大好きな千秋先輩(玉木 宏)を追いかけているうちに、個性豊かな人たちと出会い、人生が大きく開いていく作品は、日本中に音楽の楽しさを届けました。
クラシックに詳しい人はもちろん、詳しくない人も、思わずテレビの前で「ブラボー!」とスタンディングオベーションしたくなるシーンがたくさんつまった、最高にワクワクできる物語としてイチオシです。
むずかしいこと抜きで、音楽の楽しさにワクワクする!
クラシックをテーマにした作品は、ちょっとした予備知識が求められたり、かしこまった雰囲気に気後れしたりで敬遠がちになることもありますが、『のだめカンタービレ』にその心配はまったく必要ありません。小さな子どもからシニア世代まで、誰でも”はじめてのクラシック”を楽しむことができます。
CMや映画など、どこかで聴いたことがあるメロディーに心が華やぎ、『きらきら星』やオリジナルの『おなら体操』といった子どもも楽しめる楽曲に癒やされます。「聴いたことある!」「この曲好き!」がたくさんつまった作品なのです。
また、東京交響楽団やNHK交響楽団のメンバーが作品をサポートし、ピアニストのラン・ランが映画版の『のだめカンタービレ 最終楽章』でのだめのピアノを吹き替えるなど、本物のクラシックに触れられることも作品の魅力です。
あちこちから楽器の音が聴こえる音楽大学や海外の豪華な劇場……ふだんあまり観ることのない風景に心を躍ったり、ピアノコンクールや海外留学など、私たちが知らない世界へ誘ってくれます。観るもの聴くものすべてに最後までワクワクできるのです。
愉快で楽しい登場人物たちにワクワクする!
登場人物一人ひとりが、とにかく愉快で楽しいことも『のだめカンタービレ』にワクワクできる理由。音大生たちの自由な空気や、彼らの豊かな個性を開花させるための先生たちのユニークな手腕も、人間味あふれていて新鮮です。
ドイツ人指揮者を演じる竹直人のコスチュームも、ハリセンを持ったピアノ科教授の豊原功補も、振り切った人物づくりがとにかくユーモラス! なのに不思議と説得力がありました。新春スペシャルや映画では憧れのヨーロッパの街並みや美しい劇場が映し出されますが、ウエンツ瑛士やベッキー、吉瀬美智子が外国人として登場する、無理やりな印象を否めないインターナショナル感も楽しめます。
また、のだめが通った桃ケ丘音楽大学のSオケには瑛太やサエコ、小出恵介のほか、山中崇、近藤公園、小林きな子など「知ってる!」と言いたくなる俳優さんたちの姿も確認でき、親近感が倍増。彼らが一丸となってみせたエンターテインメント性豊かな演奏は、今も胸に刻まれています。ぜひチェックしてください。
楽しみながら堪能できる正統派のクラシック
個性的な演奏だけでなく、正統派のクラシック音楽を存分に堪能できることも『のだめカンタービレ』のすばらしさです。視聴者の「聴きたい!」に応えるかのようにサビの部分にとどまらず、楽曲をしっかり聴かせてくれるところには好感が持てます。
それだけに、俳優たちの努力は大変なものだったはず。コメディとはいえ、いや、コメディだからこそキャストには実力が求められる。若い俳優たちが伸び伸びと演じる姿が素敵でした。
なにより、のだめを演じた上野樹里の表情の変化、指先、肩、背中、呼吸が時間とともに変わっていく様子は見ごたえ十分、魂が吹き込まれる瞬間に心が震えます。千秋先輩を演じた玉木宏の圧倒的な存在感、映画での劇場の雰囲気にまったくのみこまれていない内面から湧き上がるものにも、今さらながら驚きます。
作品のCDが多数発売されたことや、「のだめオーケストラ」LIVE!が開催されたことからも、作品が日本中に音楽のすばらしさを届けたことがわかる『のだめカンタービレ』。「誰もが明るい気持ちになれるように」というつくり手の想いがこめられた作品は、こんな今だからこそ私たちの心を気持ちよく解放してくれるはずです。『のだめカンタービレ』の世界にブラボーと心の中で叫んでください。
DATA
フジテレビ系┃『のだめカンタービレ』
出演:上野樹里、玉木宏、瑛太、水川あさみ、小出恵介、上原美佐、竹中直人ほか
原作:『のだめカンタービレ』二ノ宮知子(講談社)
プロデュース:若松央樹(フジテレビ)/清水一幸(フジテレビ)
脚本:衛藤 凛
演出:武内英樹(フジテレビ)ほか