手紙の書き方・文例

「よろしかったでしょうか」は誤用? バイト敬語が気になる理由

「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか」などの「よろしかった」が気になる、不愉快などと言われ随分経ちますが、なぜそれほどたびたび問題になるのでしょうか。改めてその理由と、違和感のない言い換え表現をお伝えします。

井上 明美

執筆者:井上 明美

手紙の書き方ガイド

<目次>

「よろしかったでしょうか」はよく不愉快な表現といわれる

「以上でよろしかったでしょうか」は不愉快?

「よろしかったでしょうか」に違和感を覚える理由とは?

飲食店で接客を受ける際の会話などの中で「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか」という表現をよく耳にしますが、この「よろしかった」が気になる、不愉快などといわれて久しいものです。

なぜ現在もたびたび問題になるのか、改めて「よろしかったでしょうか」を見直してみましょう。まず「よろしかった」は、どのような場面で使われどんな意味をもつ言葉なのでしょうか。

■「よろしかった」とは
「よろしかった」の基本で、もとは「よかった」です。「昨日の映画はよかった」と言えば、過ぎた終わったことに関して、今現在の感想としてよかったと言っていることになります。
 

「ご注文は〇〇でよろしかったでしょうか」はなぜ気になる?

では、問題の「よろしかったでしょうか」はどうでしょうか。「ご注文は〇〇でよろしかったでしょうか」を例に考えてみましょう。

注文を聞き終わった後なのだから過去のことと捉えるならば「よろしかった」も許容範囲と見なされるかもしれません。また、うっかり注文内容を間違えないように再度確認したいというような意味で「(恐れ入ります、再度確認させていただきたいのですが)先ほどのご注文は○○でよろしかったでしょうか」ならば理解できるでしょう。使う側としては、間違いがあってはいけないという配慮の気持ちもあるのだと考えられます。

その他、お客様が急ぎの配送を希望の場合、すでに伝票に明日午前着と記入してしまったけれど、急ぎであるからそれで問題ないはず、よかったよねと戻って確認するような場面ならば、「明日の午前のお届けでよろしかったでしょうか」は再確認という意味で問題はないものです。

しかし、たった今聞いたばかりの事柄である注文内容を確認する言い方として、たった今なのに過去・完了のような響きをもつのはなんだか不自然さを感じるという点で違和感があるのではないでしょうか。
 

さらに違和感がある「よろしかったでしょうか」表現

「よろしかったでしょうか」のどこがおかしく感じられるのか

未来のことに過去・完了や確認の表現が使われているため、違和感が生まれる

「本日はこちらでお召し上がりでよろしかったでしょうか」という使い方は、もっと問題になると感じます。お客様は、まだこちらで食べるとは言っていないのに、その意味では過去・完了や確認というのはおかしなものです。

お客様の様子や品物の量などから、店内での飲食か持ち帰りかを予想できることもあるでしょう。しかし、まだ何も言っていないのに、こちらで食べるんですよねと念を押されているような、当然だというようなやや押しつけがましさを感じるという点で同じく違和感を与えてしまうことがあるのでしょう。

また、尋ねる、確認するにしても「ご注文の品は以上でよろしかったでしょうか」「お飲み物はお食事のあとでよろしかったでしょうか」「お会計でよろしかったでしょうか」と同じ言葉ばかりを連発するという点にも問題があると感じます。
 

「よろしかったでしょうか」の違和感や不快感のない言い換えは

以上のような誤解を受けないために使える、言い換え表現を挙げてみます。

確認する場合にはひと言、クッション言葉として「恐れ入ります」などを入れたうえで、次のような言い回しを使えば違和感がないでしょう。

「ご注文の品を確認いたします」
「ご注文いただいた品を念のため確認させていただけますでしょうか」
「ご注文いただきました品は以上でございます」
「もしも追加ご注文などがおありになりましたら、こちらのボタンでお呼びくださいませ」


なお、「約束来週の土曜でよかったよね」のように、同じ過去形でも「よかった」は全く問題なく使用できます。「よろしかった」自体が、ほかにはあまり使われないことも不自然さを与える要因なのかもしれません。いずれにしても濫用は避け、使う場面に合わせて誤解なく伝わる表現を選ぶという工夫も大切ですね。

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