夏もマスクをつけるべき? 新型コロナ感染症と日本の夏のマスク
高温多湿な夏のマスクは辛いもの。息苦しさや汗を我慢してでもつけるべきなのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の状況を見た上での適切な感染対策と、熱中症対策を上手に両立していく必要があります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)による感染症で、重症化すると重症肺炎を起こしたり、血管の病変を合併したりし、致死的になることがある感染症です。呼吸器感染症ですので、痰やつばによる飛沫感染と、手に付着したウイルスの接触感染により感染が拡大します。症状は、無症状、軽症から重症と様々で、発症前から人に感染させてしまいますが、オミクロン株になり、感染力や潜伏期間が短くてなっている一方、ワクチン接種によって、感染の危険性や重症例が減ってきています。重症例が減ることで、症状がなくても「ウイルスを持っているかもしれない」と考え、自分自身が感染源になる可能性を想定した対策を取る必要があります。
飛沫感染のリスクを抑える対策は、咳エチケット。サージカルマスクによる予防効果には議論のあるところですが、マスクをしていると自分で口や鼻を手で触ることが少なくなるため、接触感染予防にもなるでしょう。しかし、夏のマスク着用はリスクもありますので、感染拡大状況やワクチン接種状況などを踏まえて、熱中症にも気を付けながら着用の判断をする必要があります。
夏のマスクの注意点……「熱中症リスク」と「バリア機能の低下」
一般的なサージカルマスクは、細菌、ウイルスを含む飛沫と液体に対するバリア機能をもつ不織布3層構造になっています。バリア機能を保つためには、鼻と口をしっかりと覆うように正しくつけることが大切です。一方で、マスクを正しくつけると、呼吸もしにくくなり、息苦しさを感じます。暑い季節のマスクには、マスク自体の暑苦しさや息苦しさなどの不快感によるストレスだけでなく、2つのデメリットが考えられます。
一つは、熱中症リスク。マスクをつけることでのどが乾燥しにくくなり、のどの乾きも感じにくくなります。熱中症による脱水が起こり始めていても、大切な最初のサインに気づけない可能性があります。
もう一つは、マスクのバリア機能の低下。正しくマスクをすると息苦しくなるため、呼吸筋を普段より使うことになり、自然と体温が上昇します。体温で温まった呼気がマスク内に残ることで、マスク内の限られた空間は周辺以上に多湿状態になります。体温上昇により汗も蒸発しにくくなり、マスクも湿った状態になります。空気がマスクを通りにくくなることなどからマスクのバリア機能は低下してしまい、感染予防効果自体も低下してしまいます。汗をかきやすい季節は特に、一枚のマスクを一日中使うのは避けたいものです。
マスクをつけるべき場所・外してよい場所は?「適宜判断」が大切!
いくら感染対策を続けたいと言っても、夏に1日中マスクをつけておくのは現実的ではありません。食事や水分補給などの必要時はもちろんですが、「人に感染させる心配がないときには外してもよい」と考えるべきです。屋外でも屋内でも、一般的な環境では、周りに人がいないのならマスクを外してもよいでしょう。屋外では、人と2m以上の距離を取ることができない中で会話するときにはマスク着用を推奨されていますが、それ以外は外すことは可能です。つまり、会話をしないときにはマスクは外してよいのです。具体的には、公園での散歩やランニング、徒歩や自転車での通勤、屋外で人とすれ違う程度の場面では、マスクをする必要はないと言われています。また、人がいても、換気がよく密室でない場所などで、会話をしない場合は、周りの状況をみてマスクを外してもよいでしょう。反対に、人がまばらでも屋内の換気の悪い場所や、屋外でも人混みに行くときや会話する時には、できればマスクをつけておいた方がよいと考えます。
「人目が気になるから、とにかくマスク」ではありません。「何のためのマスクなのか」「今外しても大丈夫そうか」を適宜それぞれの場所で考え、各自が判断することが大切なのです。
熱中症予防のためには、適宜マスクを外して水分補給をしておきたいものです。マスクをつけていて気分が悪くなったときには、なるべく人の少ない開放的な場所で、しばらくマスクを外して休憩した方がよいかもしれません。マスクの中も換気するイメージです。咳やくしゃみのときは、ハンカチやティッシュで口元を押さえて咳エチケットを忘れなければ大丈夫です。