コンビニパンは添加物・保存料を含むから身体に悪い?
「イーストフード・乳化剤不使用」のものも選べるコンビニパン。この表示がないパンは健康に悪いのでしょうか?
いわゆるコンビニパンの方が製造から、運搬され各店舗に届くまでに時間がかかり、また、消費者が購入するまで傷まないようにする必要があるため、保存料が多く入っている傾向があるかもしれません。
また、昨今では「イーストフード不使用」「乳化剤不使用」などの表示があるパンもよく見かけます。これらがアピールポイントになるということは、多くのパンに使われているイーストフードや乳化剤は本当は良くないものなのだろう……と考えるのが、多くの消費者心理かもしれません。今回は、これらの添加物の役割と危険性・安全性について解説します。
<目次>
- イーストフードや乳化剤は体に悪い?危険? 添加物の役割と使われ方
- 「イーストフード不使用」「乳化剤不使用」以外のパン=危険ではありません
- パン好きな人が、イーストフードや乳化剤以上に気をつけるべきこと
イーストフードや乳化剤は体に悪い?危険? 添加物の役割と使われ方
パンは焼く前に「発酵」させることで膨らみ、ふわふわになります。この発酵に不可欠なのが「イースト菌」。イースト菌は、パン生地の発酵中に炭酸ガスとアルコールが発生することで、小麦粉のグルテンの間に空気の層を作ります。この層がパンの「ふわふわ感」の元です。イースト菌は酵母の一種で生物ですから、エサが必要です。そのエサがまさに名前の通りの「イーストフード」。イースト菌のエサになるものであれば、何でもOKなので、砂糖なども使えます。実際に私が助手だった頃の製パン実習では、イーストフードとして砂糖を使っていました。一方で、工業的には16種類の添加物、具体的には塩化アンモニウム、塩化マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、リン酸三カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、焼成カルシウムと、加工助剤として「臭素酸カリウム」のうちから4~5種類を混合し、「イーストフード」として用いているようです。
つまり、「イーストフード」と表記されていても、その中身は同じものではなく、どのパンに何が入っているのかは分かりません。そして、上記の17種類の添加物の中には有害性を疑われているものも含まれるため、「イーストフード」と丸めて書かれることで、「イーストフードが入っているなら、身体に良くないんじゃないの?」という考えが広まったのではないかと思います。
また、「乳化剤」は食品をクリーミーにする添加物です。そして乳化剤もまたイーストフード同様、成分が単一ではなく、その成分の中に有害性を指摘されたものが含まれています。そのため、丸めて「乳化剤」と書かれることで、イーストフードと同じように健康に良くないのでは?と考えられるようになってしまったのかもしれません。
「イーストフード不使用」「乳化剤不使用」以外のパン=危険ではありません
先ほど「有害性を疑われているものも」と書きましたが、イーストフードにしても乳化剤にしても、それが毒性がある化合物であったとしても、それは通常は人に食べることができないくらい、大量に食べた場合のことです。パンなどに使われているものは、国の緻密な実験により定められた「一生食べ続けても安全な量」の規定範囲内の量に過ぎません。使用量はごくごくわずかです。
たとえるなら、プールにインクを1滴、落とすようなもの。どんなに濃い色のインクを落としても、混ぜれば何色のインクを落としたか、分かりませんよね? プールの水の色や水質に影響を与えることはありません。イーストフードや乳化剤の有無にこだわるよりも、おいしそうだなと思えるパンを選んで食べることを楽しんでいただきたいです。
パン好きな人が、イーストフードや乳化剤以上に気をつけるべきこと
上で解説した通り、イーストフードや乳化剤を含んでいたとしても、それによって健康上の問題があるわけではありません。ただし、コンビニパンであれパン屋さんのパンであれ、商品によってはいわゆる菓子パンのように砂糖の使用量が非常に多かったり、栄養が偏っている商品も少なくありません。おやつの範囲で楽しむなら、甘いパンも心の栄養だと考えられますが、食事代わりにパンを食べる際には、ホットドッグやサンドイッチなどの食事らしいパンを選ぶようにするといいと思います。
そしてもう1点、米飯と比べた場合、パンにはバターやマーガリンなどの油脂が含まれています。また、普通の米飯には入っていない食塩も入っています。油脂は高カロリー、食塩は塩分の摂りすぎになりますので、パン食が中心になっているという方は、選び方や食べ過ぎに注意するようにしましょう。