自分の得意や強みを磨く
自分の持ち味そのままで生きられる環境に身を置くには、やはり向き不向きがあります。たとえば、イチローが野球ではなくサッカーに打ち込んでいたら、今ほどの偉業を成し遂げられるかというとそれはわかりません。私の知人に、内気で人見知りな男性がいるのですが、彼は当時勤めていた住宅メーカーでトップセールスになりました。営業部に配属されたばかりの頃、彼はその内気な性格が災いし、全く売れませんでした。
2年目に入り、さらに4カ月経っても1棟も売れず、そうなると普通は辞職や転職を考えるのが、その業界の通例といいます。そのとき彼は、こう考えたそうです。自分からアプローチするのは苦手だし、やりたくない。ならば、客の方から会いに来てもらえるようにできないか――と。
それで思いついたのが、今ではポピュラーなマーケティング手法となっているセールスレターです。彼は対面でのコミュニケーションは苦手でも、文章を書くのは得意だったからです。
彼はそのレターに、満足できる家の選び方や顧客の声など、これから家を買おうとする人に役立つ情報、自社や自分の住まいに対する思い、自身の近況などを書いて、展示場の来場者や資料請求した人に送り続けました。
そしてしばらくすると、客の方から「具体的に相談したい」と連絡してくるようになり、やがてトップ営業マンとなった彼は、脱サラして現在は営業コンサルタントの仕事をしています。
短所より長所に目を向ける
エネルギッシュで社交的な人がうらやましい、そうでない自分は情けないなどと落ち込むのではなく、自分が内向的なら、内向的でも活躍できる仕事や職場を選ぶ。コミュニケーション能力が低いなら、それを底上げする努力をするよりも、コミュニケーション能力が低くてもできる仕事に就く。そうやって、自分が得意で誰かの役に立つ分野に注力し、そこに打ち込み成功体験を積むことです。欠点を直すには、多大なエネルギーを要する上に、たいして楽しくないでしょう。
長所を伸ばすことが成功への近道
そこで、「それはどうしても直さないといけない欠点なのか?」「ここの場所で努力するメリットはあるのか?」「この我慢を続ければ、本当に明るい未来が待っているのか?」と、振り返ってみることです。
他人と比較しない
成功しているように見える人、活躍しているように見える人、キラキラ充実しているように見える人がいます。 心の中を見ることはできませんから、本当のところはどうなのかわかりません。しかし、明らかに自分よりも恵まれていそうな人や幸せそうにしている人を見て、嫉妬したり落ち込んだりしたことはないでしょうか。特にネット情報で、成功したという結果だけを瞬時に見ることができるし、SNSはそういう自慢の場として大勢の人がアピールしていますから、他人と比較して自分はしょぼいなどと暗い気分になってしまう人も少なくないようです。
ただし、SNSは自己愛を満たすには手軽なツールですから、そこでリア充アピールをしている人は、承認欲求が満たされていない人がほとんどです。なのでそれらを見て落ち込む必要はまったくないと知ることです。
成功している人は、自分自身をよく知っている
とはいえ、実際に成功して活躍している人はやはりいます。彼らが輝いて見えるのは、自分の長所を認識し、そこで勝負しているからです。自分の特技や強みがわかれば、それをどう表現すればよいかを模索しようとします。サッカー選手にお笑いの才能がなくても、誰も気にしないでしょう。やはり得意な分野で勝負をすることが、自分を輝かせる唯一の方法です。しかし多くの人は、自分にはお金がない、才能がない、チャンスがない、頭が悪い、人付き合いが下手、などマイナスの部分をより強調して認識しやすい傾向があります。
あるいは、それをコンプレックスとして引きずってしまう。なぜか自分の欠点はよく見えるのに、長所や強み、伸ばすべき能力はなかなか見えないものです。
たとえば、芸能界の仕事と一言でいっても、歌、芝居、ドラマ、映画、漫才、リポート、お天気解説、料理、ミュージカル、バラエティなど、いろいろな分野があるわけで、すべての領域で秀でる必要はありません。それらの中のどれか1つで輝けばよいのです。
実際、お笑い芸人としては芽が出なくても、料理の分野で売れている人がいますし、歌は下手でも演技力で活躍している人はいるでしょう。だから自分には向かないと思ったら、すぐに方向転換することです。
それは3日坊主でもよいということではなく、自分との適正を冷静に峻別するという意味です。それにはやはり、自分はどういう人間で、どういう性格や傾向を持ち、何が得意で何が苦手か、何をしているときに幸福を覚え、何をしているときが苦しいかを見極めておく必要があります。
■出典:『「できないことはやらない」で上手くいく 嫉妬、コンプレックスを「捨てる」技術』(WAVE出版)
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