食と健康

新型コロナに効く食品?偽情報・デマに振り回されない3つのポイント

【NR・サプリメントアドバイザーが解説】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)には、まだ治療薬や予防ワクチンがありません。まだわからないことが多いにも関わらず、「新型コロナに効く」といった謳い文句の食品や商品が販売され、トラブルになるケースもあります。今回は食に関する健康情報に振り回されないために大切な、3つのポイントを解説します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

不安なときは、偽情報に振り回されてしまいがち

悩む女性

不安なときは「効果がある」ものにすがりたくなるもの。情報が正しいかはどう判断すればよいのでしょうか?

未知の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して、まだ治療薬や予防ワクチンがありません。私たちは感染を防ぐために、外出や人との接触を自粛する生活を余儀なくされています。

先行きの見えない不安が広がる時、人は何かに期待を寄せたり、すがったりしてしまいがちです。最近では、効果が明らかでないにもかかわらず「新型コロナウイルス感染症に効く」といった謳い文句の商品が販売され、トラブルになるケースも見られます。情報に振り回されないためには、何を読み取るべきか。今回は、食品に関する情報について取り上げます。
 

あおさ、緑茶、白湯も?「コロナ予防に効く」食品の真偽

最初に結論を述べてしまいますが、残念ながら現時点で「新型コロナウイルス感染症」に予防効果があると明らかになっている食品はありません

新型コロナへの不安が広がる中で、感染予防に効果があるのではないかと様々な食品が注目されました。ビタミンDやオリーブ葉エキスなどの特定成分の健康食品・サプリメントを始め、「明らか食品」である、あおさ、カレー、マヌカハニー、緑茶などもその一部です。スーパーであおさなどが品切れになった他、「人肌の温度の白湯を飲むと予防できる」といったデマ情報も拡散されました。

現代はSNSで誰もが気軽に発信できます。見えないウイルスや不安に立ち向かう中で、善意であれ、誤った情報を拡散してしまうことは避けるべきでしょう。

国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所では、『健康情報の有効性・安全性』サイトにて、新形コロナウイルスに関連し、国内外の健康食品やサプリメントについて注意喚起情報(「新型コロナウイルスに関連した注意喚起情報一覧」)を発信しています。消費者庁も、「新型コロナウイルスに対する予防効果」を謳う広告を出した事業者には違法表示として改善要請を出しています。
 

過剰な期待は禁物! 「食品は食品で、薬ではない」

例えば、このような情報を目にしたとします。
『○○という成分には免疫力を高める働きがあることがわかった。
その成分を主体とする薬品ができれば、もしかすると新型コロナウイルスに効くかもしれない』

このような科学的な情報の一つから、
「○○という成分は、■■という食品に含まれる。
■■という食品が、新型コロナウイルス予防に効くかもしれない」
と安易に結びつけてしまうパターンは珍しくありません。

科学的な情報の真偽を、専門知識のない私たち消費者が判断することは非常に難しいのですが、まず最低限頭に入れておきたいことは「食品」は「薬品」と異なるということです。

「薬品」は数年から数十年の期間をかけて、特定成分の有効性や安全性が検証されます。普通にスーパーなどで一般的な食材として買える「明らか食品」は、一部の特定成分だけが濃縮されているわけではなく、様々な栄養素や成分が含まれています。そのため、薬品のような人体への効果はありません。だからこそ、毎日常識的な量を食べても過剰摂取にはなりにくいのです。

健康食品・サプリメントには特定の成分を濃縮したものがありますが、同じ名称の成分でも薬品とは含有量が異なり、品質のバラツキもあります。また有効性の信頼性はやはり薬に比べてはるかに低いことも忘れてはいけません。
 

「緑茶」の感染予防効果はどう考えるべきか

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新型コロナウイルスに有効の可能性があると話題になった緑茶に含まれている「エピガロカテキンガレート」。

では話題になった食品の一つである「緑茶」についてはどうでしょうか? 茶は、歴史的に見ると、日本に薬として伝わったもので、経験的に古くから様々な効用が伝えられていました。科学的にも、茶は、乳酸菌などとともに長年研究が続けられており、その有効性について報告する論文は、他の明らか食品と比べても多く見られます。

今回の新型コロナにおいては、インドの大学の研究で、ターメリックやアピゲニン、β-グルカンなど18種類の成分で比較したところ、茶にも含まれる成分である「エピガロカテキンガレート 」(以下EGCG)が新型コロナウイルスに現状使われている薬よりも有効である可能性があり、薬剤候補として探求されるべきという研究報告がありました。EGCGは、以前からもインフルエンザウイルス予防に有効な可能性があるといった研究報告がされていた成分です。

