食と健康

豚肉の部位・切り方の特徴別使い分けのコツ・調理法

【管理栄養士が解説】豚バラ、豚ロース、豚肩ロースなどの部位で売られている豚肉ですが、日常的な家庭料理はロースかブロックかの切り方だけで選んでもOK! 豚肉の部位別・切り方別の特徴、使い分けのコツ、豚こま・切り落としの違い、調理法による栄養素の変化の有無について解説します。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

使いやすい豚肉は家庭料理の味方! まずは切り方で選んでもOK

豚肉の選び方

豚バラ、豚ロース、豚肩ロースなどの部位に分けられる豚肉。家庭料理では薄切りかブロックかの切り方で選んでも

豚肉の食感は部位や切り方により様々。最近では地域ごとの「ブランド豚」も開発されているので、豚肉の選び方で迷ってしまう方もいるかもしれませんね。豚肉も部位ごとに特徴があり、合う調理法も異なりますので、飲食店などでは細かく使い分けられていますが、日常の食卓では難しく考えすぎなくてOK! 部位が違っても切り方が同じであれば大体美味しく仕上がるのも豚肉の使いやすさの魅力です。詳しくご紹介しましょう。
 

豚バラ、豚ロース、豚肩ロース……豚肉の部位別の特徴・使い分けのコツ 

まずは豚肉の主な部位の特徴について、解説します。

■豚バラ
脂身が多く、柔らかいのが特徴です。脂身が気にならなければどんな料理にも合うので、重宝する部位だと思います。
 
■豚ロース
「豚肉のイラスト」を描くときによく描かれる、おなじみの部位です。豚ロースの良さが最も生きる料理はトンカツでしょうか。
 
■豚肩ロース
同じロースですが、肩ロースはロースよりもコクが深い部位と言われています。首に近い部位で若干硬いので、煮込み料理に合います。
 
■豚ヒレ
柔らかいです。脂肪部分を切り取って販売されるので、「赤身肉」です。脂肪の少ないヘルシーなトンカツ用としても人気があります。
 
■豚こま・切り落とし
漢字で書くと「豚小間」。「小間」はもともとは茶道の用語で4畳半以下の小さい茶室を指していたようです。ここから転じて、小さいものを指す際に「小間使い」「小間物(針や糸、女性のアクセサリーや化粧品など)」などの言葉があります。ですから「豚小間」を現代語訳すると「豚肉の小さいの」となり、どこの部位とも言いかねます。例えば「かた」の辺りを部位別に切っていく際に「かたかな?肩ロースかな?どっちかな?」と迷う部分を集めた肉でもあるからです。安価であることが多いので、たくさん食べたいときに重宝するのではないかと思います。

また、「切り落とし」は部位別にカットした後、肉をきれいな形に整える際に切り落とされた部分。例えば「ロース切り落とし」なら、ロースをきれいな形に整える際に切り落としたあまりの肉、という意味になります。
 
■豚もも
脂身が少なく、ヘルシーです。よく動く部位なので、外もも肉のほうが、内もも肉に比べて若干硬いです。どんなお料理にも合います。個人的な好みによりますが、私は豚も鶏も「もも」が一番好きです。
 

豚肉の切り方は大きく2種類……薄切りかブロックかで選んでも大丈夫

部位別の食感は上記のような違いがありますが、冒頭でも触れました通り、他の肉に比べて豚肉は部位による差異がそこまで大きくありません。そのため、部位よりも実は「切り方」に着目するほうが使いやすいとも言えます。

豚肉の切り方は大まかに分けて2つ。「薄切り」と「ブロック」です。紙のように薄く切って販売されているものが「薄切り」、かたまりのまま販売されているものが「ブロック」です。

料理別に合う部位と切り方の例をいくつか挙げてみましょう。
  • 「豚しゃぶ」……薄切りのロース
  • 「重ね蒸し」……脂が溶けて野菜と絡むので、薄切りのバラ肉
  • 「豚の生姜焼き」……薄切り肉ならどの部位でも美味!
  • 「角煮」……ブロックのバラ
  • 「煮豚」「焼き豚」……ブロックの肩が美味しいです
  • 「豚バラ大根」……名前の通り豚バラのブロック。煮物料理に合います。
このようにベストな組み合わせの肉を挙げることもできますが、切り方さえ合っていれば、別の部位でも美味しくできるのが豚肉の良いところです。料理初心者の方やあまり難しく考えずに料理を楽しみたい方は、細かな部位については一旦置いておいて、楽しんでみるのがよいのではないでしょうか。
 

豚肉はゆでると栄養素が壊れてしまう? 豚肉の調理法のコツや注意点

また、豚肉はゆでると栄養素が壊れてしまうのではないかと心配する方もいるようです。しかし成分表を見る限り、主要な栄養素が減少しているようには見えません。おそらく、実際に栄養素が壊れることはないと思います。
豚肉「もも」の調理法によるカロリー・栄養素の変化

豚肉「もも」の調理法によるカロリー・栄養素の変化(『日本食品成分表』2020年版(8訂)から引用)


エネルギーが上がっているように見えるのは、水分が減っているため。これは調理操作上、仕方のない範囲です。

ワンランク上に仕上げる調理のコツは、
  • 薄切り肉を選ぶ
  • 筋切りをする(ロースなどの筋を、包丁の背でたたいて切る)
  • 塩こうじなどに漬けこむ
などでしょうか。下ごしらえの段階でひと手間かけて、やわらかくするだけで、バツグンに美味しくなります。
 

どの部位でも美味しく仕上がる優秀な豚肉、手軽に活用を 

豚肉は、さまざまな地域からブランド豚などが発売されており、ますます美味しくなってきています。部位別に合う料理は存在しますが、あまり細かいことを考えなくても冷蔵庫・冷凍庫にある別の部位でも美味しく仕上がってしまうところが豚肉の優秀なところだと思います。

冬は白菜と豚の薄切り肉(豚こま)を交互に挟んで、土鍋で炊き、ポン酢で食べるいわゆる「ミルフィーユ鍋」も手軽でおいしいです。通年で美味しく人気が高いのは、豚汁でしょうか。トンカツや豚しゃぶなど、お好みの食べ方で美味しく召し上がってください!
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