結婚は絶対にしませんし、二度と自分以外のためにお金を使いたくありません

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、相続した実家の処分に悩む、独身で27歳の会社員男性。亡くなった両親の介護を経験して、誰にも迷惑をかけずひっそりと暮らしたいと思うようになったとか。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。※マネープランクリニックに相談したい方はコチラのリンクからご応募ください(相談は無料です)

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今後の人生のマネープランについて相談させてください

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■相談者
自由希望ノ男性さん(仮名)
男性/会社員/27歳
関西/賃貸住宅
 
■家族構成
独身・一人暮らし
 
■相談内容
5年前母が、一昨年父が死去したことをきっかけに転職し現在の収入になりました。高校卒業以来、一昨年までは両親の介護を死に物ぐるいでやっていたので貯金は今年夏ボーナスの50万円程度。それ以外は主に父が残した負債の返済に使い切りました。3万5000円/月は債権者と協議の上私が53歳の時に完済予定。カーローンは35歳まで継続ですが、転職を機に引っ越しをし、今は不要なので早期売却予定。固定資産は父から相続した実家(遠方)のもの、現在空き家状態で年に3回程度私が帰省し維持整理しています。
 
以下、ご相談内容です。
(1)実家の処理方法について
相続した実家は父の死去とともに団信によってローン完済しており、現在土地家屋とも私個人名義。平成15年築の二階建て鉄筋コンクリート造の家屋と土地です。
 
思い出深いので私がリタイアするまで維持してリタイア後実家に戻って過ごしたい、という漠然とした予定と、手早く売却してしまうかで悩んでいます。今は前者の気持ちが強いですが、家の老朽化を目にするにつれ現実的でないのかと思っています。売却するにしても土地をつけて600万円程度と査定され、父が3500万円かけて私に残したものを……という思いが邪魔をします。
 
(2)人生設計と老後に向けたマネープランについて
金銭的に貧乏な両親の元で育ったこと、高校以降の介護生活での経験から、金銭収支に対しひどく臆病です。27歳という年は老後を考える時期ではない、とも思うのですが、誰にも迷惑をかけずひっそり暮らしたいという固定観念が自分の中にあります。結婚は絶対にしません。両親以外に親族もなく友人もない今の環境が自分に最も適しています。二度と自分以外のためにお金を使いたくありません。といっても無趣味・無関心の人間なのでほとんど支出しないですが。記載した雑費もほとんど使っておらずその分貯金しています。幸い、今は大手企業に転職でき記載したとおりの収入を得ています。2年後には昇進し年収800万円程度になります。ようやく債務の整理もすみ今後の目的を考えられています。

60歳のリタイアまでに何千万円貯めておけば借金せずに独身で人生全うできるか、教えてほしいです。投資とかも興味はありますが、知識がないのと貯蓄目的なのでそこまで意欲も湧きません。おすすめな投資があれば教えていただきたいです。
 
■家計収支データ
相談者「自由希望ノ男性」さんの家計収支データ

相談者「自由希望ノ男性」さんの家計収支データ



 
■家計収支データ補足
(1)父親の負債について
利息なし。残債額739万円。負債の内容・相談者コメント「父の自動車事故によるものです。父は任意保険の加入のないまま事故を起こし、先方の医療費等を弁済した保険会社にその返済を継続しています。上述のとおり利息はありません。どちらも私自身は連帯保証人ではありません。ただ、父の債務を継承した時点で私には借金に対する対応知識がなく、また、父の遺したものは私がすべて処理するという義務感から、支払いを続けています。今振り返れば相続放棄や時効交渉などの手段もあったとは思います。それをしなかったのは実家をローン完済の状態で相続できたからというのも理由としてあります。ただ、こと自動車事故は先方の善意で毎月3万円の支払いで納得いただけていますので、完済まで支払います」
 
(2)ボーナスの使いみちについて
実家の固定資産/年間11万円、自動車税/4万円、他多くて5万円
残りは貯蓄。
 
(3)加入保険の保障内容
終身医療保険(死亡100万円、入院5000円)=毎月の保険料4502円。
 
(4)今後の生活費
少なくとも今の生活水準は維持。できればもっと無駄をなくしたいと考えている。
 
(5)リタイア後について
60歳でのフルリタイアを希望。
 
■FP深野康彦の3つのアドバイス
アドバイス1 老後資金は十分すぎるほどの確保が可能
アドバイス2 相続した自宅は早めに手放すのが最善策
アドバイス3 無理に運用リスクを取る必要はない
 

アドバイス1 老後資金は十分すぎるほどの確保が可能

ご相談として、先に老後に向けたマネープランを考えてみます。
 
現在の家計収支で拝見しますと、雑費も結果的にほぼ使わないとのことですから、計上している3万円のうち2万円は貯蓄に確実に回るとすれば、月10万円の黒字。また、所有しているクルマは、現在の住まいに引っ越されて、早々に売却されるとのこと(売却益とローン残高で収支はゼロとします)。したがって、自動車コストとしている2万5000円と、カードローンも完済まであと3年ですので、計18万円、これを貯蓄から一括返済したとします(実際、このローンは早く一括返済すべき)。これでさらに月3万円生活コストが減るので、実際に貯蓄できる額は月13万円×12=156万円。これにボーナスからの貯蓄分として、年106万円(自動車税がなくなるため)を予定されていますから、実質年間262万円。
 
