お金の悩みを解決!マネープランクリニック/教育費が準備できるか不安な子育て世代

44歳貯金3500万円、職場ストレスで早期退職を希望しますが、子ども2人のお金が心配(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、小学生と中学生の子どもがいる44歳の会社員女性です。人事異動で何をやってもうまくいかずに仕事を辞めたいと思っていますが、子どもにまだまだお金がかかることで悩んでいます。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 すぐに辞めても大丈夫。少し休養して次の働き方を熟考して

結論から言えば、今すぐ、会社を辞めても大丈夫です。金銭的な心配はいりません。ただ、すぐに10万円くらいの収入を得るためにパート・アルバイトで働くとのことで、そうした気持ちは大事ですが、当面は失業給付がありますから、いったんは休養して、今後の働き方は慎重に考えるようにしてはいかがでしょうか。
 
ご相談者の場合、勤務期間が20年あり、所得も多いので、失業給付の日額は上限の7605円になり、最長150日分の給付が得られます。自己都合退職になるので、2カ月の待期期間があり、その間は収入がなくなりますが、ご主人の収入だけでも十分やっていけますし、2カ月後から約5カ月間、月額にして22万~23万円の給付がありますから、慌ててパートやバイトをするのではなく、これまでの経験を生かした再就職先、厚生年金に加入できる勤務先を探してもいいと思います。まずは、休養して体調と気持ちを整えることが大切です。
 
仮に1年休養するとしても、ご主人の年間の手取り収入は630万円。これに失業給付で約114万円。合計744万円。家計支出が現状と変わらないとすると、年間の家計支出は600万円です。固定資産税など年間で発生する支出を差し引いても、十分やっていけます。毎月の貯蓄やボーナスからの貯蓄は、いったんお休みにしても、1年後から挽回できますから、安心してください。
 

アドバイス2 ボーナスの使い道を見直して、収支を調整すれば、進学も問題なし

仮に、1年後から、復職するとして、収入10万円とします。ここからどのように貯蓄が推移し、教育費などの出費にどう対応していけばいいのか、見ていきましょう。
 
ご相談者が月10万円の収入が得られれば、毎月の収入は50万円。支出は現在と変わらず50万円。毎月の家計は収支トントン。そこで、ボーナスからの支出を見直して、年間50万円は貯蓄に回すようにします。固定資産税の30万円は削れませんから、残り70万円で、その他の使い道の配分を調整してみてください。ご主人が60歳になる9年後には、450万円が現在の貯蓄に上乗せされます。
 
ご主人が60歳時点での金融資産は、現在の3500万円、9年間の貯蓄450万円、ご相談者の退職金750万円を合計すると、4700万円になります。
 
この間、お子さんは高校、大学進学と教育費がかかってきます。2人とも大学まで私立だとすると、まず、高校までで1000万円、大学で1人500万円として2人で1000万円。都合2000万円が教育費として出ていきます。4700万円から2000万円を差し引くと2700万円が残ります。
 
実際の家計管理の場面では、高校までは家計から支出していきますから、毎月の収支で赤字になることがあり、貯蓄からその分が出ていくことになりますが、計算上は、まったく問題ありません。また5年後には第1子が大学、第2子が高校進学となり、ある程度まとまった資金が必要ですが、現在それに対応できる貯蓄がありますから、資金ショートすることもありません。大丈夫です。
 

アドバイス3 65歳以降は、公的年金だけで生活でき、金銭的に困ることはない

ご主人が60歳時点での金融資産が2700万円。ここから65歳定年、年金受給開始になるまでの5年間はどうなるでしょう。
 
ご主人の収入が仮に半減しても毎月の世帯収入は30万円。一方、支出に関しては、30万円以下になっているはずです。10年後には下のお子さんがまだ大学生ですが、上のお子さんは卒業しています。毎月の家計からの教育費分はなくなっています。また家族の小遣いも減額できているでしょう。毎月の家計を収支トントンにできれば、金融資産からの取り崩しもありません。収支が黒字になり、ボーナスが減額されても支給されれば、その分は貯蓄に回すこともできます。
 
65歳定年時には、退職金2000万円が見込めますから、最終的には、老後資金は4700万円ということになります。これ以降は年金のみの生活になっても、現時点での見込み額からは増えますし、不足分があったとしても、貯蓄からの取り崩しは、最小限で済むでしょう。
 
そう考えると、60歳時点で、収入が減るのであれば、ここで住宅ローンを完済してもいいでしょう。10年後の住宅ローン減税が終了時点での一括返済を考えているようですから、それで大丈夫です。おそらく10年後の残りのローンは780万円程度でしょう。60歳時点の金融資産2700万円から780万円を差し引いても、約2000万円は残ります。ローン返済分がなくなれば、毎月の収支はプラスになり、毎月の貯蓄も可能になります。
 
さらに、ここまでの試算に、不動産収入は加味していません。賃貸人がいる間は毎月15万円の収入があり、さらに貯蓄額は増えます。ただし、賃貸人が退去して空室になる期間が長く続くようなら、売却も視野に入れたほうがいいでしょう。築年数が経てば、メンテナンスコストもかかってきます。売却できるときに、売却する判断も重要です。
 
最後に、しばらく休養をする間に、現在の家計支出の全般的な見直しをしてください。共働きでかかっていたコスト、食費、小遣いなど、生活費のダウンサイジングも大切です。浮いた分を貯蓄に回せば、ここまでの試算以上に老後資金を残すこともできるでしょう。ここまでの試算で不安がなくなるようでしたら、浮いたお金は、家族のため、別の楽しみに使ってもいいでしょう。
 
ここまでご主人と2人で頑張ってこられたのです。どう試算しても、不安に思われる要素はありません。いったんお休みして、家族との時間を大事にして過ごされてくださいね。
 

相談者「明日が見えない」さんから寄せられた感想


「どう試算しても不安に思う要素がない」と太鼓判を頂けて、ずっと苦しかった心の重荷がすっとおりた気持ちです。不本意な異動に自分を責める日々でしたが、「主人と2人頑張ってきた」と温かい言葉を頂いて、そうだ、自分なりに頑張ってきた結果なんだから仕方ない、と受けとめられるようになりました。少し心を休めてから、焦らず前向きに、次の職を考えたいと思います。本当に苦しい時に、このような貴重な機会を頂き、本当にありがとうございました。

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教えてくれたのは…… 
深野 康彦さん  
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/伊藤加奈子



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