子育て

高学歴なのに生きづらさを抱える人……心のバランスを崩したわけ

「有名大学を出ているのに、自信がもてない」「高学歴だけど、人との関わりが苦手」、このような生きづらさを抱えている人は、子ども時代に競争社会の中で心のバランスを崩してしまった可能性が考えられます。子育てにおいて大切なことを心理学的な観点で解説していきます。

佐藤 めぐみ

執筆者:佐藤 めぐみ

子育てガイド

<目次>

高学歴なのに「生きづらさ」を抱える人

高学歴なのに「生きづらさ」を抱える人

高学歴なのに生きづらさを抱えてしまうのはなぜ?

「有名大学を出ているのに、自信がもてない」「高学歴で頭はいいけれど、人との関わりが苦手」などと思う方が、周りを見渡したりご自身を振り返ったりすると、いるのではないでしょうか。

世間がうらやむ経歴や能力をもっているのに、社会で上手くいかず生きづらさを抱えている人の背景には、幼少期における偏った子育てがみられることがあります。

我が子が、頭もよくて、運動もできて、才能にあふれていたら、親は嬉しいもの。ただ、中にはバランスを崩していまい、本人の生きづらさにつながってしまうケースもみられます。

そこから見えてくるのは「能力を追求し過ぎたゆえのバランスを欠いた子育て」です。
 

「自己効力感は高いのに、自己肯定感が低い」というアンバランス

どうなるとバランスを欠いた状態に陥るのかを、心理学的な側面から解説していきましょう。

学歴は高いのに生きづらさを感じることは、「自己効力感は高いのに、自己肯定感は低い」ことで起こりやすくなります。頭はいいけれど、自分は好きではないという状態です。

「自己肯定感」と「自己効力感」という2つの言葉は、どちらも「自己」ではじまり「感」で終わるので、見た目はよく似ていますが、中身は全く違い、混同すると問題につながります。

■自己肯定感……文字通り「自分を肯定する気持ち」のこと。自分の長所のみならず、短所もひっくるめて、肯定している感情。

■自己効力感……自分がある状況に置かれたとき、必要な行動を「私ならうまく遂行できる」と信じられる気持ちのこと。

自分の長所だけではなく、欠点、弱点、苦手分野も全て受け入れて「好き」と言える感覚、それが自己肯定感です。「あるがままの自分」ということですね。一方、自己効力感は、達成経験や成功体験によって高まる性質からも、その子の能力と才能などに特化されます。
 
この2つの言葉を比べると、自己肯定感の方がその子の心の土台的な役割を果たしているのがお分かりいただけると思います。
 

幼少期の競争社会は心のバランスを崩す要因にも

それにもかかわらず、日々子育てをしていると、その土台部分をスキップして、自己効力感が担当する「なにができるか」というところに気持ちが向いてしまうことが非常によくあります。
 
とくに今は幼少教育もさかんですし、競争社会です。なので、学校でも、できる子が注目を浴びます。それにより、もし親が、「テストの点数や成績の順位がすべて」「受験合格がすべて」のように能力だけを追求することに躍起になってしまうと、その子の心を気づかぬうちに傷つけ、自己効力感は高いけれど、自己肯定感は低い状態を作ってしまうことがあるのです。
幼少教育もさかんな現代、能力ばかりを追求することは子どもの心のバランスが崩れる要因に

幼少教育もさかんな現代、能力ばかりを追求することは子どもの心のバランスが崩れる要因に

たとえば、
  • 「○○中学に受からなければ、意味がない」のようにその子の人生を悲観視したり
  • 「ほんとバカ」「なにをやってもダメ」のような全体否定をしたり
  • 「○○くんは1位だって。それに引きかえあなたは……」と他の子と比較して否定したり
  • テストで50点を取ったとき、「最悪」「最低」と言葉で突き落としたり
のような、その子自身を否定するような言葉です。

もちろん親に悪気はありません。真剣だからこそ強い言葉が出てきてしまうのです。でも、子どもの成功を願うばかりに、その子自体を否定するような言葉で奮い立たせようとしてしまうと、テストではいい結果を出せても、自分への愛は揺らいでしまいます。
 
テストの点数がイマイチだったとき、勉強のやる気を出さないとき、ケアレスミスが続くときなど、何か言いたいとしても、その子自身を否定するような言葉を使うのは避ける必要があります。
 

肯定感を伴った自己効力感を育むポイント

子ども自身を否定しないことの重要性に加え、気を付けたいことがあります。育児においてほめることはとても大切ですが、実際には何でもほめればいいというわけではないということです。自己効力感ばかりが高い状態を作らないためにも、ほめる矛先に気を配っていきましょう。
 
自己効力感は、達成したり、ほめられたりすることで高まりますが、親が点数などばかりに重きをおいてほめ続けると、子どもも自分の価値をそれで測ってしまうクセがついていってしまうので要注意です。
 
たとえば、「100点だといい子だけど、50点だと悪い子」のような見方です。親がこういう見方をすると、子どもにもそれが浸み込んでいきます。もちろん点数が高い方が、親としてもうれしいのは当然です。でも、それをそのままその子の評価につなげてしまうと、自己肯定感に影響を及ぼすようになるのです。「ママは100点の私だけを受け入れてくれる。ということは、それ以下はダメということ」と、80点でさえも自分のことを受け入れ難くなってしまうかもしれません。自己肯定感は丸ごと受け入れる“全肯定”ですが、これだと“部分肯定”を起こしてしまうのですね。
 
そうではなく、その点数を取ったその子の頑張りや気力に目を向けましょう。「頑張りがあったからこその100点」「集中したからこその結果」とその過程を強調してほめるのです。結果だけでなく、そこに至ったプロセスやその子の心のあり方に注目することで、その子自身をほめることになるので、肯定感を伴った自己効力感につながります。

子育てにおいては、自己肯定感という土台の部分を築きながら自己効力感を育むことを心掛けることが大切です。そうすることで、その子が将来にわたり、自分の存在に価値を感じながら培ってきた能力を存分に発揮しやすくなることにつながるでしょう。

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※乳幼児の発育には個人差があります。記事内容は全ての乳幼児への有効性を保証するものではありません。気になる徴候が見られる場合は、自己判断せず、必ず医療機関に相談してください。

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