介護施設に入所している高齢者の方々と話していると、さまざまな体験をされてきた方にお会いします。自らの障がいや戦争のことなど、私など想像が及びもつかないその内容に頷くことしかできません。
映画『愛を読むひと』の主人公でケイト・ウィンスレット演ずるハンナも、時代と自分の運命を背負って生きてきた女性です。
1ページの恋が、ネバーエンディングストーリーともいえる運命の愛へーーじっくりと鑑賞したい名作です。
自己愛と他者愛の狭間で
本作はベルンハルト・シュリンクのベストセラー小説「朗読者」をアメリカ・ドイツの合作で映画化した作品です。1958年のドイツ。15歳のマイケルは21歳も年上のハンナと恋に落ちます。やがて、ハンナはマイケルに本の朗読を頼むようになり、愛を深めていきますが、彼女は突然マイケルの前から姿を消します。その後、法学専攻の大学生になったマイケルはナチスの戦争犯罪者を裁く法廷でハンナと思わぬ再会し、ハンナの「秘密」を知ることになるのです。
「真実」を公で語るか、愛する女性の尊厳を守り抜くか、主人公のマイケルが選んだ決断とはーー。
主役を演じたケイト・ウィンスレットは本作でアカデミー主演女優賞を受賞。私が彼女の出演作を見たのは、あの『タイタニック』以来でしたので、円熟味を増したその演技に思わず声をあげたほど圧倒されました。青年期のマイケルを演じた新進俳優デビッド・クロスの存在も光っていました。
甘いラブストーリーだと思って見ると衝撃を受けるかもしれません。「まだ見ていない」という人にこそ、じっくり鑑賞してほしい作品です。
DATA
『愛を読むひと』
監督:スティーブン・ダルドリー
出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デビッド・クロス