40代女性がピルを始めるときの基礎知識
ピルの使用は、「避妊」の効果に目をとられがちですが、それ以外にも様々な効果をもたらせてくれます。服用するときの飲み方や注意点、副作用はどんなことなのでしょうか。様々な方面から、40代の女性がピルを飲み始める前に知っておきたいことを考えていきましょう。
<目次>
- 実は増えている40代の妊娠中絶手術
- ピルの飲み方や値段は? 基礎知識を解説
- ピルを飲むことによるメリットとデメリット
- ピルを飲んではいけない人の特徴
- 妊娠することもある? ピル服薬の落とし穴
- 女性ホルモンの減少で起きる症状とは
実は増えている40代の妊娠中絶手術
40代女性の妊娠中絶も決して少なくありません。
妊娠中絶手術と聞くと、「若者の性」が問題視されがちですが、年齢別人工妊娠中絶件数は40代以上にも多いという調査結果があります。
厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例」による人工妊娠中絶件数を年齢別件数でみると、一番多いのは20~24歳で40,408件ではあるものの、40~44歳は14,508件、45~49歳は1,388件と、40歳以上の中絶例も決して少なくありません。
また平成30年度の人工妊娠中絶件数は161,741件で、対前年度に対し-1.7%となり2,880件減っている中で、45~49歳については1.8%増えていることも留意すべき点です。
▽参考記事
40代高齢の妊娠中絶手術が実は増えている!
▽参考サイト
厚生労働省「平成30年度衛生行政報告例の概況」
続いては、避妊に有効とされるピルの服用の方法や 費用など、ピルの基礎知識を解説します。
ピルの飲み方や値段は? 基礎知識を解説
ピルの飲み方
ピルは毎日同じ時間に服用します。成分が入っている薬を21日間服用し、その後7日間は服用しないか、またはプラセボと呼ばれる、成分の入っていない偽薬を飲みます。21日間服用した後、3~4日後に月経が始まります。
避妊用のピルは保険がきかず自費診療での処方になります。ピル自体の値段は医院によって異なるためあくまで目安となりますが、1シート(1か月分)が20000~3000円です。避妊用のピルを処方する時は、問診票と血圧測定で問題なければ特別な検査は必要ありません。そのため、初診料とピル代で処方が可能です。治療目的でピルを処方してもらう場合は、ピル自体に保険がききますので、ピルの種類によって値段が異なりますが、1シート1000~2500円です。治療目的の場合は、必要に応じて処方前に超音波検査や血液検査をしますので、検査代が約5000円程度かかる可能性があります。
ピルを飲むことによるメリットとデメリット
ピルを飲むことで副次的なメリットも
ピルを一定時間ごとに飲むことによって、ホルモンが体内に十分ある状態が保たれるため、脳から排卵の刺激が出なくなります。それによって、排卵を抑えるというのがピルによる避妊の最大の特徴です。
また、避妊以外に次のような副効用(避妊以外の効果)があります。
〈メリット〉
■月経に伴うトラブルの改善
月経痛や月経量の軽減、月経不順や貧血の改善など
■ホルモンバランスの変化による効果
にきびの改善、多毛症の改善など
■排卵を抑制することによる効果
卵巣のう腫や子宮外妊娠の減少など
■長期服用による効果
良性の乳房疾患の減少、子宮体がんのリスク低下など
なお、これらの副効用は必ず全ての人に見られるわけではありません。副効用目的で使用したい場合には、医師と相談の上、服用をするかどうかの選択をしてください。
〈デメリット〉
■マイナートラブル
軽度の吐き気・頭痛・乳房の張り・むくみなど
■血栓症
頻度は非常に低いのですが注意が必要な副作用が血栓症です。血液の塊が血管にできてつまってしまうので、ピルを飲んでいる時は血栓症の症状がないか定期的にチェックが必要です。
■不正性器出血
月経と月経の間に出血
■吹き出物
ピルの種類によってはニキビのような吹き出物が出る
