ゴーヤ(ニガウリ)……モモルデシンによる苦味が特徴の夏野菜
苦味が特徴のゴーヤ。いかにも健康によさそうですが、苦味成分であるモモルデシンの健康効果は、実はまだわかっていません
一般的に「苦味」は「食品が傷んでいるサイン」と認識する味ですので、子どもたちにとっては美味しいと感じにくい味です。しかし「苦味」は苦味を持つ食品を食べ慣れることで、安全な食品であることが確認できると、次第に好きになっていく味でもあります。コーヒーなどは典型例で分かりやすいのではないでしょうか。ちなみに、苦味の成分は「モモルデシン」という物質ですが、その健康効果はまだ明らかになっていないようです。
私はゴーヤは得意でも不得意でもないのですが、沖縄料理店に友人たちと一緒に行くと、海ブドウと一緒に必ず「ゴーヤチャンプルー」を注文します。まだ自粛していますが、仲間と分け合ってワイワイ食べる時に楽しいと感じる一品です。
ゴーヤの主な栄養素・健康効果……94.4%が水分だがビタミン豊富
ゴーヤも「ウリ科」の夏が旬の野菜なので、100g中の94.4gが水分。ほぼ水分と言ってもいいような組成です。そのため、きゅうりと同様、ゴーヤも「苦手なら無理して食べなくても……」といった栄養組成とも言えます。一方で特筆すべきは、ビタミンCが76mgと豊富なこと。ビタミンCが豊富であることで知られているいちご(62mg)よりも多いのです。また、カリウムも260mg含んでいますので、腎臓に負担がかかっていない方で高血圧が気になる場合は、積極的に摂るとよいでしょう。むくみ解消効果も期待できます。
妊婦や授乳中もゴーヤを食べても大丈夫!「流産リスク」「母乳の味が変化」はウソ
妊娠中でも授乳中でも、ゴーヤを食べても問題ありません。ゴーヤは沖縄県以外の地域では、この20年くらいで一般的に見かけるようになった野菜であるため、まだなじみ切っていないと感じる人もいるかもしれません。食べ慣れない独特の苦味のある野菜ですし、最近、妊産婦がゴーヤを食べることへの注意喚起のネット上に出回ったりもしているため、妊娠中や授乳中などの食生活にも少し注意が必要な時期に食べても大丈夫なのか、不安に感じた方もいたのでしょう。もちろん、妊産婦さんが召し上がっても、何も問題ありません。問題があったら、沖縄県ではもっと早くから大問題になっていて、すでに世間一般に周知されているでしょう。
「ゴーヤを食べると母乳が苦くなり、赤ちゃんが飲まなくなってしまうのではないか」と心配される方もいるようです。これももちろん心配ありません。上述の通り、沖縄県のお母さんたちは、日常的に食べています。食べたものは母親の体内で消化・吸収されたのちに母乳となりますので、食べたものの成分や味がそのまま母乳で出てくることはありません。
ゴーヤの食べ過ぎによるリスク・注意点
苦味があるため、いくら好きな人でも食べられる量には限界があると思いますので、特に大きな問題や注意点はないと思いますが、きゅうりと同じで水分が多く、カリウムも豊富です。サラダなどで生のまま食べる場合には、たくさん食べすぎると体を冷やす危険性があります(食べすぎるほど食べられないと思いますが……)。また、カリウム豊富ですので、腎臓に負担がかかっている方は気を付けるようにしましょう。
ごくまれにですが、「ククルビタシン」による食中毒を起こすことがあります。ゴーヤの苦味は無毒な「モモルデシン」なのですが、食べられないウリ科の植物(ひょうたんやヘチマなど)に含まれる強烈な苦味成分である「ククルビタシン」を多く含む植物を誤って食べてしまうことで起こります。「ククルビタシン」による食中毒は、食用と食用でない植物を隣同士で栽培し、誤って交配してしまった果実を食用と思って食べてしまうことで起こることが多いようです。
- 「苦すぎる」と思ったら、食べるのをやめること
- 自分で栽培するときは、つる科の違う植物の近くに植えないようにする
- 植えた場所をしっかり覚えておき、他の植物と間違えないこと
余談ではありますが「ククルビタシン」は薬効成分として期待されている成分ですが、「ククルビタシン」を与えたラットやマウスで不妊や流産が多くなったという実験結果があるようです。
そのため「妊娠を希望する男女にククルビタシンを含む薬を服用させることが可能かどうか、しっかりしらべたほうがよい」ということまでは分かっています。しかし、これはあくまで「ククルビタシン」をゴーヤなどから抽出して濃度を高めた「薬」を使った場合の話ですので、野菜のゴーヤを食べたくらいでは問題ありません。
ゴーヤの栄養を逃がさない料理・調理法のコツ・苦味が苦手な場合は
ゴーヤに多く含まれる苦み成分は塩もみや熱湯での湯通しをすると抜くことができますが、水に溶けやすいビタミンCも流れ出てしまうので、痛しかゆしといったところでしょうか。ビタミンCを残すことを優先するのか、味付けを優先するのかによって、下ごしらえの方法を変えてもよいかもしれません。ゴーヤのビタミンCは油との相性がよく加熱分解しにくいと言われているので、薄切りにしてチャンプルーのように油で炒めたり、カレーの中に入れるなど濃い味付けにしたりすると、苦味が感じにくくなるようです。
さほど栄養価の高い野菜ではないので、苦手なら無理をしなくていいと思いますが、定番のゴーヤチャンプルーや、甘辛くしょうゆで煮た佃煮は食べやすいと思います。自分で作るときは、できるだけ薄く切ったほうが、苦味を感じにくくなります。これらのゴーヤ料理にかつお節をたっぷりかけて食べてみるのはいかがでしょうか。
沖縄郷土料理でもあるゴーヤで、食卓の気分転換を
栄養面では苦手なら無理をしなくても大丈夫な程度ではありますが、食卓の目先を変えるのに役に立つ食材のひとつだと思います。沖縄県の郷土料理などで大変よく使われている食材です。旅行などもままならない今は、ゴーヤ料理で沖縄旅行に行った気分を味わってみるのも楽しいのではないでしょうか。■参考リンク
- ゴーヤーの育て方・栽培方法(サカタのタネ)
- ゴーヤー(苦瓜/にがうり):栄養成分と効用(旬の食材百貨)
- ゴーヤの苦味を和らげる!簡単下ごしらえと、おいしく食べるコツ(カゴメVegeday)
- 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:ユウガオ(厚生労働省)