アドバイス1 両親の年金額、資産を確認のうえ、家族で費用負担を話し合う
ご相談内容を拝見し、最初は、これは大変なことだと思ったのですが、よくよく読んでいくと、森の枝さんご自身の問題をまずは解決しなければ前に進みません。ご両親についてのご心配は、優先されることかもしれませんが、今現在、お父さまの収入で一家4人を支えているのが実態で、森の枝さんの収入は、言ってみれば、ご自身と妹さんのお小遣いとなっています。生活費負担がないのですから。まずは、ご両親の収入、年金額、資産を確認し、ご両親の今後のご希望を家族で話し合うことが先決です。ご両親はご両親の収入の範囲で、生活ができているのではありませんか?
お母さまについての行政の対応は、少々理不尽に思われます。重度障害であっても、入居可能な障害者支援施設はありますし、デイサービスやショートステイ、訪問入浴介助など、さまざまな支援サービスを受けられるはずです。地域包括支援センターや、ケアマネージャーにもう一度、ご相談してみてください。また、住宅のバリアフリー化については、多くの自治体で助成事業を行っています。
いずれにしても、今の状態では、お母さまにとっても、妹さんにとっても、精神的にも肉体的にもストレスがかかりすぎています。森の枝さんが今すべきなことは、こうした手続き関係を、あきらめることなく、介護申請したり、介護支援相談に出向いたりすることです。利用者負担の割合や上限額は世帯収入によって変わりますが、障害者・介護サービスを受けられないということはありません。介護にかかる費用は、基本的には、ご両親の収入、貯蓄から出すようにしてください。
アドバイス2 自分の役割を明確にし、働き方、支出の削減を考える
少し、厳しい言い方になりますが、森の枝さんは、まずは、ご自分でご自分の面倒をみること。つまり、今の収入から、毎月きちんと貯蓄していかなければなりません。妹さんと二人分とはいえ、通信費に4万円もかかるとは、考えられません。半分以下の1万5000円に抑えられます。浮いた2万5000円と雑費から5000円。合わせて3万円は毎月、貯蓄をしてください。加えて、どういうご事情かわかりませんが、過去の住民税、健康保険料、クレジットカードの支払いで3万円があります。こうした支払いがあるというのは、お金の管理の甘さでもあります。支払いが終わったら、その分も貯蓄するようにしてください。まずは、毎月の貯蓄をして、まとまったお金になるまでコツコツと貯めるほかありません。
一方で、保険に未加入のようですが、掛け捨てでいいので、医療保険にだけは加入してください。預貯金がないなかで、病気・ケガ、入院となった場合、誰が医療費を払うのですか? これも、自分のことは自分で面倒をみる、ということです。
働き方については、正社員での就職は難しいということですが、森の枝さんご自身の老後を考えると、少なくとも厚生年金に加入できる派遣元であってほしいと思います。ご両親のためではなく、ご自身のためです。
アドバイス3 妹さんとも役割分担。妹さんにこそ息抜きが必要
そして、一番心配なのは、妹さんです。お母さまの介護のために仕事を辞められて、小遣いを渡しているとはいえ、これから妹さんはどうやって生活されていくのでしょう。妹さんの息抜きのためにも、お母さまが公的な介護サービスを受けられるようにすることは、どうしても必要です。お父さまがリタイアすると、途端に、家族4人の生活は苦しくなってしまいます。その時に、森の枝さんが外で仕事をするのが身体的に辛いようであれば、妹さんに代わって家庭に入り、妹さんが外で働き、収入を増やし、妹さんの貯蓄を増やす、そういう選択もできるでしょう。もしも、お父さまがお母さまの介護ができるのであれば、姉妹で収入を得ることも考えるべきでしょう。
森の枝さんが、家に貢献したい、ご両親、妹さんを養っていきたい、と思われるのは尊いことですが、今は、森の枝さん自身が自立することが先です。自分の役割が収入を上げることであれば、全力で転職活動をしてください。そして、家族4人で、しっかりと話し合いをされてください。
相談者「森の枝」さんから寄せられた感想
今回の相談は私にとって非常に勇気が要ることでしたが、改めて自分たちの生活や自分自身を見直すきっかけになりました。課題は多いですが、諦めず、投げず、妹と協力しながら頑張っていきたいと思います。★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
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教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/伊藤加奈子
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