(ちなみに緑茶特有の成分として有名なのは「カテキン」ですが、カテキンは化学構造の違いから4つに分けられます。それが「エピカテキン」「エピカテキンガレート」「エピガロカテキン」と、今回注目されている「EGCG」です。)

EGCGは、80度以上の高温でよく抽出されるといわれており、また、市販の一般的なペットボトルの茶飲料はカテキン含有量は少ないため、「緑茶を淹れて飲みましょう」という声も上がっています。私自身、日本茶文化普及に携わる活動をしていますので、いままで緑茶を飲まなかった人や、茶葉を使って急須で淹れていなかった人が、緑茶を淹れて飲む習慣が増えてくれれば、とても嬉しいことですが、健康情報に振り回されないためには、やはりこれも過信をしないことが大切です。飲み方に注意も必要だと思います。
 

情報に振り回されないための3つのポイント

もう少し詳しく、緑茶を例に食に関する情報に振り回されないために大切なポイントをご説明しましょう。

■ポイント1:可能性がある=確定情報ではない
こうした大学などの研究機関の報告が発表されると、素人の私たちはつい「確定」と信じてしまいがちですが、今回の「新型コロナウイルスとEGCG」についての研究報告は一件にすぎません。さらなる科学的な裏付けを積み重ねていかねばならず、まだ「可能性」であって「確定」ではないということを理解しておきましょう。

■ポイント2:動物実験を含む実験の効果は、必ずしもヒトに当てはまらない
この実験は、「分子ドッキング」という方法で行われたもので、ヒトレベルではないということ。さまざまな情報で「有効」という報告があったとしても、それは動物実験であったりすることも多く、様々な条件で研究すると結果が異なることもあります。だからこそ多くの裏付けが必要なのです。

■ポイント3:他の成分の影響も考慮する必要がある
EGCGはたしかに緑茶に含まれていますが、食品である緑茶はEGCGだけを多く含むわけではありません。たんぱく質(旨味の元となるアミノ酸)やビタミン、ミネラルなどの栄養素の他に、カフェインや香りの成分など様々な成分が含まれています。EGCGは、高温で出やすいと言われていますが、カフェインもまた高温で出やすくなります。カフェインは、覚醒・興奮作用などがあり、量を多く摂取すると眠りにくくなる作用などがあり、特に妊婦や子供には飲用に注意が必要です。

茶には“旨味成分テアニンが含まれる”、“カフェインの作用を抑える”という報告もありますが、カフェインの感受性は個人差が大きいと言われています。私も緑茶を1日に何杯も飲むとカフェインの影響を受けやすく、なかなか眠れなくなってしまいます。

EGCGの摂取に緑茶は向いているかもしれませんが、過信して食事のバランスを無視したり、また飲みすぎることから何日も睡眠不足が続くようでは、それが体力不足につながる可能性も否めません。またなにかしら薬を常用されている方は、緑茶で薬を飲むことのないようにしてください。カフェインなどの成分と相互作用がある場合があります。盲目的に情報を受け入れるのではなく、自分の体には合うのか合わないのかも意識することが重要です。
 

食事で一番大切なのは「偏らない栄養バランス」。情報源も確認を!

新型コロナウイルスについては、これから研究が重ねられる中で様々なことが明らかになるでしょう。今わかっていることは、食事に関しては「多様な食品からバランスよく過不足なく栄養を摂取すること」が大切ということです。あたりまえのようなことですが、テイクアウトや加工品が多いと、どうしても野菜不足になりがちです。

栄養バランスのとれた食事で健康を保つことが免疫機能がきちんと発揮することにつながります。注目されたお茶などに関しても、おいしく食事の中に取り入れて楽しむことをお勧めします。

食品は薬のように「効く」ということはありません。もしも、「効く」と謳うような宣伝をしている商品があれば、健康増進法や景品表示法などの観点から違法表示となるものです。それらの宣伝は怪しいと思った方がよいでしょう。

不安になると、いろいろな情報を得ようとしますが、現代のように玉石混交の情報が多いと、かえって迷います。健康情報についてどう判断すべきか、その信頼性については、過去の記事「あふれる健康情報に振り回されない方法」も参考になさってください。

新しい情報についても、情報源としてはできるだけ行政や公的機関、大学の研究機関等などを調べ、いくつかを見比べるとよいでしょう。

私は次のようなサイトを、必ずチェックするようにしています。
■参考
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