運動が原因? ジョギングやランニングで膝裏の痛みが起こったら……
運動し始めに起こりやすい膝の痛み・「鵞足炎」
膝が何となくおかしいと感じる程度の違和感から始まり、運動強度の増加や疲労の蓄積によってだんだん痛みを覚えるようになることがあります。膝痛が長引くうちに運動を控えるようになり、また運動不足の状態に「逆もどり」といったことも心配されます。膝の痛みを引き起こすよくある原因の一つである「鵞足炎(がそくえん)」について解説します。
鵞足炎(がそくえん)とは……ランニングなどが原因で起こる膝の炎症
「鵞足炎(がそくえん)」とは、簡単に言うと膝内側周囲に起こる炎症で、ランニングによって起こる代表的なケガの一つです。膝周辺部には多くの筋肉が付いています。膝の内側からやや後ろの部分には、太もも裏側のハムストリングスと呼ばれる「半膜様筋」と「半腱様筋」、太もも前面からは「縫工筋」、さらに太もも内側にある「薄筋」と4つの筋肉が扇状に、すねの内側にある「脛骨(けいこつ)」という骨に付着しています。
この付着部分は、形状がガチョウの足に似ているところから「鵞足(がそく)」と呼ばれており、この部分が炎症を起こしてしまった状態が「鵞足炎」です。
膝の曲げ伸ばしや内転筋などを使う動作を繰り返すと、腱と骨、腱と腱同士がこすれ合うようになり、回数や頻度などによっては腱や腱の周辺を含む組織が炎症を起こし、腫れや痛みを感じるようになります。ランニングは鵞足に付着する4つの筋肉がすべて関与するため、鵞足炎を生じやすいと考えられています。
鵞足炎で運動は避けるべき? 筋トレ、ストレッチ、アイシングは有効?
医師から鵞足炎と診断された場合、ジンジンとする痛みや熱感のある腫れなどの炎症症状が改善するまでは痛みの出る動作は基本的に禁忌と言われています。痛みのある部位を中心に氷などを使って冷やすことを心がけましょう。アイシングの基本的なやり方としては患部を15~20分程度冷却し、一度氷を外してしばらく後にまた冷やすということを繰り返します。これは皮膚が凍傷を起こさないようにするためです。市販のアイスパックや保冷剤などを利用するときは直に皮膚にあてず、タオルなどを巻いて使用します。ただし凍傷を起こしやすいので、そのまま寝てしまったりしないように時間を守ることが大切です。
太ももの裏側のハムストリングスや太ももの前側、内転筋などをストレッチして、膝の内側に鋭い痛みがあるときは、これも痛みがおさまるまでは行わない方がよいでしょう。腱の炎症が残っている状態でストレッチをしてしまうとさらに炎症が拡がってしまうことが懸念されます。
日常動作で痛みを感じなくなった段階から少しずつ活動量を増やしたり、筋トレなどによって筋肉を鍛えたりするようにしましょう。筋力低下によって鵞足に負担がかかって痛みを起こすことも考えられるため、負担の少ないエクササイズから始めるようにします。自重でのスクワットは正しい動作で行いましょう。膝がつま先よりも前に出ないように注意し(膝が前に出てしまうと膝痛の要因になりやすい)、股関節をしっかりと曲げる意識を持って行います。また鵞足に付着する筋肉を軽く手でほぐすことも牽引力による腱の負担を軽減させることが期待できます。この段階でのストレッチは積極的に行うようにしましょう。