起業には二度目、三度目があってもいい

起業した人が、いったん事業を清算して、新たな会社に転職した後のことについて、最後に書くことにしよう。起業した経緯は人それぞれであるが、一度でも起業を経験したら、二度目のチャンス(タイミングも含めて)に敏感になるものだ。そして二度あることは三度あるともいうように、起業する回数に制限はない。

起業するハードルが低くなり、変化が早い世の中を迎え、ビジネスパーソンの定年年齢は伸び、定年後も元気に働けるし、働くことを望む人、そして働くことが必要な人も増加している。

一度目の起業では、会社を作り、金融機関からの融資を受け、社員を雇い、事業を成長させて、会社を大きくすることを目指した人でも、二度目の起業では、フリーランスとしての働き方を望み、一人会社を設立して、多くのプロジェクトに関わりながら働く起業を選択する人もいることだろう。

起業した経験、会社勤めをした経験、その両方を経験したうえで、自分にとって一番いい働き方を模索していくのが、二度目の起業、三度目の起業になるのかもしれない。

大きな借金をして起業し、事業を辞める時に大きな負債が残っている場合、その清算には5年、10年の月日を要することもあるかもしれない。起業することのハードルが下がったとはいえ、事業にはいろいろなリスクがある。最悪、雇用した社員に会社の資金を使い込まれるようなことすらあるかもしれないのだ。

筆者には、二度の起業経験がある。一度目は20代の時、そして二度目は40代になってからである。それぞれの起業では起業に至った経緯が異なり、それぞれ目標設定も異なる。

一度目と二度目の起業の間には、会社勤めの経験もある。実際にそれらの経験をしてみて思うことは、実際にやってみたからわかったことがたくさんあるということである。失敗して気づいたこともある。無駄な出費をしたから、それが本当に無駄だったとのちに理解できた。

自分が得意なこと、他人から評価されること、社会が必要としていること、それらがあることに気づいたと同時に、その逆もあることがよく理解できた。起業にもいろいろな形がある。そしてその多くの形の中から、自分にマッチした起業の形をみつければいいということについては、起業経験がある多くの人との交流を通じて気づいた。

つまり、起業経験が教えてくれたことを一言で言うならば、「何事も無理を続けてはいけない」という教訓であった。資金繰りはそのわかりやすい例であるが、やりがいを感じないこと、自分が得意でないこと、好きになれないことなども同じである。特に、体力的に無理をして体を壊し、身近にいる人との人間関係も壊してしまっては元も子もない。
 

起業を経験したビジネスパーソンの本懐とは

起業は、始める決意をする時よりも、それを辞める決断の方が何倍も難しく、勇気がいるものだ。起業経験がある人にとって、転職活動を新たに始めることはモチベーションが上がらないこともあるし、転職先を見つけるのに多少の苦労が生じる場合もあるかもしれない。

しかし、起業経験で得たビジネススキルと様々なノウハウは、その後の会社勤めでも、はたまた二度目以降の起業にも活かせることだけは間違いない。人間万事塞翁が馬(故事:幸せが不幸に、不幸せが幸せにいつ転じるかわからないのが人生であり、安易に喜んだり悲しんだりはしないほうがいいという意味)というが、起業した経験、再度会社勤めした経験、二度目の起業に挑戦するなど、人生は長い旅である。

多少の有利・不利など、その時々に幸不幸の差はあるものだが、いかなる時もスキルを磨き、ノウハウを蓄積することが大切である。そして最も大切なのは、家族や友人、取引先やビジネス仲間との心の交流を続け、あまり欲張らず、何事にも誠実さを保つことではないだろうか。

人生100年時代というと、気が遠くなるほど長い時間を想像するが、実は社会に貢献できたことを実感できる時間は、それほど長くないものである。しぶとくサバイバルして、あとは晩節を汚すことがないよう、謙虚に、誠実に歩みを進めること、それがビジネスパーソンの本懐(成就したい希望や願い)ではないだろうか。

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