「おおげさ」「気にしすぎ」と言われたことはありませんか?

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「HSP」という言葉が最近、あちこちで見られるようになりつつあります。HSPとは、Highly Sensitive Personの略で、「ひといちばい敏感な人」を意味します。エレイン・N・アーロン博士が提唱するもので、専門用語としては、Sensory-Processing Sensitivity (SPS=感覚処理感受性)と呼ばれるそうです。世界の人口の4~5人に1人はHSPだともいわれています。

HSPの人の特徴として

□明るい光や強い匂い、ザラザラした布地などに圧倒されやすい
□痛みに敏感である
□サイレンや騒音など大きな音に悩まされやすい
□短時間に多くのことを抱えると慌ててしまう
□暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている
□繊細な香りや味、音楽など芸術が好きで楽しむ

□人が不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるか気づける

などが挙げられています(参照『ささいなことにもすぐ「動揺」してしまうあなたへ。』ソフトバンククリエイティブ株式会社)。ご自身や身近な方で思い当たる方はいませんか?

実は、筆者自身もHSPを自覚しています。一般の人から見た「ちょっとした刺激」の一つひとつを敏感にキャッチしてしまい、それがストレスになるので、人混みや都会の喧騒が苦手です。

自分が当てはまるか知りたい方はアーロン博士の公式サイトを訳しておられるこちらのサイトでセルフチェックすることをおすすめします。
 

疲弊しやすい、けれど繊細さは一方で武器になる

さて、HSPの人がなぜに悩むのか。それは多くの人にとって平気なことが、HSPの人にとっては非常に驚いたり傷ついたりすることなので、人知れず疲弊してしまうからです。そして、「うまく人とつきあえない」ことに悩みます。

例えば、HSPの高垣理史さん(仮名・20代)は「同僚が書類を持ってきたとき、机にバサッと無造作に置くことがあるけれど、それすら僕はビクッとして傷ついてしまうんですよね」と話します。手から手へ丁寧に渡す。もしくは広がらないようにそっと机に置く。それが彼にとっての普通。とはいえ「時短」「効率」が叫ばれて久しいスピード勝負の昨今、そんなことを気にかける人がほとんどいないことも、彼は承知です。だから我慢します。HSPの人は共感力も高いので、相手を気遣ってなにも言えなくなり、人知れずストレスを抱えることになってしまいます。

また、いろいろな刺激に敏感なため気が散りやすく、発達障害ADHDと誤解されることも多いと博士の著書に書かれています。どちらの特性も持つ人もいるのでしょう。

博士によれば、HSPの人たちは脳がほかの人たちと少し違うそうです。また、この特性は、新しく発見されたものではなく、これまでは「内気」だと誤解されてきたそうです。さらに、HSPのうち7割が内向型で、3割は外向型なのだそうです。この外向型の人は、さらに人から誤解を受けてきた可能性があるのです。アーロン博士自身「敏感であることと内向的であることは同じ」だと、以前は捉えていたそうです。

ここで少しお伝えしたいのは「内向的」という言葉の解釈。多くの人は「社会的内向性」、つまり、人づきあいが苦手なインドア派のイメージを持つのではないでしょうか。

しかし、本来の「内向」という言葉は「興味や関心が自分の内側に向かう」ということ。「深く掘り下げる」「自己探求をする」ということを指しています。これらを「社会的内向・外向」「思考的内向・外向」と別の尺度として設定している心理検査法もあります。

また、この「内向」と「外向」、「悲観」と「楽観」などの、「尺度」の解釈は難しく、本来、どちらの資質を持ち合わせており、時と場合によってどちらかが発動するだけであり、自身の傾向がよりどちらが強いかを認識するものと個人的には解釈しています(諸説あります)。

私自身、内省や自己探求が好きなので内向も自覚していますが、質問試験紙法で外向型のほうがやや高くなるので、便宜上「外向」を自認しています(大きな差が出る方もいれば大差がない方もいます)。ご参考まで。
 

ストレスとなる刺激についてパートナーに説明を

さて、話を戻します。そんな「ひといちばい敏感な人」が生きていくには、どんな工夫をすればいいのでしょうか。

実体験をもとにお伝えすると、筆者は「長所」にフォーカスして仕事を選択し、働き方も自営業とアルバイトの両輪で働くなど工夫してきました。私の場合、HSPでも少数派の「外向型(HSE)」で、さらにその中の「刺激追求型」にも該当しました。

