そこで、Netflixの海外作品にスポットをあてて、おすすめ作品をピックアップ。いずれも見応えのある傑作揃いです。
『ROMA/ローマ』
『ゼロ・グラビティ』などの人気監督アルフォンソ・キュアロンの自伝的な作品。1970~71年のメキシコシティを舞台にモノクロの映像で綴られるある中流一家と住み込み家政婦の物語。家政婦のクレア(ヤリッツア・アパリシオ)は家事と育児のサポートに大忙しの日々。雇い主の夫婦は仲がギクシャクしていますが、彼女は淡々と自分の仕事に集中しています。ある日、友人の紹介で出会った人と恋に落ちたクレアですが、二人の関係は長く続かず……。
クレアと雇い主の家族との関わり、家政婦仲間との友情などがモノクロ映像の中でしっとりと描かれ、ずっと見ていたいと思うほど。クレアは監督の乳母だった人がモデルゆえに、監督自身の思い出がつまっているせいか、語り口が温かく、映像もきらめく美しさ! 2019年度アカデミー賞外国語映画賞と監督賞と撮影賞(アルフォンソ・キュアロン)受賞作。
監督:アルフォンソ・キュアロン 出演:ヤリッツァ・アパリシオ、マリーナ・デ・タビラ、 フェルナンド・グレディアガ、ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ、 マルコ・グラフほか
『アイリッシュマン』
映画界の生きる伝説ともいえるマーティン・スコセッシ監督の実話の映画化。スコセッシ大得意のマフィア映画です。食肉配達のトラック運転手のフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)が、あるきっかけでマフィアのバッファリーノ(ジョー・ペシ)の仕事を請け負うことに。彼は、トラック運転手組合の委員長ホッファ(アル・パチーノ)の右腕にもなるけれど、マフィアとホッファの対立に巻き込まれていく……。
210分の長尺映画ですが、全く飽きません! マフィアとのつながりで人生を血に染め、家族から孤立していくシーランの物語は実にスリリング。マフィアの怖さに身が縮みます。特殊効果により若い頃のシーランも演じきったデ・ニーロの役者魂も見ものだし、ジョー・ペシ、アル・パチーノなどハリウッドの渋いベテランが揃った俳優陣にも注目です。
監督:マーティン・スコセッシ
出演:ロバ―ト・デ・ニーロ、ジョー・ペシ、アル・パチーノ、ハーヴェイ・カイテルほか
『マリッジ・ストーリー』
スカーレット・ヨハンソンとアダム・ドライバーが神演技! 一組の夫婦が離婚に至るまでを描いたノア・バームバック監督作。映画女優ニコール(スカーレット・ヨハンソン)と舞台監督のチャーリー(アダム・ドライバー)は大恋愛の末、結婚するけれど、次第に心がすれ違っていってしまう。お互いに歩み寄りを見せてもうまくいかず、ついに離婚を決意するのですが、その道のりは険しく……。
夫婦といえど、元は他人同士。お互いに譲り合う思いやりが必要。ニコールは自分のキャリアを捨ててチャーリーに尽くしてきたけど、彼はそれが当たり前だと感じているような……。どこか上から目線のチャーリーにニコールの気持ちが冷めていく様子が何気にリアル。フェアな関係を保つこと&円満離婚の難しさを描いた夫婦映画の傑作です。
監督:ノア・バームバック 出演:スカーレット・ヨハンソン、アダム・ドライバー、ローラ・ダーン、レイ・リオッタほか
『2人のローマ教皇』
英国の名優アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスが主演した、教皇と名誉教皇の懺悔と赦しを描いた実話ベースのドラマ。2005年教皇ヨハネ・パウロ2世が死去し、ドイツのヨーゼフ・ラッツィンガー枢機卿/ベネディクト16世(アンソニー・ホプキンス)が教皇に選出されます。数年後、ベルゴリオ枢機卿(ジョナサン・プライス)は、ベネディクト16世に辞任を告げに出向きますが、ベネディクト16世は受け入れず。時と場所を変えながら、二人は対話を続けるのです。
サッカー観戦とピザが大好きという親しみやすい人柄とユーモラス&スマートな教皇ふたりの会話がこの映画の持ち味。アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライスというベテランの演技派が演じることで、品格も加わり、作品レベルを上げています。カメラワークも秀逸で旅気分が味わえるところも魅力的。
監督:フェルナンド・メイレレス 出演:アンソニー・ホプキンス、ジョナサン・プライスほか
『オクジャ/okja』
『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞作品賞、監督賞など席巻したポン・ジュノ監督作。社会問題をエンタテインメントに落とし込んだ感動的な作品です。チリで発見されたスーパーピッグのオクジャは、韓国の山奥でミジャ(アン・ソヒョン)と家族に育てられています。オクジャは賢く、ミジャと兄妹のように仲良し。しかし、ミジャが不在のときにオクジャはソウルのミランド社に送られてしまいます。彼女はオクジャ奪還のためにソウルへ向かうのですが……。
オクジャは豚と象がミックスされたような特別な動物。その大きさに最初は驚くものの、ミジャとじゃれあう様子や表情豊かなところが可愛く、いつの間にか癒しの存在に。しかし、オクジャ誕生の裏には遺伝子操作の実態が潜んでいたのです。ポン・ジュノ監督作は、エンタテイメントの中に社会性をしっかり含ませ、観終わったあと考えさせられる作品が多く、本作も見応え十分! ジュノ監督の本領発揮の1本です。
監督:ポン・ジュノ 出演:アン・ソヒョン、ティルダ・スウィントン、ポール・ダノ、リリー・コリンズほか
『ザ・ファイブ・ブラッズ』
ベトナム戦争の元兵士たちが再びベトナムの地を踏んで、自身の過去と対峙し、乗り越えていく姿を描いたスパイク・リー監督による戦争映画。ベトナム戦争の帰還兵たち(デルロイ・リンドーほか)は、ノーマン隊長(チャドウィック・ボーズマン)の亡骸と埋蔵金を手に入れるために再びベトナムへ。しかし、ベトナムの地に残る戦争の爪痕、戦争体験のフラッシュバック、新たな敵が、トラウマを抱える彼らを苦しめるのです。
ベトナム戦争を描いた映画は数々ありますが、スパイク・リー監督は「黒人たちもベトナムに従軍していたのに彼らを中心に描かれた映画がない」と、本作の脚本を黒人主人公に脚色して撮影に臨んだそう。回想シーンはフィルム撮影で行うなど、メリハリのある映像処理、緊迫感のある展開で、ベトナム戦争の傷痕をくっきり描き出しています。帰還兵のひとりデルロイ・リンドーの狂気の芝居が凄い! 音楽の使い方や映像演出のセンスの良さなど、リー監督の魅力が炸裂した作品。
監督:スパイク・リー 出演:デルロイ・リンドー、チャドウィック・ボーズマン、クラーク・ピーターズ、ノーム・ルイス、ジャン・レノほか
本当にどの作品もレベルが高くて驚くばかり。人気監督とスター俳優たちがガッツリ組んで本気で挑んでいるNetflixのオリジナル映画作品。この豪華さはなかなか見られません! 必見です。