大学受験

初の「共通テスト」を現役塾講師が解いてみた!センター試験とどう変わった?新傾向と対策

センター試験に代わる初めての「大学入学共通テスト」が1月16日・17日に実施されました。複数の資料を読み取ったり、思考力が必要とされたりする問題が増えて「難しかった」という感想が多かったようです。実際に解いてみてわかった、共通テストの新傾向と対策を考察します。

伊藤 敏雄

執筆者:伊藤 敏雄

学習・受験ガイド

大学入試センター試験に代わって実施された大学入学共通テスト。初めての形式に戸惑う受験生も少なくなかったようですが、センター試験と比べて問題や難易度はどう変わったのでしょうか。出題傾向と今後の対策を考えてみました。
 
初の「共通テスト」が1月16日・17日に実施されました。センター試験とどう変わったのでしょう。

初の「共通テスト」が1月16日・17日に実施されました。センター試験とどう変わったのでしょう。

 

英語リーディングの新傾向:新たに資料を読み比べる問題が

共通テストの英語リーディングでは、これまで出題されていた発音・アクセントや文法問題がなくなり、「スマートフォンでのメールのやりとり」「ファンクラブのホームページ」などをテーマにした全問資料や英文を読む問題に変わりました。
 
また、全体を通して「分量が増えた」という感想が多いようでした。実際に私も問題を解いてみましたが、本文や資料を見比べながら読まなければ正解にたどり着けない問題が多くなったのは確かなようです。
 
例えば、ホテルまで最も早く着くルートを答える問題では、アクセス図だけを読んで答えると誤答となります。本文をよく読むと「最寄り駅からの所要時間はバスの方が短くてすむけれど、道路工事で混んでいるので歩いた方が早い」と正解を導き出すための根拠となる情報が書いてあるのです。
 
ただ資料を読むだけでなく、複数の資料を読み比べなければならないのは、今までになかった出題傾向です。特に大問4は、時刻表など複数の資料を読み比べなければならず、このような問題形式に慣れていない受験生は苦戦したのではないでしょうか。
 
しかし全体としては、従来のセンター試験よりも簡単な英文で書かれており、時間配分さえまちがえなければ、例年通りの得点が取れたと思います。
 

英語リスニングの新傾向:後半の音声は1回のみに

共通テストの英語リスニングには大きな変更点が2つあります。まず、配点がこれまでの50点から100点と倍になり、リーディング(これまでの筆記試験)と同等の配分になったことです。そして、流れる音声が2回のものと、1回のものと2種類になったことです。
 
前半の問題は音声も2回流れるため、比較的やさしい問題が多かったようです。しかし、後半の問題では、問題文や図表を読む時間が与えられたあと音声が1回しか流れないため、聞き取りながら問題を解く力が問われます。あせったり聞き逃したりするとわからなくなってしまうため、後半で苦戦した受験生が多かったかもしれません。
 

国語の新傾向:新たに複数の資料を読み解く問題が

大学入学共通テスト 国語

複数の資料を読み解く問題が追加されて分量が増えたため、速く正確に読む力が求められる

共通テストの国語は、当初想定された契約書のような実用的な文書を読む問題は出題されず、概ねセンター試験と同じ出題傾向でした。

しかし、出題文の内容を理解するために作成したノートや関連する新聞の批評を読んで答える問題が出題されるなど、複数の資料を読み解く問題が追加されているのは新しい傾向といえます。
 
読む分量が増えたため、英語と同様に、速く正確に読む練習がこれまで以上に必要です。
 

数学の新傾向:日常場面を数学で考える問題が

共通テストの数学に記述問題の出題はありませんでしたが、試験時間は70分と当初の予定通り、センター試験より10分長くなりました。それでも時間が足りないと感じた受験生が多かったようです。
 
従来型の数値や数式を答える問題に加え、数学I・Aでは100m走のタイムが最も良くなるストライドとピッチを考える問題のような、日常場面に関連した問題が出題されたのが特徴です。
 
センター試験と同様に、誘導に沿って丁寧に解いていけば解ける問題も少なくないため、今まで以上に計算力や時間配分に気をつければ、大きく崩れることはない問題といえます。
 

日本史Bの新傾向:テーマを深め資料を読み取る問題が追加

共通テストの日本史Bは銭貨の歴史(テーマ)に関わる問題が出題されるなど、資料を読みながらも日本史の知識が問われる総合的な問題は新しい傾向といえます。
 
中には、資料を丁寧に読むだけで正解にたどりつける、いわば読解力だけで解ける問題もあります。しかし、従来通り教科書に載っている知識も要求されました。資料集を読み比べながら、テーマに沿って広く学ぶ力や深く学ぶ力が求められるでしょう。
 

物理基礎の新傾向:身近な現象をとらえる問題が

共通テストの物理基礎は、従来通りの無機質な図ではなく、りんごや木片など具体的なイラストで描かれた資料が多く、ぱっと見てとっつきやすい問題が多くなりました。
 
出題傾向は大きく変わり、mやgなどを記号を多用した数式を答えるよりも、具体的な数値や物理に関する知識を問う問題が多くなりました。台車にスマートフォンを載せて加速度を測定した実験では、データに多少の乱れがあるものとして、理論値ではなく実測値を扱うなど大きな傾向の変化がありました。
 
紫外線など日常生活で身につけられる(雑学的)知識でも解ける問題もあり、何かと敬遠されがちな物理という教科が少しでも身近な存在になるようにという出題者のねらいが反映されているのかも知れません。
 

共通テストの全体的な新傾向

全体として分量が増えたのは、共通テストのどの教科・科目にも言える傾向です。これは問題にグラフや図表、文章などの資料が多く掲載されているためです。一問一答式で覚える知識だけで解ける問題が減った一方で、資料を読みとる読解力や他の資料と比べる読み比べ力が要求される問題が増えました。
 
ただし、こうした傾向には、教科や科目によってばらつきがあるようです。英語や物理基礎のように大きく傾向が変わったものもあれば、化学や数学のように、まだまだ従来通りの教科書に載っている知識が必要とされる問題が多い教科・科目もあります。
 
いずれにしても、基礎知識があれば解ける問題も多かったので、基礎知識が不十分だったり、図表や資料を読み解くことに慣れていなかったりすると、得点には結びつかないでしょう。
 

2022年度以降の共通テスト対策

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共通テストの大きな特徴のひとつが、センター試験と比べて日常生活に関連した問題を取り入れるなど問題作成に工夫が見られた点です。

いわゆる教科書だけの知識ではなく、日常場面に置きかえて考えたり、さまざまな資料を読んだりすることを通して、「読解力」や「思考力」を高めることが最大の対策といえます。
 
また、分量が増えたこともあり、多くの資料を読み比べたり、文章や資料を速く正確に読む練習(速読力)をしたりすることも必要な対策といえます。特に時間配分はこれまで以上に重要で、普段から制限時間内に問題を解く練習を心がけましょう。
 
英語では英単語や文法的な知識、理科や地歴・公民では教科書のすみに書かれているような細かい知識はそれほど必要とされません。しかし、歴史では流れや背景まで、数学では公式が導かれるまでの過程を理解していないと解けない問題が多いのも確かです。基礎的・基本的な知識を丸覚えするのではなく、理解を深めたり活用したりすることを通して、基礎基本の定着を図りましょう。
 
そのためには、やさしく丁寧に解説した参考書やテーマ別にまとめられた参考書など、教科書以外の教材を使って、学習を広めたり深めたりする工夫が必要です。YouTubeなどで、わかりやすくまとめた動画を活用して学ぶこともおすすめです。

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