吹き出物は、軽度のものであれば、2~3ヶ月(2~3シート)飲み続けることによって治まりますが、ひどい場合や、なかなか治まらない場合もあります。なお、ピルの種類を変えることによって治まることもありますし、それ以外の原因がある場合もあります。
▽参考記事
ピルの効果・副作用……気になるメリット・デメリット
ピルを飲んではいけない人の特徴
自己判断せず相談を
先ほど紹介した通り、ピルを使用すると、その副効用でも様々なメリットを得られます。しかし、すべての人が服用できるわけではありません。以下に挙げるように、中にはピルを服用してはいけない人もいます。そのため、必ず事前に医師と相談をした上で、ピルを使用するかを判断してください。
■エストロゲンが関わっている癌の疑いのある人
乳がん、子宮がんがこれにあたります。もしピルを服用する場合は、定期的に子宮癌の検診(細胞診)を受けるとよいでしょう。
■血栓性の病気
ピルの成分の一つのエストロゲンは血液を固まりやすくする作用(血栓を作る作用)があります。そのため、血栓性静脈炎、肺塞栓症、脳血管障害、冠動脈疾患などの病気にかかったことがある場合、服薬はできません。また、手術後の人、出産後の人、長期安静の人も血が固まりやすくなりますので服薬できません。
■ピル過敏症、原因不明の性器出血
当然のことですが、実際にピルを飲んで過敏症を起こしたことがある人も、ピルは服薬できません。また、原因不明の不正性器出血のある場合も薦められません。
▽参考記事
ピルを飲めない人・飲んではいけない人
妊娠することもある? ピル服薬の落とし穴
ピルを服用していても必ず避妊できるわけではありません
避妊効果を促すピルですが、 ピルを飲んでいれば絶対に妊娠しないというわけではありません。
100組のカップルがその方法で避妊を続けた場合の1年間の妊娠例数を「パール指数」というもので表しますが、ピルのパール指数は「正しく服用した場合」でも0.3くらいです。ピルのみで避妊をしているカップルが1000組いた場合、1年に3組が飲み忘れや飲み遅れがなくても妊娠する可能性があるということです。
もし、ピルの飲み間違えや飲み忘れをしてしまった場合は、パール指数は9くらいまで増えてしまいます。100組に9組が避妊に失敗して妊娠してしまう計算です。
また、個人輸入のピルなどを使う場合はさらに注意が必要です。個人輸入のピルの場合、その薬剤の成分が「偽物」であれば、当然避妊効果を得ることはできません。すべての個人輸入ピルが危険なわけではありませんが、有効期限や薬剤の成分を自分で確かめることができない点ではリスクがあるといえます。
▽参考記事
ピルで避妊失敗も…妊娠例もあるピル服薬の落とし穴
女性ホルモンの減少で起きる症状とは
女性ホルモンの低下が不安や動悸を引き起こす?
ピルを避妊以外で服用する目的として、女性ホルモンの分泌を促すことがあげられます。
40代後半になると、女性ホルモンの量が一気に減る時期にはいってしまい、様々な症状が起こりやすくなるからです。
女性ホルモン量の減少と大きく関係する症状は以下のようなものです。
■更年期障害
女性ホルモン低下に伴う自律神経失調状態
■骨粗鬆症
女性ホルモンは骨量を保つ働きがある
■脳梗塞、心筋梗塞など血管の病気のリスクの増加
女性ホルモンは血中の脂質を下げる働きがある
■アルツハイマー病
女性ホルモンとの関係がいわれている
■萎縮性膣炎
膣の粘膜が萎縮して膣が弱くなり、すぐ出血したりひりひりしたりする
▽参考記事
女性ホルモンの分泌量変化と起こりやすい不調
40代でもピルを服用するメリットは多々あります。ただし、40代に入って新たにピルを飲み始める場合は、血栓症のリスクが高くなるため「ピル以外に避妊や症状を改善する方法がある場合はピルを第一選択にしない」ことが推奨されています。
ピルを飲み始めるなら早い方がベターではありますが、40代になってから飲み始められないわけではありません。リスクとメリットをしっかり把握して、医師と相談したうえでベストな選択をしていきましょう。
(監修:清水なほみ)