お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

54歳、専業主婦。貯金は約5000万円。夫の定年後は旅行などを楽しめる?(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、夫婦の両親4人を介護する54歳の専業主婦の方。金融資産は約5000万円あるものの、今年から夫の年収が20%ダウン、教育費が定年の翌年まで続くなど、収支バランスが不安定な定年前後のマネープランに不安を感じるといいます。そんなクリムさんのお悩みに、ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 心配はまったく不要。クリムさんのような人が貯められる人

住宅ローンは完済、来年には車を手放す予定、家計もきちんと管理されている上に、資産は5000万円超。このままの生活を続けていけば、お金の面での心配はほとんど必要ありません。というか、不安を感じる理由がわからないくらいです。
 
では心配の必要がない理由を、具体的に説明していきましょう。クリムさんが心配している、収入が減る60歳以降の赤字額をみていきます。60歳時は収入が20万円で支出が約37万3000円ですから毎月の赤字が17万3000円、1年で207万6000円。61歳~64歳の間は収入が変わりませんが、教育費がなくなるため毎月の赤字は5.3万円となり1年で63万6000円、4年で254万4000円です。
 
65歳以降、夫婦ともに年金を受給するようになると収入は月額約23万5000円。これに対し支出は現在の家計費から教育費を引いた25万3000円が目安になりますが、リタイアすれば小遣いなどが減るでしょうし車両費も不要になります。家計管理が上手なクリムさんなら、基本的な毎月の支出は年金の中でやりくりできるのではないでしょうか。
 
ということはクリムさんが心配している夫の年金のみとなる65~68歳の4年間は、クリムさんの年金分(年72万円)が不足することになります。ただし老齢厚生年金には、申請すれば配偶者が65歳になるまで受給できる加給年金(年39万100円。令和元年の場合)があり、クリムさんは対象者に該当すると思われるため、実際の不足額は33万円、4年で132万円となるはずです。以上、夫の退職からクリムさんが年金を受給するようになるまでの不足額を合計すると594万円となります。
 
次は、これから年金生活になるまでに貯められるお金を見ていきましょう。収入が減ったとはいえ、いまの家計ならば59歳までは月5万円(年60万円)は貯められるはず。ボーナスは全額貯金とのことですから年140万円、くわえて60歳の退職時には550万円の退職金が受け取れます。これらを合計すると1150万円。退職後は月収が減るため毎月は赤字になりますが、64歳までもらえる年140万円のボーナスは貯められますから5年間で700万円。ということは、夫が年金生活に入るまでに1850万円の貯蓄を増やせる計算になります。ここから先ほど計算した60歳以降の不足額594万円を引くと1256万円。想定外の支出があったとしても、いまある資産に約1000万円をくわえた状態で年金生活をスタートすることができるのです。
 

アドバイス2 介護が必要になったときのことを夫婦で話しておく

まだまだ先のことと思うでしょうが、どこで、どのような介護を受けたいのかによって介護費用は大きく変わってくるため、夫婦で話し合っておくことをおすすめします。
 
夫婦の両親4人の介護をしているクリムさんを見ているので、夫はクリムさんに介護をしてもらいたいと考えているかもしれません。クリムさんがヘルパーさんと協力しておこなう在宅介護ならばそれほど費用は掛かりませんが、夫をクリムさんが介護する場合は“老老介護”になります。クリムさんの負担も考慮しつつ考えてみてください。
 
また平成30年簡易生命表によると平均寿命は男性81.25歳、女性87.32歳で、その差6.07歳。クリムさん夫婦の年齢差を考えると、クリムさんの一人暮らしは約10年と想定できます。その間を、どのように暮らしたいと考えますか。たとえば有料老人ホームなどへ入居することを考えた場合、施設の費用はさまざまですが、都市圏の介護付有料老人ホームの場合は月に25~30万円程度かかるのが一般的です。遺族年金は12~13万円くらいでしょうから、月15万円くらいの負担が必要となり10年と考えると1800万円が必要です。
 
もちろん十分な資金がありますから、介護付有料老人ホームも充分に選択肢に入ります。資金的に余裕があるだけに具体的にイメージしておくことで、余裕資金を有意義に使うことができると思うのです。たとえば介護資金を準備しても十分な余裕があると考えるなら、年金生活になって小遣いを減らす代わりに夫婦それぞれが一時金としてまとまったお金を持ち、それぞれが自由に使うようにするのもいいでしょう。
 

アドバイス3 流動性預金が十分あるので投資信託での運用は継続

両親の介護を経験しているクリムさんはご存じでしょうが、認知症になると成年後見人制度を利用しないと投資商品の売却をしたり定期預金の解約などができなくなります。そのため、一般的に高齢になったら投資商品は順次、売却して預金にした方がいいといわれます。
 
ただし、それは流動性資産が少ない人の場合。クリムさんの場合は十分な資産があるので、運用を続けても問題ありません。逆に運用しないと、もったいないといえます。投資信託については、このまま相続財産にしてもいいくらい余裕があるのではないでしょうか。いずれにしても、前項でお話しした介護費用によって余裕資金は変わってきますので、その点を考慮して売却時期を検討してください。
 

相談者「クリム」さんより寄せられた感想

私の年金受給までの収支を分析いただき、主人の定年までに老後資金を上積みできるとのお言葉をいただき大変安心いたしました。現在築10年のマンションにおりますので今後の住宅メンテナンス費用の予算を組むこと、有料老人ホームも視野にその費用をきちんと管理していくことなど、気持ちを引き締めていこうとさっそく主人と話し合いました。また定年後は、ご提案くださいましたように少しまとまったお金をそれぞれ持ち、お互いのプライベートも尊重しつつ充実した老後を楽めたらと嬉しく話し合えました。

これまで食費は食材にこだわり、調味料やドレッシングなどほとんど手作りし安全で美味しく節約にもなりました。また洗剤や化粧水、子どもや私の洋服も趣味のハンドメイドを生かしてまいりましたのでこれからも続けたいと思います。そのような暮らしに「きちんと家計を管理している」との畠中先生のお言葉をいただけとても嬉しく感激いたしました。畠中雅子先生、スタッフの皆様に心より感謝申し上げます。これからもマネープランクリニックを楽しみに拝読させていただきます。この度はどうもありがとうございました。
 

★「お金の悩みを解決!!マネープランクリニック」の過去記事はコチラへ
★「お金のことで悩む人に、貯金のコツを伝授!貯蓄達人の貯めワザ」はコチラ


教えてくれたのは……
畠中雅子さん
 
 

 

ファイナンシャル・プランナー。大学時代からフリーライターとして活動し、出産後にマネー分野を専門とするライターとなりFP資格を取得。新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載やレギュラー執筆を持つとともに、セミナー講師、講演などを行う。「教育資金作り」「生活設計アドバイス」「住宅ローンの賢い借り方、返し方」「オトクな生命保険の入り方と見直し方」などのテーマを得意としている。近著に『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』『貯金1000万円以下でも老後は暮らせる!』『50歳からのハッピーリタイア準備』など


取材・文/鈴木弥生

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