刺激に過敏で人一倍疲れてしまう……繊細な人が抱える悩み

HSPの特性・生きづらさ

ちょっとしたことも気になりすぎて生きづらい……それはHSPの特性かもしれません

とても繊細な方には、優れている資質がたくさんあります。五感が鋭敏であるため、味、におい、音、色彩、質感などの微妙な差違を感じ取ることができ、その感じ取ったものを創作活動に活かすことで、ユニークな作品を生み出している方もいます。また、人の微妙な心の動きを読み取れるため、セラピストなどの対人援助の仕事に従事している方も少なくありません。

こうした繊細な方々は、次のようなストレスを抱えていることが少なくないようです。
  • 人の気持ちの微妙な揺れに振り回されて、疲弊する
  • 五感を通して刺激を強く受け止め、しばしば興奮する
  • 生活の変化や複数の物事への対応が苦手で、毎日緊張して混乱する
このようにとても繊細であるが故に、社会の中で自分を活かしたいという思いがあっても、それがかなわないでいる方も少なくありません。
 

ただの“繊細さ”ではない? HSC・HSPとは

このような過敏すぎる人、繊細すぎる人は、子どもの場合は「HSC(ハイリー・センシティブ・チャイルド)」、大人の場合は「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」と呼ばれています。
 
臨床心理学者エレイン・N・アーロンが執筆した『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』(冨田香里訳、SBクリエイティブ、2008年)、『ひといちばい敏感な子』(明橋大二訳、1万年堂出版、2015年)、心理療法士イルセ・サンが執筆した『鈍感な世界に生きる敏感な人たち』(枇谷玲子訳、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2016年)などの著作によって、世界中に知られるようになりました。
 
こうした本によると、HSCやHSPは4~5人に1人ほどの割合で存在するようです。男女の割合に差はなく、性格は人それぞれ。一人でいることを好む人もいればそうでない人も、じっくりと集中して取り組む人もそうでない人もいます。
 
私自身、カウンセリングの場で、HSPの傾向を持つ方にしばしばお会いします。彼らの多くは、カウンセラーの言葉の奥にある気持ちを、とても敏感に読み取ります。たとえば、カウンセラーからほめられたときにも、それが本心から出た言葉なのかお世辞なのか、声のトーンや表情からすぐに感じ取ってしまいます。そして、上っ面な言葉や態度には深く失望し、心を閉ざしてしまいます。繊細すぎるがゆえに、彼らの心はとても傷つきやすいのです。

他の人たちと同じ仕事をしていても、状況の微細な変化や人の感情に振り回され、非常にエネルギーを消耗します。「そんなの気にしなければいいのに」「もっと楽に考えようよ」などと言われても、どうすればそうできるのかが分からないのです。自分をコントロールできないまま、人が気づかないようなたくさんの刺激にさらされ続け、身動きがとれなくなってしまうのです。
 

HSPの診断・HSPの可能性のセルフチェック法

HSPは医学的な診断名ではなく、人の特性を表す言葉です。そのため、医学的な診断に基づく標準的な治療法などは確立されていません。もし自分はHSPかもしれないと感じたら、上記に挙げた著書などにセルフチェック項目が掲載されています。ご自身の傾向を知るために、活用してみるのもよいでしょう。

そして、もしもHSPの特性によって心の疲れが溜まり、日常生活に支障が出るほどの憂うつが続いたり、混乱や不安、恐れなどの気持ちが強くなったりしている場合は、うつ病や神経症などの疾患に近づいている可能性もあります。そうした場合は、早めに心の専門医師に相談しましょう。
 
またHSPは、ADHDや自閉スペクトラム症などの発達障害の特性と重なることが多いですが、憶測や決めつけは禁物です。発達障害には医学的な診断基準があるため、この分野に詳しい医師に相談することが必要です。
 

HSPかもと思ったときの対処法・生きにくさを感じたときに

では、HSPの特性を感じてつらさや生きにくさを感じたときには、どうしたらよいのでしょう。ここでは3つの対処法をお伝えしますので、参考にしてみてください。

1. 刺激とは適度な距離でつきあうようにする
まずは、「自分が刺激を強く受け止めやすい特性の持ち主である」と自覚することが大切です。人から「もっと強くなりなさい」「慣れることが大事」などと言われても、その人は自分とは違う感覚の持ち主なのかもしれません。人の意見を鵜呑みにせず、刺激が強すぎると感じたら、少し離れて様子を見たり、その刺激とは断続的にかかわるようにするなど、調整を重ねていくことです。こうして自分が対応できる「加減」をつかんでいきましょう。
 
2. とても疲れやすいので、休養して自分を労る
刺激に敏感な分、一般的な人よりも多くの休養が必要です。疲れたと思ったら、無理をせずに休みましょう。じっくり疲れを癒やせば、また頑張れるのですから、焦らないこと。そして他人と比較せず、自分自身を労ることです。「周りの人はもっと頑張っている」「休まずに働いている人もいる」といった比較は不要です。自分の心と体の状態を認め、それらの「声」を聞いていきましょう。
 
3. 理解してくれる人に気持ちを受け止めてもらう
おおよそ4~5人に1人がHSPだと言われているため、身近にも似た特性を持つ方がいるはずです。もし共感できる人を見つけたら、ぜひ思いを分かち合ってみてください。感性が合う人と友達になり、お互いの気づきを交換し合えれば、新しい何かを生み出せるかもしれません。また、HSPの理解者にめぐり会えたら、その人とのつながりを大切にしましょう。信頼関係は心の支えとなり、そうした人との対話とかかわりの中から、自分を活かす方法が見つかることが多いです。
 

生きづらさを感じているHSPの方へ

HSPは「困った特性」ではなく、「豊かな才能の持ち主」であるという視座に立ちましょう。HSPの方々は、自然や社会、対人関係の中から、一般的な人には感じ取れないエッセンスを受け取る感性を授かっているのです。その独特な感性で感じ取ったものを、「自分」というフィルターを通して様々な形で伝えていくと、人に感動や癒やしを与えることができます。そうした才能をポジティブに受け止め、才能を活用できるようになることを目指していきましょう。

そのためには、上記1~3の対策法で見てきたように、刺激との適度な距離感、休養と労り、共感できる友人や理解者との出会いが必要であり、これらが人生の大きな助けとなるでしょう。
 
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※当サイトにおける医師・医療従事者等による情報の提供は、診断・治療行為ではありません。診断・治療を必要とする方は、適切な医療機関での受診をおすすめいたします。記事内容は執筆者個人の見解によるものであり、全ての方への有効性を保証するものではありません。当サイトで提供する情報に基づいて被ったいかなる損害についても、当社、各ガイド、その他当社と契約した情報提供者は一切の責任を負いかねます。
免責事項