社員は本当に年功序列の廃止を望んでいるのだろうか
年功序列を社員はどう思っているか
もちろん、そのとらえ方に個人差があることは当然である。損得勘定でいえば、得する人もいれば損する人もいるはずである。損得以外にもどちらが自分にとって快適かどうか、短期的な視点だけでなく、長期的な視点で見た場合など、評価はいろいろ分かれるはずだ。
そのうえで、日本の職場で年功序列がこれだけ長く続いた理由を考えてみると、社員を年功で処遇することにメリットを感じる人が多かったということはないだろうか。つまり、若手からベテランに至る社員の中で、「年功序列は都合がいい」「年功序列は働きやすい」と考える人も少なくなかったのではないかということだ。
例えば業務に関して経験・知識不足でも(若手社員や入社間もない社員では、それも無理ないこと)、本人が時間をかけて能力を高める努力を続ければ、毎年一定分の給料が上がるのが年功序列型賃金の特徴だ。少しずつでも給料が上がっていくことをメリットに感じる人も少なからずいるのではないか。
一方、自分が働いた労力や時間、そして会社への貢献度(成果)に応じた給料が正当に払われないこともあるかもしれない。例えば入社年度が早い、年齢が上というだけで、自分よりも会社への貢献度が低い先輩社員や上司が、自分よりも高い給料をもらっていることがある。若手に限らず、このことを不平等だと思う人はいろいろな世代にいるのではないだろうか。
長い会社生活の中で、ゆっくり成長したい人、できるだけ早く成長したい人、またそれができる人・できない人など、実際にはさまざまなケースがあるだろう。ゆっくり成長したい、もしくは、本当は早く成長したいがそれができない社員にとっては、確実に給料が年々少しずつ上がる年功序列型は決して悪くない制度かもしれない。
会社によっては、若手社員にはじっくりと時間をかけて仕事に取り組んで、ゆっくりと成長してくれることを望むこともあるかもしれない。さらに、先輩社員や管理職に多めに給料を払う理由には、若手への指導にかける分を上乗せしている場合もあるかもしれない。
年功を廃止して成果主義色を強めた場合、それが職場の社員間の競争を煽り、社員教育が劣化し、職場の雰囲気を悪くするという意見も根強くある。
実際、世の中には社員の競争意識が目立って強い企業文化を持つ会社もあり、競争が行き過ぎた場合、それがさまざまな歪みを作り、パワハラや各種労働争議に発展することもある。急激な成果主義への移行を望まない会社があっても当然であり、そのような会社は世の中に多いのではないだろうか。
社員の大半が終身雇用であることを前提にしていた時代には、社員は同じ会社で長期間働き、中高年になってから高給を得ていた。つまり、会社からは生涯賃金として収支の帳尻を合わせてもらっていたのかもしれない。
しかし、現代はそのような時代ではなくなってしまっている。若い時は安い給料でも我慢して働き、社歴が長くなり中高年になってから高い給料で以前の不足分を取り戻すというのは、会社の視点で見ても、もしくは社員の立場からしても、もはや今の時代には合わないのである。