熱中症による死亡者増加……残暑の厳しさに警戒も

睡眠中の熱中症リスク

寝室環境を快適に保つことは、睡眠の質を上げることはもちろん、熱中症リスクの軽減にも有効です

今年2020年は春以降、新型コロナウイルス感染症に関するニュースが流れない日はありませんでした。それに加えて暑くなるに従って、熱中症の話題も連日報道されています。特に胸を痛めるのが、熱中症で亡くなる方が増えているということです。夏の暑さが厳しかった平成22年や25年、30年は、熱中症による死亡者数が1000人を超えましたが、今年もそうなってしまう可能性があります。
 
7月は梅雨明けが遅くなったために、気温はそれほど上がりませんでした。ところが、梅雨が明けるといきなり猛烈な暑さとなりました。そしてついに8月17日、浜松市で国内最高気温にならぶ41.1度が観測されました。これからも暑さが続き、9月も残暑が厳しいところが多くなるとの予想が出ています。
 
新型コロナウイルス感染症の対策も大切ですが、マスクをしなければならない今年は熱中症にも十分な注意が必要です。そうしないと体調を崩すだけでなく、命に関わることもあります。最近では、熱中症は昼間だけでなく、夜間にも起こっていることが注目され始めました。
 

夜間の方が重症化率が高い? 睡眠時の熱中症による死亡リスク

東京消防庁によると、2019年に熱中症により救急搬送された人は、5,634人に上りました。このうち夜間にあたる午前0時~6時に救急搬送された人は212人で、全体の約4%でした。この数だけをみると、「やっぱり熱中症は暑い日中に多いもので、夜はそうでもないんだな」と思えます。
 
ところが、同じ期間に東京都監察医務院で熱中症のために亡くなったと判断された人は、日中が38人に対し、夜間は40人と、日中より夜間の方が多くなっていました。救急搬送された人が少ない割に死亡者が多いということは、夜間に熱中症が重症化しやすいのかもしれません。
 

睡眠時の熱中症の原因と傾向……気温・寝室環境・年齢・体調などが影響

睡眠中に熱中症になりやすい要因についてみてみましょう。
 
■日中の蒸し暑さ
気温が高いと私たちは、汗をかいて体温を下げようとします。暑さが続くと汗がたくさん出て、体から水分や塩分が失われます。気温がそれほど高くなくても、湿度が高いと汗が蒸発できないので、やはりたくさんの汗が出ます。水分や塩分を補給しないまま、体重の2%を超える汗をかくと、運動能力や体温調節能力が低下します。
 
特別に気温が高かった日だけでなく、比較的涼しい日が続いたあと急に暑くなったときや、連日暑さが続いたときなどにも、注意が必要です。体が暑さに慣れていないときや、暑さが続いて体力がなくなってきた時には、熱中症になりやすくなります。日中に熱中症の症状が出ているのに、「まあ大丈夫だろう」などと甘く見ていると、水分補給ができない睡眠中に熱中症が悪化することがあります。
 
■夜間も続く蒸し暑さ 
気温が25度を超える熱帯夜には、多くの人が寝苦しい思いをします。体温が下がるときには眠気が強くなるのですが、熱帯夜だとうまく体温が下がらないためよく眠れません。
 
体感温度は気温だけでなく、輻射熱(ふくしゃねつ)も関係してきます。輻射熱とは、寝室の壁や天井、床から発せられる熱です。日中に太陽光で熱せられた屋根や壁は、夜になると熱を放散します。室内に熱が放散されると、眠っている人が暑く感じて汗をかきます。
 
夏には1晩で、500mL以上の汗をかくといわれています。睡眠中に失われる水分を、眠りにつくまでにあらかじめ補充しておかないと、眠っている間に脱水症や熱中症になる可能性があります。
 
■エアコンを使わない寝室環境
今では想像できないかもしれませんが、昭和にはたびたび「冷夏」がありました。この時代を経験している人の中には、「睡眠中にエアコンを使うなんて考えられない」という人がいます。また、エアコンの風が嫌いなので、寝付くときにエアコンのスイッチを切っている人もいます。
 
しかし、今は「酷暑」の時代となりました。実際、屋内にいて熱中症になり亡くなった人のうち、85.2%がエアコンを使っていなかった、というデータもあります。命を守るために、夜のエアコンは必需品なのです。
 
