、確実にその方向にベクトルは向いている。
 

働きながら学べて何度も学びなおせる、社会人の生涯学習に注目!

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これからの社会人は生涯学習でキャリアを切り開く
 

長時間労働が常態化していれば、働きながら学ぶことなど思いもしないだろう。心身ともに疲れ切っている以上、まずは体を休ませることを優先すべきである。しかし、労働時間の問題は、会社や個人によって事情が大きく異なる。コロナ禍の世の中になり、多くの人の間で在宅勤務が増えたこともあって、自身の働き方、時間の使い方を見直したという人もいることだろう。

欧米諸国やアジアなどを中心に、大学や大学院での学び直しや各種資格取得など、いわゆる「社会人の生涯学習」に注目が集まっている。興味のあることを学ぶために若い時は大学を選んだ人も多かったはずだが、社会人が働きながら学ぶことの多くは、職業体験を通して今、必要と思う学びを選択することが多いはずだ。忙しい毎日の中でうまくやりくりをして学ぶし、授業料は原則自己負担であるゆえ、勉強との向き合い方も真剣そのものに違いない。

本質的に学歴の問題は過去のものであり、本来は、常に学び続けていることが評価の対象になるのだ。高卒であるため最終学歴を大卒にしたいと思えば、社会人として働きながら大学の勉強を続けることもできる。

もし、教育のグローバル化に目を向けて、選択肢を海外の大学や大学院に広げることができる場合、その選択肢は一気に何十倍にも膨れ上がる。もし英語は苦手という場合でも、国内にもすでにかなりの選択肢はある。国内の選択肢の場合はオンライン講座だとしてもコストがまだ高いが、競争が広がっていく中で、いずれもっと安くなっていくことが期待されているし、いろいろ調べれば行政からの補助が付くケースもある。

社会に学歴差別はある。学歴へのコンプレックスは根深いかもしれない。企業や個人も、人によって学歴との向き合い方は千差万別であり、学歴を考慮して人物評価、業績評価をする人がいないわけではない。しかし、グローバル化を筆頭に、社会は全く新しいステージへ変化のスピードを速めている。今後の社会の変化を先読みし、いろいろ先取りしていけないか、検討を始めてみてもいいだろう。

人生100年の時代である。英語学習を含め、何事も気づいたとき、まさに今から始めても遅くはないのではないだろうか。
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