お金の悩みを解決!マネープランクリニック/早期リタイア・セミリタイアしたい人のお金の悩み相談

47歳、5年前に住宅ローンを借り残高は2300万円。早期退職は可能ですか?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、夫婦で早期退職をして旅行を楽しみたいと思っている47歳の会社員の女性です。今後のマネープランの考え方について、ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 現在の貯蓄ペースで60歳時点での金融資産は2000万円に届かない

元気なうちに旅行に行きたいという気持ちはわかります。しかしながら、結論からいえば、55歳で早期退職するのは難しいと思われます。ひとつずつ整理していきましょう。
 
まず、現在の貯蓄ペースですが、毎月15万円のうち旅行用の積み立て2万円はいずれ使うものとして除くと毎月13万円。ボーナスも同様に考えると繰り上げ返済用と老後用、予備費で50万円の貯蓄です。年間で206万円となります。ご主人が60歳まで働くとすると残り12年ですから、2472万円となります。これに今ある貯蓄650万円から旅行用の40万円と学費60万円を差し引き550万円と、iDeCoの30万円を加え、合計で3052万円となります。
 
60歳まで働いて貯蓄が約3000万円。住宅ローンは定期的に繰り上げ返済されていますが、60歳で一括繰り上げ返済するとしたら、おそらく残りは1000万~1200万円程度だと思われます。1200万円を差し引くと約1800万円。さらに車の買い替えで200万円とすると残りは約1600万円です。
 
これに退職金の310万円を加えて1910万円。これが、ご夫婦ともに60歳まで働いた場合に残せる金融資産ということになります。この間、旅行用の貯蓄は使うことにしていますので、旅行を我慢することなく、2000万円近いお金を残すことができます。ただし、実際には、冠婚葬祭にかかる費用などは予備費から出ていきますし、車の買い替えも2回は発生する可能性もあり、60歳時点での金融資産は2000万円を切っていることも十分考えられます。
 
年金受給できる65歳までの5年間は、収入がないとすると、この間は貯蓄からの取り崩しの生活となります。住宅ローンは完済し、その他の支出も削減したとしても月20万円程度はかかります。年間で240万円、5年間で1200万円を使うことになり、65歳時点での貯蓄は800万円程度となります。
 
65歳以降は公的年金と個人年金で約230万円の収入。支出が変わらないとすると、年間10万円の赤字です。これ以外に年間でかかるコストも貯蓄からの取り崩しとなり、いつ貯蓄が底をついてしまうのか、ということになってしまいます。
 
しかし、60歳まで働くとすれば、まだ12年ありますから、趣味の旅行費用は削減せず、他の支出を見直すことで貯蓄を上乗せして老後を迎えることも可能でしょう。年金額は十分とはいえませんが、貯蓄からの取り崩しを抑えながら生活していけば、過剰に心配する必要はないでしょう。
 

アドバイス2 55歳で早期退職すると貯蓄ペースも落ち、65歳まで持たない

しかし、55歳で二人とも早期退職するとなると話は違ってきます。年間206万円の貯蓄を7年で1442万円。今ある貯蓄とiDeCoを加えて2022万円。退職金も減って230万円。合計2252万円です。ここから住宅ローンを一括返済すると、残りは数百万円ということになります。
 
55歳からご主人が自営業で仕事を続けるとのことですが、自営業になれば、これまで給与から天引きされていた社会保険料や税金は、自ら支払いをしなければなりません。月10万円ほどの収入では、とても生活ができるとは思えません。
 
アドバイス1で、60歳以降の生活費は20万円程度に抑えるとしましたが、同様に55歳から20万円程度だとしても、毎月10万円ほどの収入では毎月10万円、年間120万円の赤字です。55歳時点での貯蓄は10年持たないでしょう。
 
55歳から自営で今と同程度、それ以上の収入が得られないなら、残念ながら、55歳での早期退職は非現実的といわざると得ません。
 

アドバイス3 少なくとも60歳まで働くことで、その後も旅行できるようになる

病気が再発するかもしれない、という不安は十分理解できます。しかし早期退職してしまうと、貯蓄は生活費に回り、旅行には出かけられなくなってしまいます。好きなことを続けるためには、60歳までは何とか働いていただきたいと思います。もしも体調がすぐれないようであれば、ぱんださんだけ55歳で早期退職するという考え方でもいいと思いますし、勤務形態を変えて無理のない働き方に変えてもらえないか勤務先にご相談なさってみてはいかがでしょうか。
 
現在のペースであれば、住宅ローンも完済でき、老後資金は余裕があるわけではありませんが、困ることなく過ごせるでしょう。何より、好きな旅行を続けていくことができます。
 
本来なら、60歳以降も月8万円程度で構いませんので、少しでも収入を得て、貯蓄からの取り崩しを抑えていただきたいところです。まずは、ご主人と二人で、現実的なプランをご相談なさってみてください。
 

相談者「ぱんだ」さんから寄せられた感想

このたびは、アドバイスいただきありがとうございました。好きな旅行を続けていけるよう、夫婦で相談し、今後にいかしていきたいと思います。

教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金まわり全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。著作に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子


 
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