妊活・子作り・妊娠準備

40代後半、2人目・3人目の選択肢……産める?育てられる?

厚生労働省の人口動態統計によると、令和元年の出生数は86万5234人で過去最少を更新しています。そんな中で増えているのが、母の年齢が45歳以上の第2子、第3子以上の出生数です。一方、産み終え世代ともいえる、同じ40代後半では、中絶を選択する人が多いことも見逃せません。

清水 なほみ

執筆者:清水 なほみ

産婦人科医 / 女性の病気ガイド

45歳以上の第2子・第3子以上の出生数が前年増

厚生労働省の人口動態統計の年間推計によると、令和元年の出生数は86万5234人で、前年の91万8400人より5万3166人減少し、過去最少を更新しました。

出生数を母の年齢(5歳階級)別にみると、すべての年齢階級で前年より減少しており、また、出生順位別にみても、すべての出生順位で前年より減少しています。そんな中で、増えているのが、45歳以上の第2子・第3子の出生数です。
 
45歳以上の第2子・第3子の出生数が増加 出典:厚生労働省「平成30年人口動態統計」

45歳以上の第2子・第3子の出生数が増加 出典:厚生労働省「令和元年人口動態統計」

少子化が進んでいる現在ですが、子どもを持つのならば「2人から3人が理想」と思っている母親は少なくないようです。気持ちの上では2人目、3人目を欲しいのに年齢だけにこだわって最初から諦めてしまうのはもったいないですよね。

45歳の時点で自然妊娠する確率は200分の1といわれています。つまり、何も治療しなければ40代後半以降で妊娠・出産に至る確率はとても低く、この年代の出生数については不妊治療や周産期医療の技術の進歩が影響していると考えられます(詳しくは「出生数が過去最少の中、45歳以上で産む人が増えている背景」をご覧ください)。
 

40代後半「産み終え世代」では、中絶を選択する人も多い

一方、産み終え世代ともいえる40代後半の中絶件数が同じくらいあるということも見逃せません。厚生労働省の衛生行政報告例の概況によると、平成30年度の人工妊娠中絶件数は16万1741件で、前年度に比べ2880件(1.7%)減少しています。

その中で、45~49歳の人工妊娠中絶件数が1388件と前年度に比べ25件(1.8%)増加、50歳以上は13件で2件(18.2%)増加しています。40代後半の「産み終え世代」では、出生数と同じくらい中絶を選択する人が多いということも分かります。

人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移 出典:厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例」

人工妊娠中絶件数及び実施率の年次推移 出典:厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例」

 

40代後半でも自然に産める?妊娠リスクは?

国立成育医療研究センターの「日本における超高齢妊婦の妊娠予後を検証」によると、日本産科婦人科学会の周産期データベースに登録された35万人超のデータを対象に研究を行なった結果、高年妊娠における妊娠高血圧腎症発症、帝王切開、早産分娩などのリスクについて明らかにしました。

 具体的には、
  • 母体年齢が高いほど、妊娠高血圧腎症(旧:妊娠中毒症)の頻度は高く、45歳以上の妊婦は、30~34歳の妊婦に比べて、その頻度は1.90倍高い
  • 母体年齢が高いほど、前置胎盤の頻度は高く、45歳以上の妊婦は、30~34歳の妊婦に比べてその頻度は2.19倍高い
  • 母体年齢が高いほど、帝王切開分娩の頻度は高く、45歳以上の妊婦は、30~34歳の妊婦に比べて、その頻度は1.71倍高い
  • 母体年齢が高いほど、早産・未熟児出生の頻度は高いが、45歳以上の妊婦は、30~34歳の妊婦に比べてそれぞれ1.22倍、1.18倍とその差はいずれもわずかである
  • 母体の年齢が高くなっても、死産や胎児死亡の頻度は有意には変わりない
  • 年齢が高くなると有意に妊娠高血圧腎症のリスクが上昇するという関係は、経産婦で顕著。前置胎盤は、初産婦でも経産婦でも、年齢が上昇するとリスクも上昇。帝王切開分娩のリスクは初産婦では年齢が高くなると有意に上昇するのに対し、経産婦では有意なリスクの上昇は認めない。
  • 妊娠高血圧腎症は生殖補助医療によらない妊娠の場合に、年齢が上昇するとリスクが上昇。前置胎盤も生殖補助医療によらない妊娠の場合に年齢が上昇するとリスクは上昇。帝王切開分娩のリスクは、生殖補助医療の有無にかかわらず年齢が高くなると上昇。
まとめると、年齢とともに「母体要因」のリスクが高くなることは明白であり、その点を踏まえて何歳で妊娠・出産するのかを計画する必要があります。一方で、胎児側には母体の年齢による影響がほとんどないため、「いかに自分の健康を自分で守るか」がカギになるということがいえます。

経済的な安定や、精神的安定など、親が高齢であるメリットもありますし、「何歳が適齢期なのか」は、最終的には本人が判断することです。上記のような医学的リスクについて、正しく把握した上で、いつまでに何人子どもが欲しいのかを前もって考えておくことが重要でしょう。
 

40代でも知っておきたい避妊の知識

避妊に関して正しい知識がないは10代も40代も一緒

避妊に関して正しい知識がないは10代も40代も一緒

何歳であっても、結婚していてもしていなくても、「今子どもが欲しい」と思っていなければ、性行為を行う際に必ず必要なのが「確実な避妊」です。

日本家族計画協会の「妊娠100件に対する人工妊娠中絶の割合」によると、40代後半の全妊娠総数に対する中絶率が50%を超え、10代の中絶率とほぼ同等の中絶率であり、40代で「予定外に妊娠する」というケースは少なくないことが分かります。いかに不確実な避妊をしている人が多いかを物語っているでしょう。

人工妊娠中絶とは、母体の健康を守るために、胎児が母体外で生存することができない期間に、人工的に胎児を胎外に出すという手術です。手術を行える時期が明確に定められており、妊娠22週0日からはいかなる理由があっても中絶手術ができなくなります。また、妊娠11週6日までは、妊娠初期としての中絶手術が行えますが、妊娠12週0日を過ぎると陣痛を薬で誘発して「分娩する」方法での中絶になります。

予定外に妊娠しないように、ピルや子宮内避妊具で確実な避妊を行うことが不可欠ですが、たとえピルを飲んでいても避妊効果は100%ではありません。万が一予定外に妊娠した時に、「更年期で生理が乱れている」と勘違いして妊娠に気付くのが遅れてしまう、といったことが起こらないように、「性行為を行っていれば常に妊娠の可能性がある」ということを覚えておきましょう。詳しくは「40代高齢の妊娠中絶手術が実は増えている!」をご覧ください)。


【参考情報】
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