アドバイス1 すぐに退職、即リタイアでも資金的に問題なし
現在の勤務先を即退職、リタイアをした場合のキャッシュフローを見ていきましょう。設定として、ヒゲダルマさんは退職後、働くことはしない、つまりフルリタイアとし、奥様は65歳までパートを継続。また、リタイア後の生活費ですが、想定されているとおり年間300万円、月額25万円とします。生活費からパート収入を差し引くと16万7000円、年間で約200万円の赤字です。ヒゲダルマさんが65歳を迎えるまでの8年間で1600万円。これを貯蓄から差し引くと、手持資金は4000万円(利息分考慮せず)ほど。
さらに、大きな支出とクルマの買い替え費用に200万円、自宅と別荘のリフォーム費用に400万円が今後想定されるとのことですから、手元に3400万円が残ります。
65歳からは公的年金の支給となります。言われているとおり、休職期間や定年まで勤務しないとなると、「ねんきん定期便」に表記されている金額より下がるでしょう。また、奥様もこの時点で2年間、厚生年金の特別支給分4万8000円を受け取ります。したがって、税、社会保険料を差し引いた手取り額で18万円前後でしょうか。
これにパート収入を加えた26万円ほどが月額の世帯収入。結果、少なくともこの2年間は、普段の生活費に対して貯蓄=老後資金を取り崩すことはないということになります。
先の設定では67歳以降、奥様もパートを辞め、世帯収入は年金だけとなります。受給額は手取額で23万円とすると、毎月2万円の赤字。30年間で720万円。それでもまだこの時点(ヒゲダルマさん97歳)で2700万円近くが残ることになります。
もちろん、生活費以外にまとまった支出が発生する可能性は当然あります。住宅の修繕・リフォーム費用、病気・介護費用、もう1回クルマを買い替えるかもしれません。それでもそれらが一般的なコストなら、予備費として1000万円もあればとりあえず対応できるのでは。さらにいえば、別荘をいずれ売却するとのこと。想定より価格が下がったり、あるいは売却コストが増え、手にするのは1000万円になったとしても資金的には十分過ぎるほどの余裕となるでしょう。
つまり、結論としては、今すぐ退職して、そのままフルリタイアされても資金的にはほぼ心配は要らないと考えていいでしょう。安心してください。さらにいえば、ボーナスから捻出していた年間の旅行費用10万円は先の試算には考慮していませんが、20万~30万円を支出したとしても資金的には何ら問題ありません。
アドバイス2 「義理」よりも「自分」を優先させる
これまでの試算は、ヒゲダルマさんがもっとも早く退職するケースです。ご相談文では、定年まで勤務することも選択肢にはあるようですが、そうなれば言うまでもなく、資金的余裕はさらに大きくなります。退職時期を決めるのは最終的にはご自身です。ただ、深い事情、これまでの経緯はわかりませんが、もし早く辞めたいが義理で辞められないというのであれば、個人的な意見ですが、義理よりも自分を優先すべきだと考えます。「やる気がない」ことを続けることで悩み、それがストレスになって身体を壊してしまっては、それこそ働く意味がありません。試算の設定で退職後フルリタイアとしたのは、ヒゲダルマさんに今必要なのは何より「休息」だと感じたからです。
ともあれ、奥様と十分話し合い、自分はどうしたいのかを考えてみてください。その決断が、結果的には長い老後を充実させるための大きなポイントになるのだと思います。
試算したようにお金の面に心配はいりませんが、ゆっくり休まれたあと、生活のリズムを整えるためにアルバイトやパートなどを行い、社会と関わっていかれるのも一考の余地があると思います。
相談者「ヒゲダルマ」さんより寄せられた感想
丁寧な診断、アドバイスをいただけましたことに、まずはお礼申し上げます。早期リタイアに対して、資金面で不安を感じ、先に進むことができない状態でしたが、安心しました。実際のリタイア時期は、義理だけでなく、妻との話し合い、それから自分の精神面や身体面ともう一度向き合った上で決めたいと思います。教えてくれたのは……
深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など
取材・文/清水京武
★お金の悩みを解決!!マネープランクリニックの過去記事はコチラへ
【関連記事をチェック】
51歳貯金9000万円。体調を崩して転職したが、新たな職場も不安
53歳貯金ゼロ。住宅ローン以外に毎月11万円返済、2年後には教育ローンも
54歳貯金290万円。子どもに迷惑のかからない老後はどうすれば
57歳パート、貯金4400万。自宅売却とマンション買い替えて大丈夫?
57歳貯金4300万円。定年後1500万の車を買っても老後破綻は大丈夫?