お金の悩みを解決!マネープランクリニック/自営業・フリーランス・会社経営する人のお金の悩み

56歳自営業、コロナで売り上げが低下。会社をたたんで手取り18万円で65歳まで働いた場合の老後は?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回のご相談者は、会社を経営する56歳のシングルマザーの方。このコロナ禍で売り上げが低下、今後、会社を継続するか、廃業するかで思案中。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 60歳までに投資商品の比率を下げていく

まず、自営されている会社を今後も継続するか、廃業するかですが、当然ながらその選択は最終的にはぽんたさんが決められることです。ただし、ご自身の年齢や、すでにお子さん2人が独立されていて、家業を継ぐということではなさそうだということ。さらにもっとも大きな問題として、このコロナ禍で、すでに売り上げが落ちている中、今後元に戻る可能性が難しい状況であれば、廃業するにはいい時期だと考えます。
 
加えて言えば、シングルマザーとして自営でお子さん2人を育てられたのですから、よく頑張ってこられたと思います。ですがこれからは、ご自分のペースで働かれ、ご自分のためにお金を使う。そういう生活に切り替える時期でもあると思います。
 
では、廃業するとして、今後老後生活に向けて資金的にはリスクはないだろうかという点が、今回のご相談ですが、ぽんたさんが書かれているように「手取り18万円で65歳まで働いた場合」を現時点で行ったと想定して、試算をしてみましょう。
 
いただいた収支データによれば、個人の生活費が22万6000円となりますが、自営を辞められると会社の経費としていた通信費が上乗せされますから、これをプラス1万円として計23万6000円。収入が手取り18万円に利息・配当が月2万円ですから、単純計算で月3万6000円の赤字です。貯蓄については、そもそも月7万円を積み立てていた小規模企業共済は継続できませんが、iDeCoは中断するか、貯蓄から払い続けるかになります。 
 
ともあれ毎月3万6000円の赤字は年間43万円。ただし、年間で発生する不定期支出もありますので、赤字幅は年間で50万円といったところ。これを公的年金支給となる65歳になるまで継続すると450万円となります。
 
これを手持ちの貯蓄、金融資産から捻出するわけですが、会社の貸付1000万円はここでは考慮しないとしても、金融資産は2400万円。十分捻出は可能です。
 
ただし、現金は少ないので、株式、投資信託、社債を適宜、現金化しておく必要があります。そもそも貯蓄商品の比率が極端に低いのが気になります。これを機会に、投資商品を売却し、60歳までには貯蓄商品と投資商品の割合を6:4か、少なくとも5:5に落としたいところです。
 

アドバイス2 想定されるリスクには今から備える

今度は65歳以降について考えます。
まずこの時点で手元にある資金=老後資金ですが、65歳までの生活費 450万円を金融資産から捻出すれば、残りは1950万円。個人年金保険から受け取る年金の総額は、3本加入のうち1本の年金額が不明ですが、掛金から考えて700万円前後でしょうか。
 
これと低解約型保険2本の解約返戻金が1300万円、iDeCoの掛金(加入期間3年半、廃業を機に中断した場合)と小規模企業共済の掛金(加入期間5年)の合計はおよそ500万円とします。
 
さらに会社が支払っていている退職金用の保険が2本。詳細は不明ですが、これを1000万円とすれば、これらすべて合算して5450万円。一部詳細がわかりませんが、いただいたデータから類推して、これが老後資金(一部前倒しでの加算を含む)の総額となるわけです。
 
次に65歳以降の生活費ですが、 一部保険料の支払いがなくなりますので、それ以外が今と変わらないなら、月額21万円ほど。これに年間の不定期支出を加えて月額22万円とします。
 
一方、収入となる公的年金は、派遣での加算も考えて月額13万円。手取りで11万円前後でしょうか。配当については、年齢とともに投資商品の比率をさらに下げる=いつでも使える現金を手元に置くことが必要ですから、ここでは考慮しないとします。そうなると、この時点で不足額は約11万円。65歳から30年間、95歳まで3960万円。100歳までなら4620万円。他に予備費として800万~1000万円(医療費、介護費、住宅リフォーム費用など)も加えると、100歳なら5400万~5600万円ほどあれば安心ということになりますから、ぽんたさんの考える廃業後の資金プランどおりなら、計算上、老後資金は「足りる」ということになります。
 

アドバイス3 減収になった分、生活を抑える意識を

ただし不安要素もあります。まず、ぽんたさんが派遣社員として65歳まで手取り18万円の収入を継続的に得られるかどうか。その確証はありません。例えば、何らかの理由で60歳までしか働けなかったなら、老後資金は先の試算より約1000万円目減りします。
 
もうひとつの不安は、会社がお母さんから借り入れている2700万円(現在の残高)と欠損金400万円です。これらをどう処理されるのか。それに合わせて、会社に貸し付けている1000万円は回収できるのか。少なくとも借入金については、会社はもちろん、ぼんたさん個人も肩代わりできない金額だと思われます。もしも、会社の建物が建つ土地を母親名義にして返済するのであれば、ぽんたさんが心配されているとおり、今度は他の相続人の方との相続が発生する可能性が高まります。
 
もちろん、会社の資産や負債については税理士の方が適正な方法で処理されると思います。では、家計の点からこれらリスクに備えるとすれば、何ができるでしょうか。結果的には、より老後資金を増やしていく、つまりは生活費を抑えるということになります。
 
理想をいえば、廃業後、65歳までは収入の範囲内で生活をするということ。手取り18万円に配当・利息が月2万円ならば、毎月の生活費も20万円以内に抑えるということです。現状では月3万6000円の削減ですが、まだその余地はあると考えます。急には難しいかもしれませんが、「減収になったらその分、生活コストも抑える」という意識を日々持てるかどうか。それが廃業後の大きなポイントでしょう。そしてそれが実践できれば、想定されるリスクの対処を含め、老後資金については安心していいと考えます。
 

相談者「ぽんた」さんより寄せられた感想

この度は複雑な相談に細かくアドバイスいただき本当にありがとうございました。深野先生からご指摘いただいた点、まさにおっしゃるとおりだと思いました。私も株や投資信託の比重が高く不安に感じていたのでスッキリしました。現金残高に関しては家のローンを夏に一括で返済したため、一気に残高がなくなってしまいました。住宅ローン減税を見据えて借りたものの、子どもの教育費も終了したので身軽になることを選択しました。株も長期間保有しながらも損をしている銘柄ばかりなので、思い切って損切りして徐々に現金化していこうと思います。会社の廃業についてはもう少し様子をみて判断しようと思います。今は深野先生のアドバイス通り、会社も個人の家計もスリム化して無駄な出費を抑え、現金を残す努力をしていきたいと思います。コロナ禍、先行き不安ではありますが、親の役目も最低限は果たしたので自分のために働きつつ、母への返済も継続しながらなんとか頑張っていきたいと思います。


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深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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