自分の内なる世界への探究願望と同時に、疲弊すると知りながらも外の世界や人に限りなく興味と関心があるのです。

極度の人見知りでありながら、筆者はこれまで1800人の初対面の方にインタビューし、相手の表情や言葉尻などから、さまざまな情報を読み取り、次の質問を考えたり傷つけないように言葉を選んだりしてきました。これはHSPだからこそできることと自負しています。

一方で、なにげない会話でも、その人の表情や言葉の抑揚から「あぁ、○○さんのことを暗に批判しているんだな」「○○のことでイライラしているのだな」という情報もキャッチしてしまうので、飲み会や女子トークは疲弊します。街中にいても周囲の人の怒りのエネルギーや、悲しみのエネルギーを非常に敏感に汲み取ってしまいます(エンパスといわれる別の特性の可能性も)。

疲弊するほどの敏感さも、インタビューやカウンセリングの場では「能力」となります。発達障害の方にもいえることですが、短所は同時に長所でもあると知ることは重要です。

①短所を長所に捉え直す……つまり、リフレーミング(物事の見方・捉え方を変える)力が重要なのです。そして、②自分がどんなことに敏感で傷つきやすいのかを知り、避ける工夫をする必要があるのです。

では、恋愛やパートナー関係に於いて、HSPが気をつけるべきことはどんなことでしょうか。

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1)パートナーに「HSPの特性」を知ってもらう
2)「一人になってクールダウンする時間」が必要であることを伝える
3)疲れやすい自分を知ったうえでスケジュールを管理する


扱いにくい人……というレッテルを恐れ、しんどさを秘めてしまい、疲弊してしまうHSPですが、その特性を客観的に記した文献を見せることで、人に知ってもらいやすくなりました。そのなかの自分の苦手をちゃんと伝えましょう。

筆者も夫に説明しやすくなり、「叫び声や暴力シーンのある動画を見るなら音量を小さくしてね」と伝えられるようになりました。ただ、夫は夫で「自ら相手を気遣う行動をする」のが苦手な特性を持っているので根気よく伝えています。

どれほど苦手なのか「同感」はしてもらえなくても「あなたは苦手なんだね」と受けとめてもらう(本来の意味での共感)ことが重要です。

一方、趣味で作曲していますが聴いた人が感動してくださったりしますし、アイデア発想力にも自負があります。「敏感さ」は芸術や発想力に活かすことができるのです。

また、人見知りな男性や子どもに対して、配慮しながら距離を取りながら少しずつ仲よくなれるというのもHSPの長所です。逆に、慎重になり過ぎる傾向はあるかもしれませんね。

「刺激追求型」は恋愛でも積極的にもなれるでしょうけれど、その分、本当は敏感で傷つきやすいと相手に理解してもらえない危険性もあるので、パートナーにしっかり説明しましょう。

リフレーミング上手になって、繊細さを良い方向へと活かしましょう。それを受け止め配慮してくれる相手が見つかれば、HSPの人は、相手を思いやれる優しいパートナーになれるはずです。


【参考図書紹介】

『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ』エレイン・N・アーロン著
2000年に発行されたおそらく日本で最初に紹介されたアローン博士の著書の、文庫本バージョンです。いちばん基本的な部分はこの書籍を参考に。セルフチェック項目も載っています。

 

 

『ひといちばい敏感な子』エレイン・N・アーロン著
「うちの子、HSPかも!」という方のための本ですが、個人的には「パートナーがHSPの方」にも読んでいただきたい本です。パートナーの子ども時代のことを想像してあげられるかもしれません。

 

『トランスパーソナル心理学入門 ~人生のメッセージを聴く~』諸富祥彦著
HSPに関する書籍だけが役立つとは限りません。アーロン博士の源流であるユングなど心理学の世界に足を踏み入れるのも楽しいでしょう。特に、「恐れ」と「冒険欲求」というアンビバレントな想いを持つ「刺激追求型」には「トランスパーソナル心理学」は生きるヒントになるでしょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。