産まれた日にあたる0日死亡、平成29年度は14名
冷酷な子どもの虐待死報道が続いていますが、厚生労働省「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」によると平成29年度に把握された虐待死は52例でした。その内訳を見てみると、0歳児が28人と5割を超えています。しかも、下表によれば0歳児のうち0か月死亡が14人と際立っています。さらに詳しい内訳によれば、何とこの14人すべてが産まれた日にあたる0日死亡でした。■死亡した0歳児の月齢
死亡した0歳児の月齢(出典:厚生労働省 子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について (第15次報告 対象期間:平成29 年4月から平成30年3月までの1年間))
0日死亡のほとんどは、妊娠後に相手と連絡がとれなくなり、妊婦は誰にも相談できず、産婦人科を受診することもなく陣痛の日を迎えて、ひとりで出産。赤ちゃんはそのまま放置され亡くなる遺棄死です。
子どもは亡くなり、母親だけが逮捕される
望まぬ妊娠の末、孤独な出産をしてしまい子どもの0日死亡という虐待死に繋がるケースが多い
中絶を選択できない、でも、子どもを育てられない場合は
妊娠しても、様々な事情からわが子を育てられないケースもあります。若年妊娠や、予期せぬ妊娠では、気づいた時には中絶が可能な妊娠22週を超えていることも珍しくありません。「子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について」の第3次から第15次報告までの推移でみると、「予期しない妊娠/計画していない妊娠」「妊婦健診未受診」「母子健康手帳の未交付」「若年(10代)妊娠」については、継続的に高い水準で事例の発生がみられるとのこと。特に、若年妊娠についてみると、我が国における全出生数のうち母親の年齢が若年(10代)の割合は約1.3%前後で推移している一方で、心中以外の虐待死事例における「若年(10代)妊娠」の平均割合は 17.8%であり、その割合の高さは顕著であるそうです。
中絶を選べなかった母親が子どもを手放さざるをえない場合、実親と暮らすことができない子どもの8割が施設で暮らしている日本では、これまで母親へはまずは乳児院に行く選択しか提示されてきませんでした。特別養子縁組とは?
特別養子縁組とは、血のつながらない子どもを法的にもわが子として育てる養子縁組
血のつながらない子どもを、法的にもわが子として育てる「養子縁組」が「特別養子縁組」です。海外ではごく一般的な家族の形です。
養子縁組は公的な児童相談所でも行われています。ただし、児童相談所は虐待児童の保護などの緊急性の高い仕事に追われていること、出産前、特に妊婦さんのサポートの場としては適切といえないことなどの理由から、「赤ちゃん縁組」とも呼ばれる、出生後すぐの特別養子縁組にまで手が回っていないのが実情です。
特別養子縁組のあっせん事業者とは?
この現状に対応すべく、ある意味、国が赤ちゃん縁組のアウトソーシング先としたのが、養子縁組あっせん事業者になります。あやしげに思う方もいるかもしれませんが、命をつなぐプロフェッショナル集団です。かつては利益目的で摘発された団体もありましたが、2018年に養子縁組あっせん法が施行され許認可制となったことで、悪徳事業者は一掃されました。
私も長年アクロスジャパンという事業者の理事として、多くの特別養子縁組のケースに携わってきました。東京にある事業者ですが、北海道から沖縄まで、日本全国要請があればどこへでも足を運んでいます。
特別養子縁組はひとつの選択
あっせん事業者といっても養子縁組が前提ではありません。あっせん事業者というと、敷居が高そうに聞こえますが、特別養子縁組を勧めたり、強要する事業者ではありません。実際、私たちの事業者の年間縁組数は15組前後ですが、相談事例は1000件を超えています。相談業務は最も大切な仕事になっています。
妊娠中に赤ちゃんに障害があるとわかり、切羽詰まって連絡してきた妊婦さん。夫婦関係は悪くなり、うつ状態にもなりました。当初は生まれたらすぐに養子に出すとのことでしたが、気持ちも変わり、産後も濃密な関わりを継続しているうち、保育園が決まって生後数カ月がたった頃から、子どもへの意識に変化が生まれてきています。
困っている妊婦だけでなく、家族、病院、行政機関、どなたでも!
ひとりで抱え込まず、国の認可を受けている特別養子縁組あっせん事業者に連絡を
0日死亡の減少にまでは至っていませんが、困っている妊婦さん、相談を受けた方は、ひとりで抱え込まず、国の認可を受けている特別養子縁組あっせん事業者に連絡することをおすすめします。
【参考サイト】
- 子ども虐待による死亡事例等の検証結果等について(厚生労働省)
- 特別養子縁組制度について(厚生労働省)
- 社会的養育の推進に向けて(厚生労働省)