恋で全てを失った女は再生できるか
恋で全てを失った女は再生できるか
恋愛ですべてを失う女性は決して少なくない。そんなとき、女性たちはどうやって再生していくのだろうか。
「彼を待つだけが楽しみだった」20代で不倫を経験した
「私も恋愛で一度、すべてを失っているんです」
そう言うのはアキナさん(33歳)。27歳のとき、10歳年上の職場の既婚男性と恋に落ちた。「不倫」がバレるのを怖れて彼女は転職したものの、転職先での人間関係に疲れて退職。
「彼は前の会社を創業したメンバーのひとりでしたから、『アキナは働かなくてもいいよ』って。生活のめんどうも見てくれるようになったんです。私はスポーツジムに通ったり、昔やっていたピアノをもう一度始めたりしながら、ひたすら彼を待つ生活になりました。最初はそれが楽しかったんです。彼は週のうち半分くらい私のところに泊まっていました。夜中に帰ってくる彼に夜食を作ったり、週末、彼の接待ゴルフについていったり。彼があちこち連れ回してくれると、私は彼の自慢の彼女なんだという気もしていた」
ところが1年ほどたつうちに、彼女の心が微妙に変わっていく。彼が1週間、来ないこともあった。そんなときは、どうしても過去を思い出してしまうのだ。もとは大学卒業以来、バリバリと働いていた。彼と同じ職場にいたころは、仕事が楽しくてたまらなかった。それなのに、彼を好きだからとはいえ、どうしてこんな生活になってしまったのだろう。
「彼の心が少しずつ離れていっているのを実感としてわかっていました。同時に私も、以前ほど彼に情熱をもてなくなっていた。お互いに新鮮さが薄れたんでしょうね。おそらく彼には新しい女性がいたんじゃないでしょうか。私は私で、彼を待つ生活ではなく、自分の人生を歩きたくなっていきました」
久しぶりに彼が来たとき、そんな話をした。彼は少しホッとしたように見えたという。
その後、アキナさんはまったく違う業界に仕事を見つけた。あれから4年、今も必死に働いている。
「とにかくきちんと自立しないと何も始まらない。彼が恋しいときもありましたけど、ここでしがみついてはいけないと思ってがんばってきました。新しい仕事も、やっと楽しいと思えるようになりました。あれから恋愛はまだしていませんが、もう少ししたらきっと恋愛もできるんじゃないかと感じています」
恋から恋へと渡り歩くことなく、自分の人生を軸に行動してきた彼女。つらかったこの数年間が、今の彼女の力強さを作ってきたのではないだろうか。
恋破れてすぐに結婚したけれど……20代で同棲していた彼と別れた
一方で、失恋のつらさから身近にいた男性とすぐに結婚、その後、離婚した女性もいる。
「5年間、一緒に住んでいた彼がいたんです。私は結婚するつもりだったから、ずっとアルバイトをしていて正社員にならなかった。ところが彼はある日、結婚するつもりがない、と。私の人生、どうなるんだろうと思いました」
そう言うのは、サヤカさん(34歳)。23歳から同居していた彼と別れたのが28歳のとき。キャリアもなく、今から正社員になるのはむずかしいと感じていた。ちょうどそのころアルバイト先に中途入社してきた2歳年上の男性がいた。彼と何度か飲みにいくうち関係ができ、出会って半年足らずで結婚ということに。
「デキ婚なんですよ。私はそれでもいいと思っていた。彼はいい人だったし。アルバイトを辞めて専業主婦になって、これが私の生きる道だったんだと思ったこともあります。だけど出産後、何かが違う、と。私は前の彼にフラれた腹いせのように今の人と結婚したのではないかと思うようになったんです。夫のことを本気で好きというわけではなかった。夫のほうもそうだったと思います」
娘が2歳の誕生日を迎える直前、彼女はもう一緒にはいられないと夫に伝えた。夫は娘とは離れられないと泣いたというが、離婚に異議はとなえなかった。
「それから学校に通って資格をとり、今はシングルマザーとして働きながら人生をやり直しています。夫は娘のことなら何でも相談に乗ってくれるし、週末はよく預かってくれます。お互いにパートナーができたら、そこはまた話し合っていこう、とにかく娘を大事に育てようということで一致しました。やはり夫はいい人なんですよね」
いい人であっても、男と女として人生をともにすることはできない。自分の人生はまだまだこれから。サヤカさんはそう言って笑った。
恋が終わっても人生は終わらない
恋ですべてをなくしても、その気さえあれば人生をやり直すことはいくらでもできるのだ。恋にのめりこんだあげく仕事を失ってしまっても、激しい恋のあとに衝動的に結婚してそれが失敗だったとわかっても、どんなときでもそこから立ち上がることはできる。人にはそういう力が備わっているはずだと実感している。
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