■高齢者
高齢者は、熱中症による救急搬送の5割、死亡者数の8割を占めています。高齢者が熱中症にかかりやすい理由は、3つあります。

1つ目は、老化により体のセンサーの反応が鈍くなってきていることです。そのため、暑さを感じにくく、ノドの渇きも感じにくいので、部屋を涼しくしたり水を飲んだりすることが遅れがちです。
 
2つ目は、高齢者はもともと、体の水分量が少ないことです。体内の水分量は、年齢とともに減ってきます。新生児では体重の約75%、子どもでは約70%、成人では約60~65%を水が占めていますが、高齢者では50~55%しかないのです。そのため高齢者では若年者に比べて、体内の水分量が少しでも減ると体調を崩しやすいのです。
 
3つ目は、夜間に水分をとりたがらない人が多いことです。若いときは熟睡できて、夜中に目を覚ますことはほとんどありません。それが、60歳を過ぎると、睡眠中にトイレへ行くために1~2回目覚めるのが普通になります。眠る前に水分をとるとトイレに起きる回数が増えると信じているため、水分摂取を嫌がる人が多くいます。
 
■体調不良・睡眠不足など 
風邪などで体調不良の人や、睡眠不足が続いて体力が落ちている人は、熱中症にかかりやすくなります。うっ血性心不全や足のむくみなどの治療のために利尿薬(体の水分を尿として出す薬)を飲んでいる人も、必要十分な水分をとらないと脱水症や熱中症になってしまいます。
 

夜間の熱中症の前兆・傾向……めまい・立ちくらみ・しびれなど

熱中症になり始めたころは、めまいや立ちくらみ、気分が悪い、筋肉のけいれん、手足のしびれなどの症状が現れます。これは、体から熱を逃がすために手足の血管が開き、代わりに脳や内臓、筋肉などへ行く血液が減るためです。このような初期症状があったら、眠る前に十分な水分と塩分をとりましょう。それで症状が消えれば良いですが、そうでなければためらわずに救急外来を受診しましょう。
 
次第に熱中症が進むと、頭痛や吐き気、体のだるさなどの症状が現れます。熱中症が重症化する、意識障害やけいれんなどが起こります。こうなったら、すぐに救急車を呼びましょう。
 

睡眠時の熱中症予防法……「水分補給」「涼しさを保つこと」は基本

睡眠中の熱中症を予防する基本は、水分補給と涼しくすることです。
 
眠る直前にたくさんの水分をとると、眠っている間にトイレへ行きたくなって目覚める回数が増えます。そのため、水分は日中に十分な量をとり、夕食後は足らない分を少しずつ補うようにしてください。気温や湿度、体重によりますが、1日に飲む水分量は1.2~2Lぐらいになります。ノドの渇きや熱中症の初期症状があるときは、水分が足りていないので気をつけましょう。
 
寝室の気温は26度以下でよく眠れます。寝床につく30分ほど前からエアコンをつけて、天井や壁、床を冷やしておきましょう。エアコンは、朝までつけておくことをお勧めします。涼しく熟睡できれば体力が回復するので、日中のエアコンの設定温度を少し上げられます。1日を通しての電気代を考えると、その方がお得です。
 
エアコンの風が直接体に当たると、体がだるくなったり風邪を引いたりすることがあるので、風向きには注意してください。部屋の対角線上に扇風機を置いて、エアコンに向けて風を送ると、室内の空気に流れができて効率よく部屋を冷やせます。
 

危険な夜間の熱中症……「対策はしっかりと。高齢者には声かけも」

ここ10年で、夏は以前とは全く違ったものになりました。酷暑日や熱帯夜が続くのは今や普通です。それに伴い、夜間に熱中症になる人や、熱中症で亡くなる人も増えてきています。皆さんも考え方を変えて、睡眠中の熱中症に対する対策をとってください。熱中症になったら、体調を崩すだけでなく、ひどいときは命を落とすこともあるのです。
 
特に高齢者は気づきが遅れる傾向があるため、若い人が注意を促さなければなりません。水分を十分にとっていなかったり、夜間にエアコンを切ってしまっている高齢者の方が身近にいるなら、ひとこと声をかけてあげてください。

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