パンは体に悪い? ご飯よりパンが高カロリーになりやすい理由
「パンは健康に悪い」「パンはご飯より太りやすい」……パン食の本当のところは?
ご飯は米を炊くだけでできますから、原材料は「米」のみです。これに対しパンは、「小麦粉」のほかに「イースト菌」「食塩」「砂糖(イーストのエサとして)」「バター」「卵」「生クリーム」などを加えて作ることが一般的なので、どうしてもかさの割に高カロリーになりやすいという特徴があります。最も材料がシンプルなベーグルやフランスパンでも、小麦粉と食塩、イーストが必須です。食塩無添加のパンは物理的には作ることができますが、残念ながらあまり美味しいものではありません。
「パンは体に悪い」は嘘? パン食が原因となる病気はあるのか
ではパンはご飯に比べて健康に悪いのでしょうか? 結論からいうと、パン食が健康に悪影響を与えることは基本的にはありません。もしパンが健康に悪い影響を及ぼすようでしたら、パン食がメインのヨーロッパやアメリカの人たちは元気に生きていられないはずです。深刻な影響があるとすれば、グルテンを含む小麦などのパンの原材料にアレルギーがある場合と、パンの食べ応えの軽さから極端に量を食べ過ぎてしまう場合だと思います。
入院中の患者さんに提供する病院食は、通常の献立以上に身体への影響にしっかりと注意を払って考えられていますが、もちろん病院食でもパンは提供されています。健康に問題がないのはもちろんのこと、病院食ならではのパン食のメリットもあります。まずご飯ばかりで食事に飽きてしまうのを避けられること。次に、袋に入ったものを仕入れれば皿に乗せてそのまま提供できるため、とても衛生的で、調理員の手間も省けて他の料理が増やせること。火も使いませんので、夏などは本当に重宝します。そして最後に患者さんが「手で持って」食べることができるので、身体を動かすことが困難な方でも、自力で食事をすることの喜びを感じやすいことが挙げられます。パンの間におかずを挟めば、理論的には自力で完食できます。
健康管理に気を使っている病院においても、このようにパンは普通に提供されています。強いてパン食のデメリットを挙げるとすれば、先述の通り、食塩を入れないパンは美味しくないので、どうしても食塩摂取量が上がってしまうことでしょう。パンを食べるときには、スープに浸して食べたいといったご要望もあるので、一緒にスープを提供すると、食塩摂取量はさらに上がってしまいます。朝食をパンにした場合、昼食・夕食で食塩使用量を調整することになるので、パンを提供する日の献立は、食塩に関しては頭を悩ませる面もあります。
それでも患者さんからの「パンが食べたい」のご要望は強いですし、ご要望があれば可能な限りそれに応えたいというのが、各施設の栄養科の心意気です。少なくとも2日に1回くらいは提供している施設が多いと思います。健康への影響は心配せずに、安心して食べられる食品です。
健康にいいパンの種類・菓子パンを食事としてカウントするのはNG
パン食で健康を損ないたくない場合、注意が必要なのは一般に「菓子パン」と呼ばれているものです。アンパン、チョコパン、メロンパンなどの菓子パンはお菓子としてカウントし、食事として食べないようにしましょう。これに対して「食事パン」と呼ばれる、食パン、ロールパン、マフィン、フォカッチャなどで、プレーンのものや、野菜や卵、肉、魚などが混ぜ込んである(包み込んである)ものは、食事として食べても問題ありません。
「パン食は太る」「パンは不健康」説に振り回されないために
「ダイエット中はパンよりもご飯のほうが水分含量が多いため、やせやすい」という逸話があります。この逸話が伝言ゲームのように変形して伝わっていった結果、「パンは健康に悪い」とか「パンを食べると太る」といった悪いうわさにつながってしまったのではないかと推測します。しかし、先述の「パンよりもご飯のほうがやせやすい」という説も、あくまで「ご飯の水分含量が多い」ことにより、少量でも満腹になりやすかったり、腹持ちがよかったりすることが多いため、どちらでも選べるときは、ご飯を選ぶとよいですよ、という程度のことです。
パンが食べたいときには、飲み物で水分摂取をしっかりすることを忘れないようにすれば変わりはありません。また、腹持ちが良くない可能性が高いので、野菜などでかさましをして、腹持ちを良くするなどの工夫もしながら、上手にパン食も楽しんでいただけるとよいと思います。ただし、ご飯に比べてパンは食塩含量が多いので、食べ過ぎには注意してください。