反発してママにだけわがまま、父親には素直でいい子?
父親の前では、素直ないい子なのに、母親の前では、わがままばかり言う子どもに手を焼いているという方はいらっしゃるでしょう。例えば、次のような場面はないでしょうか。
- お父さんと公園で遊んでいるとき、「そろそろ帰ろうか」と言うとさっと帰る。一方、同じようにお母さんが言っても、「もう少し遊びたい」となかなか帰ろうせず、帰宅を納得させるだけでも、一苦労。
- 「もう、寝る時間でしょ」とお母さんが就寝を促すと、「まだ、眠くない」「お母さんは、いつも遅くまで起きているくせに」など、反抗的な言葉が返ってくるのに対し、お父さんが「そろそろ寝る時間だろ」と言えば、「おやすみなさい」の言葉まで添え素直な態度に。
お母さんの前では「これはイヤ! ○○がいい」「△△したい!」とわがままな態度なのに、お父さんの前では素直でいい子になるわが子に対し「なぜ?」「どうして?」と思うと同時に、時にはイライラすることもあるでしょう。
父親と母親の子どもへのしつけの厳しさに大差はなく、それどころか、園への送り迎え、日頃の食事、発熱した時の看病など、圧倒的に母親の方がお世話をしているにも関わらず、母親に対しては、わがままになる子どもの心理や原因、その対応法はどうしたらいいでしょう。
<目次>
心理1:自然な本能、社会的な行動
赤ちゃんは、いつもお世話をしてくれる人とそうでない人、慣れた部屋と初めて行く場所などの違いを感じ取る力があります。知らない人や行き慣れない場所では、人見知りをして泣くことがあるでしょう。知らない人、場所への不安を本能で感じ取り、自分を守ってくれる相手との違いを認識し、見分けているのです。大人であっても、社会に出たとき、相手によって態度を変えることはよくあることです。上司と同僚によっては、話し方やその他の対応も違ってくると思います。親しい友人と疎遠な知人、実母と義理母に対しても違うでしょう。
このように相手によって態度を変えることは、本能的にも社会的にも自然なことであることを先ずは認識し、その上で、家庭内で父親と母親との態度を変えることについて考えていきましょう。そこには、もう少し子どもの複雑な心理が隠されています。
心理2:園や学校などでいい態度をとり、本来の感情を抑えている
自宅では、お母さんがおもちゃを片付けるように言っても、なかなか行動に移さない、話をしてもきちんと聞こうとしない、だけど保育園の先生からは「○○ちゃんは、率先してお片付けをしてくれます」「先生の話をいつも、きちんと聞いていますよ」と言われる。また「早く宿題をしなさい」と言われてから、やっと取り掛かるのに、学校での授業態度は、積極的と担任の先生から言われる、などのことはないでしょうか。これらは子ども自身、園や小学校で頑張っている証しです。
子どもなりに「がんばらなきゃ」「一生懸命しなければ」と先生の言うことをよく聞き、家庭の外では、緊張して過ごしていることで、ストレスを感じていることがあります。その発散として、家庭でわがままを言ったり、甘えたりすると言えるでしょう。
心理3:安心できる存在の確認のため
ではなぜ、父親ではなく、母親にストレスをぶつけて、わがままを言うのでしょうか。それは、「お母さんはわがままを言っても受けいれてくれる」という信頼と安心感があるからです。そしてそれを確かめるためにも、甘え、わがままを言ってくると考えられます。他人との集団の場で緊張して過ごすため、本来の感情を時には抑えて我慢している子どもが、家庭でホッと安らいでリラックスをし、親に甘えて、わがままを言うことは、とても健全な流れでしょう。子どもは、安心して甘えられる相手をきちんと見極めているのです。
「子どもになめられている」は誤った考え
「子どもが他の人の前ではいい子なのに、自分の前ではわがままを言うのは、なめられている」と考える人もいますが、この考え方は間違っています。なぜなら、「なめられている」というのは、上の立場の者から下の立場の者に対して、よく使われ、力や立場で相手を制御や抑圧をしようとする気持ちが根底にあって生じるものです。
家庭は、子どもの心身ともに安らぎの場です。そこで力や立場で子どもを抑圧し、言うことを聞かせようとしても、子どもの健やかな成長には繋がりません。「子どもになめられないように」と厳しく威圧される親に育てられた子どもは、いつもビクビクし、親の顔色を見て過ごします。そしていつかその反動が爆発することが懸念されます。
接し方ポイント1:甘えのわがままは受容、身勝手なわがままは注意を
これらの原因や子どもの心理から、父親と母親の前で態度が違うことを心配したり、イライラすることなく、自然な流れの一過程と捉えればよいのですが、注意しなければいけないこともあります。 まず、わがままは、受け入れてよいものと、注意をしなければいけない場合があるということ。甘えているわがままは、できる限り受け入れてあげてよいでしょう。「○○がしたい」「○○して欲しい」「○○をしたくない」などと言った場合、可能な範囲で聞き入れてあげるとよいでしょう。
ただ人に迷惑をかける身勝手なわがままや、危険を伴うようなことはきちんと注意しましょう。
接し方ポイント2:親子の関わりが気薄になっていないか、振り返る
子どもがわがままを言う心の底には「もっとかまって欲しい」という気持ちが隠れていることもあります。「お母さんは、ワタシを愛してくれている」という確信があるからこそ、わがままを言うのですが、徐々に子どもの手が離れ、関わりが希薄になってきていることはないでしょうか。そこで子どもの気持ちが揺らいできて、確かめているのかもしれません。その場合、話をゆっくり聴く、スキンシップを取るなどを意識してあげるとよいでしょう。
接し方ポイント3:一貫した子育て方針を確かめる
父親の前ではいい子、母親の前ではわがままである子どもの心理を分かっていても、わがままを言われる側の親は、機嫌によってイライラし厳しく接したり、約束事を親の都合で変えたりすることはないでしょうか。そうすると子どもは不安になり、家庭で安心して甘えたりわがままを言えなくなり、ストレスを抱え込むことになります。もしくは外で乱暴な態度になることもあります。これは成長し、小学校、中学校と集団が大きくなれば、より複雑になることが予想されるでしょう。
親は子どもの気持ちを理解し、常に一貫した態度で、ブレない子育て方針を、しっかり持って子どもに接しましょう。
わがままな態度を示すのは、信頼されているからと誇りを持って
子どもにとってストレスは、これから先も、形を変えてやってくるでしょう。今は、信頼できる人、守ってくれる人へのわがままや反発という形で表れていますが、成長と共に、趣味に打ち込む、思考を切り替えるなど、その発散や解消の仕方は変わってくると思います。そのようになるためには、ストレスをわがままという形で発散させるときに受け止めてくれる母性が成長過程の一時期に必要です。子どもの健やかな成長には、受容し、包み込むような愛情である母性と、規範の厳守や善悪などを教える父性が必要と言われています。
家庭内において必ずしも、父親が父性、母親が母性の役割をしなければならいことはありません。ですが、どちらかが役割を担うことは大切です。
わがままを言われる側と、素直な態度を表わされる側と、若干不公平を感じることもあるかもしれませんが、子どもが自分を信頼し、心を許してくれていることに、自信と誇りを持って子どもに関わってあげましょう。
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