また、3年目以降、年収が800万円に昇給するとのこと。手取りでは600万円程度ですから、上積み分をすべて貯蓄に回すと、年間貯蓄額は410万円程度に増えます。また、53歳のときにお父さんの負債が完済しますので、それ以降はさらに毎月の貯蓄額がアップします。
 
結果、今の生活費が維持できれば、定年を迎えた時点で手持資金はおよそ1億3500万円。これに退職金を加えた金額が、概算ではありますが、準備できる老後資金の金額となります。
 
ご希望されているのは60歳からのフルリタイアですから、公的年金支給となる65歳までの5年間の生活費は貯蓄=老後資金を取り崩すことになります。毎月の生活費が今とほぼ変わらないなら、60歳以降は月10万~11万円。これにボーナスから捻出していた経費を加算しても月割りで12万円ほどになります。これが5年間で720万円。
 
公的年金の支給額は不明ですが、額面で少なくとも12万円にはなるのでは。そうなれば、手取りは10万円ほどになり、毎月の不足額は2万円。100歳まで生きられるとして、35年間で840万円。結果、100歳の時点で1億2000万円近く(退職金含まず)が余ります。別途、医療費や介護費などが発生しても、それらが一般的な金額なら、100歳の時点でまだ1億円は残っていると考えられます。
 

アドバイス2 相続した自宅は早めに手放すのが最善策

あらためて言う必要もないでしょうが、先の試算で老後資金は十分過ぎるほどの準備が可能です。ご相談者が望む生活であれば、資金的には何の心配も要りません。安心してください。
 
ただし、先の試算では、相続された実家について、その維持経費として、固定資産税(年間11万円)と、年に3回程度の帰省費用は含まれている(ボーナスからのその他費用として)でしょうが、定年までにメンテナンス等の費用が別途発生すると考えておくべき。
 
住宅は人が住んでいなくても老朽化は進行します。住んでいない方が、早く進行するともいわれています。その程度には個体差があるでしょうが、少なくとも屋根や外壁の劣化は避けられないでしょう。足場を組んでの修繕(再塗装)は、1回に100万円は覚悟しておきたい。耐用年数が10年なら、定年までに3回必要になります。もとより、すでに築17年ですから、定年時には築年数が50年近くになっています。移り住む頃には、内装や構造自体そのものにも大規模な修繕が必要になるはずです。
 
したがって、実家の処理等についても悩まれていますが、個人的には売却が望ましいと考えます。売却をとどまらせているのは、自分に遺してくれたというお父さんへの思い、とのこと。その気持ちは十分理解できますが、実家を維持することのメリットはそれだけです。トータルで考えれば、今後1000万~2000万円のコストがかかる可能性は十分にあります。
 
例えば、実家に移り住み、そこで仕事をするという選択肢もあるでしょう。しかし、収入がどれだけ得られるか。家賃はかかりませんが、せっかく、スキルを活かした、かつ高収入の仕事を確保できたことを思えば、移り住む選択は現実的ではありません。
 
さらに言えば、数千万円コストが発生しても、先の試算で考えれば、ほぼ老後には影響しません。そのくらい大きな老後資金が準備できます。しかし、それも、安定した収入が定年まで続くという前提での話です。それが100%保証されているわけではありません。そう考えれば、カットが可能な大きなコストはできるだけ排除しておく。それが、将来へのリスク回避の有効な手段だと言えます。
 
今すぐ結論を出さなくていいですが、そう時間も掛けられません。遅くとも30歳までに決められてはどうでしょうか。
 

アドバイス3 無理に運用リスクを取る必要はない

運用については、無理にする必要はありません。現時点では十分な老後資金の確保が可能なので、投資リスクを取ってまで増やす必要がないからです。
 
もし運用するとすれば、iDeCoでしょうか。2020年度の税制改正で、すべての会社員が利用できるようになります。老後資金づくりが目的の制度ですから、掛けた金額は60歳以降でなくては原則引き出せませんが、資金的にも余裕がありますし、節税メリットを確実に受けることができるので、利用コスト(口座管理料など)を差し引いても行う価値はあると思います。また、投資コストを取りたくなければ、元本保証の商品(定期預金タイプなど)も選ぶこともできます。
 
最後に、ご相談者自身、若くしてご両親の介護で苦労されたこと。また、今もお父さんの負債を返済していること。誰にでもできることではありません。立派だと思います。そして、その経験を経て、支出することに大変臆病になってしまった。さらに、結婚も望まず、人に迷惑をかけないで、ひっそりと暮らしたいと考えるようになった。それだけ、辛い思いをされたということが伝わります。
 
それでも、人は一人では生きてはいけません。お金だけではカバーできないこともあります。無理に今の考えを変える必要はありませんが、時間の経過の中でそれが変わったとしても、それは自然なことだと捉えてください。そして、それにより、生き方、暮らし方、それにともなう資金の在り方で悩まれるかもしれません。そのときはまた、ぜひご相談していただければと思います。
 

相談者「自由希望ノ男性」さんから寄せられた感想

深野先生から具体的な資金の算出をいただき、抱えていた漠然とした不安が少し解消されたように思います。実は昇進が決まりまして、いただいた内容も含め少しゆとりをもっていきたいと思います。また、実家の処理についてもいただいたとおり、帰省代や将来の管理費を考えた場合現実的なメリットは少ないので、売却の方向で30歳までに処理を終わらせようと思います。ご回答いただき、ありがとうございました。

 
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など




取材・文/清水京武

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