標準報酬月額とは? 社会保険料はどうやって決まる?
会社で従業員の給与から厚生年金保険料・健康保険料を差し引く時には、「標準報酬月額」が使われます。標準報酬月額とは一定範囲の報酬月額(月給等)が同額の厚生年金保険料・健康保険料になるよう区分した金額です。社会保険料を計算するのに標準報酬月額が使われます
厚生年金は32等級、健康保険は50等級に区分されている
厚生年金は最低8万8000円から最高65万円までの32等級、健康保険は最低5万8000円から最高139万円の50等級に分かれていて、それぞれの等級ごとに厚生年金保険料額・健康保険料額が決まっています(協会けんぽ 東京支部 保険料額表参照)。一定範囲の報酬月額が「標準報酬月額」となります。厚生年金は32等級、健康保険は50等級まで(出典:協会けんぽ 東京支部 保険料額表)
標準報酬月額を決める時に含まれるのは月給ばかりではありません。週給、日給、時間給、歩合給でも月給に換算し、交通費、家族手当、住宅手当、残業手当、年4回以上支給される賞与、現物によるもの(食事券や自社製品、社宅など)も金銭に換算されて含まれます。
従業員の標準報酬月額の決め方は? 入社時決定、定時決定、随時改定の3つ
従業員一人一人の月給等から標準報酬月額を決める方法が3つあります。1. 入社時決定
入社した時の報酬月額(月給等)で決まり、原則1月から5月入社はその年の8月まで、6月から12月入社は翌年8月まで、入社時に決定した標準報酬月額を使います。
2. 定時決定
在籍している従業員の4月、5月、6月分の報酬月額をもとに、その年の7月1日から7月10日に、各自の標準報酬月額を決める手続きが定時決定です。その年の9月1日から翌年8月31日まで定時決定で決まった標準報酬月額を使います。
3. 随時改定
月給等、家族手当、住宅手当など固定的賃金が変動し、定時決定(または入社時決定)時の標準報酬月額と比べ、2等級以上の差が生じた月が3カ月続いた場合、変動月から4カ月目に標準報酬月額を改定することを随時改定といいます。
つまり4月に入社したら、そこで標準報酬月額が入社時決定されます。4、5、6月の月給等をもとに7月1日から10日までに定時決定された標準報酬月額は原則、その年の9月1日から翌年8月31日まで使われます。この1年間、もし標準報酬月額に2等級以上の差が生じた月が3カ月続いたら、随時改定で標準報酬月額を改定する、という流れです。
賞与からの厚生年金保険料・健康保険料は標準賞与額で計算
従業員の賞与からも、厚生年金保険料・健康保険料を差し引かれていますが、その際には「標準賞与額」で計算されます。「標準賞与額」では、年3回以下支給の金銭による賞与だけでなく現物による賞与(金銭に換算)も対象になり、支給額の1000円未満を切り捨てた額です。在職老齢年金の調整も標準報酬月額・標準賞与額で計算する
60歳以上でも会社員やパートとして、厚生年金に加入して働いている人も多いでしょう。こういった人が年金を受給しながら働く場合は、「在職老齢年金」として年金額が調整されます。基本月額(加給年金額を除いた老齢厚生年金の月額)と標準報酬月額・標準賞与額の1/12を加えた額が基準額(65歳未満は令和4年(2022年)4月分以降は47万円。令和4年(2022年)3月分までは28万円)を超えると、年金が減額または支給停止となります。
例えば、63歳で老齢厚生年金の年額は9万円(基本月額7500円)、報酬月額が10万円(月給9万円+交通費5000円+家族手当5000円)、賞与が年2回12万円(月額換算1万円)支給される従業員の在職老齢年金を計算してみましょう。
報酬月額10万円は標準報酬月額9万8000円に相当します。
計算式は以下のようになります。
基本月額7500円+標準報酬月額9万8000円+標準賞与額12万円÷12=11万5500円<47万円
この場合、老齢年金は減額されず、年額9万円(月額7500円)のままということになります。
もし「ずいぶん社会保険料が引かれているな」と思った場合は、月給等から標準報酬月額を確認し、保険料額を確認してみましょう(協会けんぽ 東京支部 保険料額表)。
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