歌舞伎

コロナ禍における歌舞伎界の厳しい現状…「最先端×伝統」が復活のカギに(3ページ目)

未曾有の災害といってもいい新型コロナウイルスが世界中を駆け巡った2020年。歌舞伎界も大きな打撃を受け、現状は非常に厳しいままです。しかし、さまざまなアイデアと伝統芸能を掛け合わせた新しい歌舞伎が誕生し、将来への希望も充分に感じられます。今回は、その新しい歌舞伎のうちの一つである市川弘太郎主催の狂言と歌舞伎のコラボ企画「不易流行」の概況と、市川弘太郎のインタビューをまとめました。

宗像 陽子

執筆者:宗像 陽子

歌舞伎ガイド

 

澤瀉屋若手が発信「不易流行

 
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歌舞伎でも人気の演目「連獅子」の中で演じられる「宗論」


こういった動きの中にあって、新たにご紹介したいのは、「不易流行」プロジェクトです。主催は、澤瀉屋の市川弘太郎。2020年12月13日に配信された第1回目は、ゲストとして狂言役者の善竹大二郎さんを迎え、歌舞伎と狂言がコラボしたオンライン公演を配信しました。
 
弘太郎さんが「不易流行」を立ち上げたのには、理由がありました。一つには、新型コロナウィルスの拡散予防のため、舞台に立てる機会を失い、改めて自分たちでできることをやろう、立つ場がないのであれば作ってしまおうと考えたことです。
 
もうひとつ大きな後押しとなったのは、親しい友人であった狂言師の善竹富太郎さんが、4月に新型コロナウイルスで突然亡くなったことでした。「いつか、狂言と歌舞伎の同じ演目を一緒に上演したいね」と語り合っていたにもかかわらず、それは絶対にかなうことがないという現実を突きつけられ、コロナ禍であっても、「やろう」といったん思ったことは、何としてもやらなければならないと感じたそうです。
 

「不易流行」オンライン配信

収録は、10月に山梨県の身曾岐神社で行われました。
 
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ロケーション抜群の身曾岐神社での収録。


美しい身曾岐神社のロケーションの中、弘太郎さんの「不易流行」にかける思いを語る挨拶に始まり、能の「三人夫」「宗論(狂言)」「鶴亀」「宗論(歌舞伎)」、アフタートークと、2時間にわたっての見ごたえのあるプログラムとなりました。

 歌舞伎は、400年の歴史をもち、さまざまな芸能を取り込み独自の発展を遂げました。江戸時代より前の時代設定の「時代物」、江戸時代の現代劇である「世話物」、舞踊、「新歌舞伎」など、さまざまなジャンルがあります。その中には能・狂言の演目から変化した作品もあります。
今回上演された「宗論」も、もとは狂言の作品。狂言と歌舞伎の「宗論」を両方見ることで、能狂言の世界の作品を、簡易化し、華やかな内容になったことがすんなりと腑に落ちる面白い内容となっていました。
 
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左から善竹大二郎さん、市川弘太郎さん、善竹十郎さん、川野誠一さん


「三人夫」「鶴亀」はともに、五穀豊穣や天下泰平を祈る祝祭劇。もともと芸能とは、どうやったら人々が平和でいられるのだろうかというパワーを後押しするもの。それぞれの「宗論」の前に、芸能の本来の意味を問う作品がかかったことになります。
 
また、若い役者がきびきびはつらつ、故・善竹富太郎さんのお父様善竹十郎さんが軽妙枯淡な演技をしていたことも印象的でした。
 
13日の配信を終えた弘太郎さんにオンラインにてインタビューをすることができました。

>次ページ 市川弘太郎にオンラインインタービュー
 
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