お金の悩みを解決!マネープランクリニック/20代のお金の悩み相談

27歳貯金50万円。親の介護を経験し、誰にも迷惑をかけずひっそりと暮らしたいのです(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、相続した実家の処分に悩む、独身で27歳の会社員男性。亡くなった両親の介護を経験して、誰にも迷惑をかけずひっそりと暮らしたいと思うようになったとか。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 老後資金は十分すぎるほどの確保が可能

ご相談として、先に老後に向けたマネープランを考えてみます。
 
現在の家計収支で拝見しますと、雑費も結果的にほぼ使わないとのことですから、計上している3万円のうち2万円は貯蓄に確実に回るとすれば、月10万円の黒字。また、所有しているクルマは、現在の住まいに引っ越されて、早々に売却されるとのこと(売却益とローン残高で収支はゼロとします)。したがって、自動車コストとしている2万5000円と、カードローンも完済まであと3年ですので、計18万円、これを貯蓄から一括返済したとします(実際、このローンは早く一括返済すべき)。これでさらに月3万円生活コストが減るので、実際に貯蓄できる額は月13万円×12=156万円。これにボーナスからの貯蓄分として、年106万円(自動車税がなくなるため)を予定されていますから、実質年間262万円。
 
また、3年目以降、年収が800万円に昇給するとのこと。手取りでは600万円程度ですから、上積み分をすべて貯蓄に回すと、年間貯蓄額は410万円程度に増えます。また、53歳のときにお父さんの負債が完済しますので、それ以降はさらに毎月の貯蓄額がアップします。
 
結果、今の生活費が維持できれば、定年を迎えた時点で手持資金はおよそ1億3500万円。これに退職金を加えた金額が、概算ではありますが、準備できる老後資金の金額となります。
 
ご希望されているのは60歳からのフルリタイアですから、公的年金支給となる65歳までの5年間の生活費は貯蓄=老後資金を取り崩すことになります。毎月の生活費が今とほぼ変わらないなら、60歳以降は月10万~11万円。これにボーナスから捻出していた経費を加算しても月割りで12万円ほどになります。これが5年間で720万円。
 
公的年金の支給額は不明ですが、額面で少なくとも12万円にはなるのでは。そうなれば、手取りは10万円ほどになり、毎月の不足額は2万円。100歳まで生きられるとして、35年間で840万円。結果、100歳の時点で1億2000万円近く(退職金含まず)が余ります。別途、医療費や介護費などが発生しても、それらが一般的な金額なら、100歳の時点でまだ1億円は残っていると考えられます。
 

アドバイス2 相続した自宅は早めに手放すのが最善策

あらためて言う必要もないでしょうが、先の試算で老後資金は十分過ぎるほどの準備が可能です。ご相談者が望む生活であれば、資金的には何の心配も要りません。安心してください。
 
ただし、先の試算では、相続された実家について、その維持経費として、固定資産税(年間11万円)と、年に3回程度の帰省費用は含まれている(ボーナスからのその他費用として)でしょうが、定年までにメンテナンス等の費用が別途発生すると考えておくべき。
 
住宅は人が住んでいなくても老朽化は進行します。住んでいない方が、早く進行するともいわれています。その程度には個体差があるでしょうが、少なくとも屋根や外壁の劣化は避けられないでしょう。足場を組んでの修繕(再塗装)は、1回に100万円は覚悟しておきたい。耐用年数が10年なら、定年までに3回必要になります。もとより、すでに築17年ですから、定年時には築年数が50年近くになっています。移り住む頃には、内装や構造自体そのものにも大規模な修繕が必要になるはずです。
 
したがって、実家の処理等についても悩まれていますが、個人的には売却が望ましいと考えます。売却をとどまらせているのは、自分に遺してくれたというお父さんへの思い、とのこと。その気持ちは十分理解できますが、実家を維持することのメリットはそれだけです。トータルで考えれば、今後1000万~2000万円のコストがかかる可能性は十分にあります。
 
例えば、実家に移り住み、そこで仕事をするという選択肢もあるでしょう。しかし、収入がどれだけ得られるか。家賃はかかりませんが、せっかく、スキルを活かした、かつ高収入の仕事を確保できたことを思えば、移り住む選択は現実的ではありません。
 
さらに言えば、数千万円コストが発生しても、先の試算で考えれば、ほぼ老後には影響しません。そのくらい大きな老後資金が準備できます。しかし、それも、安定した収入が定年まで続くという前提での話です。それが100%保証されているわけではありません。そう考えれば、カットが可能な大きなコストはできるだけ排除しておく。それが、将来へのリスク回避の有効な手段だと言えます。
 
今すぐ結論を出さなくていいですが、そう時間も掛けられません。遅くとも30歳までに決められてはどうでしょうか。
 

アドバイス3 無理に運用リスクを取る必要はない

運用については、無理にする必要はありません。現時点では十分な老後資金の確保が可能なので、投資リスクを取ってまで増やす必要がないからです。
 
もし運用するとすれば、iDeCoでしょうか。2020年度の税制改正で、すべての会社員が利用できるようになります。老後資金づくりが目的の制度ですから、掛けた金額は60歳以降でなくては原則引き出せませんが、資金的にも余裕がありますし、節税メリットを確実に受けることができるので、利用コスト(口座管理料など)を差し引いても行う価値はあると思います。また、投資コストを取りたくなければ、元本保証の商品(定期預金タイプなど)も選ぶこともできます。
 
最後に、ご相談者自身、若くしてご両親の介護で苦労されたこと。また、今もお父さんの負債を返済していること。誰にでもできることではありません。立派だと思います。そして、その経験を経て、支出することに大変臆病になってしまった。さらに、結婚も望まず、人に迷惑をかけないで、ひっそりと暮らしたいと考えるようになった。それだけ、辛い思いをされたということが伝わります。
 
それでも、人は一人では生きてはいけません。お金だけではカバーできないこともあります。無理に今の考えを変える必要はありませんが、時間の経過の中でそれが変わったとしても、それは自然なことだと捉えてください。そして、それにより、生き方、暮らし方、それにともなう資金の在り方で悩まれるかもしれません。そのときはまた、ぜひご相談していただければと思います。
 

相談者「自由希望ノ男性」さんから寄せられた感想

深野先生から具体的な資金の算出をいただき、抱えていた漠然とした不安が少し解消されたように思います。実は昇進が決まりまして、いただいた内容も含め少しゆとりをもっていきたいと思います。また、実家の処理についてもいただいたとおり、帰省代や将来の管理費を考えた場合現実的なメリットは少ないので、売却の方向で30歳までに処理を終わらせようと思います。ご回答いただき、ありがとうございました。

 
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武

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