ペットボトル飲料で多い「カビ汚染」報告
コップなどに注がずに飲める手軽さもペットボトルの魅力。一方で菌増殖のリスクも忘れてはいけません
これまでに、ペットボトル飲料による食中毒の報告は見あたりません。しかし厚生労働省によると、ペットボトル飲料を含む清涼飲料水に関する苦情は、毎年、地方自治体やメーカーへ報告されています。主な苦情の内容は「微生物の汚染」で、その7~8割が「カビ」でした。
ペットボトル飲料は安全だと考えてよいのか、どのような点に注意する必要があるのか。猛暑が続く水分補給が大切な時期だからこそ、身近なペットボトル飲料についても正しく知っておきましょう。
未開封ペットボトルは安全性が高い! 未開栓なら賞味期限後も大丈夫?
日本では、企業努力により食品衛生法に基づいた生産と徹底した品質管理が行われています。ペットボトルは開栓されるまで菌の侵入がしっかり防がれ、安心して飲める状態で市場に出回っています。賞味期限切れでも開栓していなければ飲めると考える方が多いようですが、実際、開栓していなければ賞味期限が切れたからといってすぐに腐ってしまうようなことはありません。 ただし、賞味期限が切れると品質が少しずつ劣化してしまうため、風味なども損なわれる可能性はあります。
そしてその反対に、賞味期限にいくら余裕があっても、一度開栓したペットボトル飲料は安全な状態が保ちにくいという事実もあります。
開栓後のペットボトルの危険性……特に「口飲み」後は注意
ペットボトルやマイボトルなど、飲んでいる途中で蓋ができる「リキャップ」ボトルは移動にも便利ですが、封を開けて口飲みした場合、様々なリスクがあります。中身が空気に触れることで中の飲料は酸化するため、開栓と同時に劣化が始まります。衛生微生物研究所によると、空気中には1立方メートル辺りに数個から数千個のカビがあり、ペットボトルの蓋を開けてそのまま置きっぱなしにしているとこれらの菌が入る可能性があります。またコップなどに注がずに口飲みすると、食べかすや唾液の細菌が飲料に移行します。
このように、時間の経過や環境状態によっては腐敗やカビなどの発生につながる恐れがあります。
飲める? 飲めない? ペットボトル飲料の変質チェック
味が酸っぱいなどの異味や異臭、見た目で色が濁っている、固形物が見られるといった飲み物自体の変化に気づいた場合はもちろん、容器が変形している場合はガスが発生していることが考えられるため、劣化・腐敗と考えた方がよいでしょう。野菜や果汁飲料など、もともと濁っていて異変がわかりにくいものもありますが、開けたばかりだから、そんなに持ち歩いていないからと安心せずに、五感を働かせることが大切です。いつもと違うと感じたら、もったいないと考えずに捨てましょう。また異変がわからなくても、口飲みして翌日のものは廃棄しましょう。
ペットボトル飲料を安全に飲むための3カ条
身近なペットボトル飲料ですが、菌が増殖したり、腐敗したりした状態で飲んでしまっては大変です。2019年8月現在、ペットボトル飲料での重大な食中毒の報告などはありませんが、体調が悪い時などは菌に汚染された飲食物で嘔吐してしまったり、身体の不調につながるリスクがあります。安心して安全に水分補給をするためにも、以下の3ポイントをぜひ押さえてください。- 開栓したら、飲まない時は蓋をして冷蔵庫に入れる
- 口飲みしたペットボトルは早めに飲み切る
- できるだけ少容量のペットボトルを利用する
口飲みに関しては、口腔内の菌数やその時の温度に差があるため、「何時間までなら安全」といえるものでもありません。できるだけ早めに飲み切るようにしましょう。一度でも口飲みをすれば、すぐにキャップをして冷蔵庫に入れても菌は混入しています。冷蔵庫内では菌の増殖のスピードは遅くなりますが、増殖そのものは止められません。口飲みした前日のペットボトル飲料は飲まないようにしましょう。
ペットボトル飲料はとても便利で、夏場のこまめな水分補給の強い味方です。少しの工夫で清潔に保てるので、ぜひ取り入れてみてください。
■参考
- 清涼飲料水中の汚染物質に関する研究(厚生労働省)
- 清涼飲料水中の汚染物質に関する研究(厚生労働科学研究データベース)
- 生活と微生物カビQ &A(衛生微生物研究センター)
- 清涼飲料水ハンドブック(全国清涼飲料連合会)