話し方・伝え方

5人に1人はHSP? 身近にいる傷つきやすい人への伝え方

繊細で傷つきやすいHSP。彼らの特性を活かすための、配慮ある伝え方を確認しておきましょう。自分の正しさを押しつけない、多様性を認める働き方は社会の課題です。そしてその多くは伝え方で解決できます。できることからトライしていきましょう。

藤田 尚弓

執筆者:藤田 尚弓

話し方・伝え方ガイド

HSPを知っていますか? 傷つきやすい人への伝え方

HSPの人への伝え方

HSPは5人に1人ともいわれている

皆さんは「HSP(Highly Sensitive Person:ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼ばれる人たちがいることをご存じでしょうか。感受性が強く、敏感なため、何気ない一言が思わぬダメージを受けてしまう。生きづらさを感じることも少なくないHSPを特別な存在だと思っていませんか?

一説によるとHSPは人口の20%、つまり5人に1人の割合で存在するともいわれています。あなたの職場にも、敏感で傷つきやすい人はいるかもしれません。HSPは病気のようなものではなく、生まれもった性格や体質のようなものです。自分に合った職場であれば、敏感でさまざまなことに気がつきやすい特性を活かして、一般の人にはない力を発揮することもできるといわれています。しかし理解がない職場では「根性がない」「気持ちが弱い」など、低く評価され、生きづらさを感じてしまうこともあります。
 

HSPの特徴とは

具体的にイメージするために、高敏感症の研究をしている心理学者のエレイン・アーロンが挙げているHSPの特徴をご紹介しておきましょう。
 
・微妙なことにもよく気づく
・思慮深い
・考え過ぎる
・結論を出すのに時間がかかる
・音、人ゴミ、複雑なタスクなどに圧倒されやすい
・感情反応が強い
・共感力が高い
・感情の振れ幅が大きい
・他者の喜びや悲しみも自分のことのように感じやすい
・小さな変化に敏感
・過度に気にし過ぎる
 
皆さんの職場にも「まさに当てはまる!」という人がいるかもしれません。
 

もしかするとHSP!? 傷つきやすい人チェックリスト

配慮ある伝え方を意識することから始めよう

配慮ある伝え方を意識することから始めよう

先行研究をベースに、簡易的なチェックリストを作成しました。HSPかもしれないという人がいる場合、その人の言動をイメージしながらチェックしてみてください。もしかすると「自分もHSPだったのか」と気づくかもしれません。
 
□一度にたくさんのことを頼まれるとイライラする
□うるさい場所や混みあっている場所が我慢ならない
□他者の喜怒哀楽に影響されることが多い
□察することが得意で、察してほしいと思うことも多い
□初めての場所は苦手でなるべく避けたいと思う
□人と急に仲良くなることはできない
□空想をすることが多い
□相手の顔色を優先して自分のキャラや意見を変えてしまうことが多い
□表情から直感的に悪意や嫌悪感を察知してしまうことがある
□些細なことで傷ついて自分でもびっくりすることがある
□寛容になりたいが自分の話ばかりする人に耐えられない
 
当てはまる項目が複数あった場合、HSPを疑ってもよいでしょう。HSPだからといって落ち込む必要はありません。過敏であるがゆえのデメリットはありますが、自分に合った環境であれば一般的な人よりも高いパフォーマンスが発揮できるという報告もあります。

周りにこのような人たちがいる場合には、彼らが辛くならないような工夫をしながら、適切な環境下で働けるようにすればよいのです。
 

HSPの人への伝え方

「もしかしてHSPかも」と思う人が職場にいる場合には、以下の点に注意してコミュニケーションをとるよう心がけるとよいでしょう。敏感であるという特性を活かせれば、よりよい成果をあげてもらえるようになります。
 
・大きな声を出さず、穏やかに伝える
怒鳴る、気合いを入れる、励ます、脅かすなど、昔ながらの指導はNGです。HSPの人は大きな音が苦手ですし、HSPでなくとも大きな声に圧倒されてしまう人は少なくありません。「このぐらいは、あたりまえ」「俺のときはこうだった」というような考えは、もはや時代にはマッチしないと認識しましょう。穏やかに話しても指導は十分にできます。コツは話はじめの声を小さくすること、話すスピードを少しゆっくりにすることです。この調整をすると、まくしたてるような話し方はしにくくなります。
 
NGフレーズ例)
「なんだ、このやり方は!」
 
お勧めフレーズ例)
「このやり方をした理由を聞かせてもらっていいかな?」
 
・一度に多くのことを伝えない
HSPの人は、一度に多くのことを伝えられると圧倒されてしまうことがあります。これは「頼むときは1つずつにする」「量をわけて伝える」「たくさんの依頼をしたい時にはメモを渡す」といった工夫をすることでスムーズになります。HSPでない人であっても、伝える内容は3つまでに絞るのが基本です。「もしかしてHSPかな」と感じる人には、ポイントを1~2に絞って、都度、伝えることから試してみてください。
 
NGフレーズ例)
「××をお願いします。それと○○は何時までに。それがおわったら▽▽をやって、その確認は××さんに」
 
お勧めフレーズ)
「××をお願いします。終わったら頼みたいことがあるから声をかけて」
 
・返事を急かさない
HSPの人の中には私たちの想像を超える深い考慮をする人がいます。そんな時にイライラして急かしてしまうのはNGです。普通の人では気がつかないことまで想定するのは、時間がかかります。しかし、見落としがちなことまで考えるというのは、会社にとってのメリットもあるはずです。
 
NGフレーズ例)
「なんで考え込んじゃうの? 意見を聞かせてよ」
 
お勧めフレーズ)
「考えがまとまったら教えて」
 
・ショックを受けているときは見守る
何気ない言葉や表情を読み取り、傷ついてしまうことも多いHSPの人たち。ショックを受けている様子のときには、無理に励ましたりせずに、混乱から抜け出すまで見守りましょう。本人も過敏な状態から抜け出そうとさまざまな行動を試みています。辛いときに、さらに考えさせるようなアドバイスなどは逆効果です。

NGフレーズ例)
「気にしすぎだよ。そんなに心が弱くてどうする」
 
お勧めフレーズ例)
「落ち着いたら、声をかけて」
 

ひいきではなく、HSPの強みを活かす

前向きで外向性が高いと、一般的には評価されやすい傾向があります。しかし内省的な視点や繊細さも素晴らしい個性であり強みの一つに違いありません。5人に1人とも言われている「敏感過ぎる人たち」について理解し、強みを生かすことは大事なことだと思います。さまざまな人が活躍しやすい職場づくりと、ひいきは違います。繊細な人にとって、どれだけ刺激を強く感じてしまっているかを想像できないと「打たれ強さが足りない」「こらえ性がない」といった考え方をしてしまいがちです。この機会にぜひ、普通を強要してしまうことの残酷さも想像してみてください。

小さな変化に気づける特性、繊細な調整ができる強みなど、素晴らしい特性をもっているHSPの人々。そうでない人が配慮したコミュニケーションをとることで、仕事の効率を上げることは可能なのです。自分の正しさを押しつけない、多様性を認める働き方は社会の課題です。そしてその多くは伝え方で解決できます。できることからトライしていきましょう。

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