お金の悩みを解決!マネープランクリニック

53歳、早期退職しました。3000万円の自宅購入にはリスクがありますか?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、5年前にマネープランクリニックに相談を依頼された53歳の無職の女性。離婚、大病を経験後、新たな人生に向けた早期リタイアを決意しました。そこで、老後に必要な自宅購入について悩んでいるとのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 新たな自宅購入は合理的

以前、ご相談をいただき、その後に離婚され、大病もされたということですから、よく頑張ってこられたと思います。そして、家族構成も生活環境も変わりましたが、今も前向きに生活されていることをうれしく感じます。
 
今回のご相談は、老後を過ごすためのマネープランとなりますが、とくに住宅購入について悩まれているとのことです。

では、実際に住宅購入をした場合のキャッシュフローを考えてみましょう。希望されているのは、都内郊外の中古一戸建てで予算は3000万円。ここでは、諸経費(登記費用、引越し費用、税金等)も含めて3000万円とし、また、購入時期についても便宜上、今この時点で購入するとします。
 
当然、住宅ローンは組まず、現金での購入となります。したがって、手元に残る金融資産は3000万円。購入後の生活コストですが、固定資産税も含めて基本生活費が現在と変わらないとすれば、大きく変わるのは東京での滞在費。年間50万円計上されていましたが、これが不要になるので、年間の生活費は170万円。公的年金支給が始まる65歳までの12年間では2040万円となります。
 
ただし、国民年金保険料の支払い期間は60歳になるまでですから、5年分100万円をコストから差し引きます。なお、がん保険の解約については、そのときの健康状態によって判断も変わるはずですから、ここでは解約返戻金の加算等はしません。信用取引での利益についても、若紫さんの言われるように、ここではそれは計上せず、投資商品も価額変動がないとしています。

一方、この間、大きな支出としては、クルマの買い換えがあります。予算250万円をコストとして加算します。
 
結果、65歳時点での手元に残る金融資産は810万円となります。一方、公的年金の支給額は年間175万円ほどとのこと。年間の生活費が150万円ですから、年金だけでほぼ生活費はカバーできることになります。そうなると、810万円はほぼ老後の予備費に回せます。この額は、一人暮らし(一人分)であれば一般に安心できる金額でしょう。加えて、現在のご自宅を売却することで、まとまった資産の上積みが期待できますから、3000万円の住宅購入はマネープランとしては実現可能だと言えます。また、代わりに賃貸住宅やホテルを利用するよりは、マネープランから見ても合理的だと考えます。

アドバイス2 現在の自宅は賃貸活用よりも早期売却を前提に

ここまでの試算を踏まえて、いくつか注意点を。
 
まず予定されているご自宅の処分について。当初は賃貸とし、65歳のときに売却とのこと。ご自宅の立地、築年数等は不明ですが、賃貸としてしばらく手元に置きたい希望、理由がないのなら、早めに売却した方がいいと考えます。

予定されている売却は12年後。1500万円での売却を想定されていますが、そのときの不動産市況は不確定です。売却できるかどうかが、将来のリスク、不安要素になりかねません。そうであれば、早計に賃貸と決めず、まずは早期売却を前提に不動産業者と相談されてはどうでしょうか。
 
住宅で言えば、これから購入する住宅についても、慎重さが必要です。中古であれば、物件によっては、設備機器も含め、修繕やリフォームが必要な時期が早まる可能性があります。周辺の環境も、知らない土地であればそれなりの下調べは大事なはず。利便性の高い立地や、築浅の物件は当然割高になりますから、そこでどう折り合いをつけるか。もちろん、予算を大幅に超えることは避けなくてはいけません。ともあれ、慌てず探されることをおすすめします。
 

アドバイス3 年金の繰下げ受給はそのときの資産状況で判断

また、希望されている公的年金の繰下げ受給ですが、例えば、70歳まで繰り下げると、さらに5年間、無年金(無収入)の時期が延長されます。
 
試算どおりにキャッシュフローが推移すれば、65歳時点での手持ち資金810万円から170万円×5年分を差し引くと、50万円の赤字となります。これは、途中で貯蓄が底をつくことを意味しますが、実際は自宅の売却によって資産は増えています。想定どおり1500万円(売却費用は考慮せず)で売却できれば、70歳の時点で1450万円、1000万円なら950万円が、老後資金としてまだ手元に残っています。
 
したがって、計算上は繰下げ受給をすることで、70歳以降の老後資金により余裕が生まれます。ただし、あくまで試算どおりになった場合です。予期せぬ大きな支出が発生する可能性もゼロではないはずです。
 
繰下げ受給は、そのためにとくに申請をする必要はありません。老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに、65歳の時点で年金請求の手続きをしなければ、年金は支給されませんので、結果的にそれにより繰下げ受給をしたことになります。また、繰り下げる期間も事前に決める必要はなく、年金を受け取りたいと思ったときに請求すれば、原則、その請求をした翌月分からの支給開始となります。したがって、繰下げ受給について今から決める必要はなく、そのときの資産状況で判断すればいいでしょう。
 

相談者「若紫」さんから寄せられた感想

深野先生のアドバイスをいただき、今後の生活に少し明るい陽射しが垣間見えた気がします。住宅の購入、年金の繰下げについてはアドバイスを参考に考えていきたいと思います。このたびは貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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