観光、飲食同様、演劇界も大きな打撃を受けています。日本の伝統芸能である歌舞伎もまた、例外ではありません。コロナ禍における2020年の歌舞伎界の現状と希望についてご紹介します。
歌舞伎界へのコロナの影響
歌舞伎座は新型コロナ感染拡大予防のために、3月から7月まで休演となりました。5月から3カ月をかけ、市川海老蔵が「十三代目市川團十郎白猿」を襲名するというビッグイベントも控えていましたが、中止。2020年12月現在、襲名披露興行のめどはたっていません。3月上旬の歌舞伎公演の中止を知らせる。この後、さらに中止は相次ぐ。
高尚な雰囲気もありながら、庶民的な猥雑さがマッチングしている不思議な空間、歌舞伎座でしたが、人形焼きやめでたい焼きのいい香りもなく、元気な声を出している客寄せのおばさんもいません。そんな一抹の寂しさはありましたが、それを吹き飛ばしてくれるような役者たちの芸に、観客は大いに拍手で応えます。まずは開場した。そのことに喜びを感じた8月でした。
普段はなかなか買えない1等席を購入。8月の筋書は簡素なもので無料配布だった。
一方、東京の国立劇場も3月のプログラムが中止となり、10月に幕間ありの2演目、2部制で再開しました。国立劇場では残念ながら11月に、千秋楽まであと3日というところで役者にコロナ陽性者が出たため、2部のみ3日間中止となりました。
歌舞伎座も国立劇場も12月現在、大きなクラスターが出ることもなく続けられているのは、ひとえに役者および関係者、観客の努力によるものと思います。
歌舞伎座は、2021年1月から、1部2演目ずつで3部制となります。2演目ということは幕間が入るので、少しゆったりと観劇ができるようになります。国立劇場では、新年の初春歌舞伎公演では、例年でしたら初日の鏡開き、たる酒のふるまい、曲芸、獅子舞などが催されますが、今年は中止。しかし、演目は例年通り、通し狂言がかかります。「新春浅草歌舞伎」は中止ですが、新橋演舞場の「初春海老蔵歌舞伎」は上演されます。
少しずつ、じわじわと様子を見ながら、細心の注意を払いながら、コロナ以前に戻るべく前に進んでいるのです。
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