皮膚・爪・髪の病気

チンクイの対処法・予防法・刺されたあとの治し方

【皮膚科医が解説】海水浴の後、「チンクイ(プランクトン)に刺された」といった話を聞くことがあります。かゆみを伴う赤いブツブツが出る症状から考えられる原因と対処法、刺されたあとの治し方を解説します。

野田 真史

執筆者:野田 真史

皮膚科医 / 皮膚の健康ガイド

海水浴後の皮膚トラブル……日光アレルギー・日焼け・クラゲなど

チンクイとは?海水浴後の皮膚トラブル、海水浴性皮膚炎の対処法・予防法・治し方

手軽に楽しめるシュノーケルや海水浴などのマリンレジャー。暑い季節ですが、皮膚を守ることも大切です

海水浴やシュノーケル、スキューバダイビングなどのマリンレジャーを楽しんだ後、皮膚トラブルが起こることは珍しくありません。皮膚科受診されるケースで多いのは、日光のアレルギーによるものや日焼けなどによる症状と、クラゲなどに刺された症状によるものです。

日光のアレルギーにはいくつか種類がありますが、顔や手の甲、腕といった日に当たりやすい部分が赤くなったりむくんだりします。多くの方が顔にはしっかり日焼け止めを塗っているので、手と腕だけに症状が出るケースも見られます。日差しが強くなる初夏に、毎年日光が強く当たる部位が赤くなって腫れるという「多形日光疹」による症状もあります。日焼けの場合は顔、肩、背中、腕を中心に、赤みやがさがさが出ます。

<目次>  

クラゲに刺された場合の症状・症例画像

クラゲに刺された場合、たいてい泳いでいる最中にチクっとした感覚があります。腕や脚を刺されてることが多く、強いかゆみやひりひりのある水ぶくれや赤みが線状に複数出るのが特徴です。反応が強いと痛みを感じることもあります。

■クラゲに刺された場合の症例画像
クラゲに刺された症例画像

クラゲに刺された臀部の症例画像

 
クラゲに刺された症例画像

クラゲに刺された大腿後面の症例画像


また、クラゲほどひどい症状ではなく、医学的な正式名称はありませんが、小さなプランクトンなどに刺されるケースも国内外を問わずあるようです。
 

チンクイとはエビやカニの幼生であるプランクトンによる被害か

マリンレジャーを楽しまれる方からは、「プランクトンに刺された」「チンクイに刺された」といった言葉を聞くことがあります。私もそれらに関する文献を調べてみましたが、友人の皮膚科医を含めて、「プランクトンに刺される」といった事例や、医学的に正式な論文などでは取り上げられていませんでした。

英語の文献ではseabather's eruptionというそれに対応するクラゲなどの幼生であるプランクトンによる海水温が高い時になる皮膚炎が報告されています。フロリダやカリビアンの海で泳いだあとにかゆくて赤いポツポツが出るのが特徴とされています。

医学的には虫やクラゲに刺された際のアレルギー反応に近いものと思われますが、「チンクイ」「プランクトン皮膚炎」などと呼ばれるものは、あくまでも俗称です。エビやカニの幼生であるゾエアというプランクトンによるものと考えられているようです。被害の例としては、特に夏の暑い時期に発生しやすく、海で泳いでいるときに刺されて、かゆみを伴う赤いボツボツに悩まれる方が少なからずいらっしゃるようです。

いずれにしてもこの「チンクイ」「プランクトンによる湿疹」などと考えられているものは、クラゲに刺されて水ぶくれになるようなひどい症状はなく、主な症状はボツボツとかゆみのようです。皮膚科を受診される方は少ないようで、私もこれまでの診療の中で診たことはありませんし、診療の中で話題になったこともありません。しかし、繰り返し海に行く方や、ダイビングなどを楽しまれる方には、地味に不快な症状が続くため、頭の痛い存在のようです。
 

チンクイの対策法・予防方法刺されないよう皮膚をカバーすることが第一

「チンクイ」と呼ばれているものが実際にどの生物を指すのかが明確でなく難しいところですが、海中で皮膚を露出している以上、小さな生物による被害を完全に予防するのは難しいでしょう。しっかりしたウェットスーツで覆われた部分はあまり刺されないようですので、チンクイが出やすいと言われている海で泳ぐときには、なるべくウェアなどで工夫し、肌の露出範囲を少なくするのがよいでしょう。
 

チンクイに刺されたらどのくらいで治る? 多くは一週間程度で自然治癒

虫刺されに似た強いかゆみを伴う赤いポツポツですが、多くはそこまでひどくなることはなく、一週間程度で自然とひいていくようです。刺されたという話を聞く割には、皮膚科受診をされる患者さんを見かけないのはそのためでしょう。ただし、他の虫刺されやかぶれなどと同様、かゆみがある以上は、掻くなどして悪化すると長引くこと考えられます。早く治しないのであれば、かきむしらないように注意して、場合によっては患部を冷やして、自然経過を待つのがよいでしょう。
 

チンクイの治療方法・効く薬・皮膚科にいく目安

かゆみを抑えるという意味では、ステロイドの塗り薬が効果的と考えられます。冷やしたり、メントールなどスース―する成分が入った市販の虫刺され薬なども、かゆみを一時的に抑えるには有効です。

眠れないほど強いかゆみが2~3日継続したり、赤みの範囲が広がってきたりした場合は、皮膚科を受診しましょう。刺された箇所そのものを治す方法は残念ながらありませんが、市販薬よりも強いステロイドの塗り薬やアレルギーの飲み薬を処方できるので、かゆみの症状は抑えられます。
 

海水浴後の湿疹やかゆみに悩まれている方に

ボツボツが気になったり、かゆみが強かったりする場合でも、他の虫刺されや蕁麻疹と同様、かかないことが大切です。かくことでかゆみはさらに増しますし、掻き壊すとボツボツの範囲が広がったり、じゅくじゅくしてとびひになってしまうことがあります。患部を冷やすなどしてかゆみを抑え、かかないようにする工夫が有効です。また、チンクイが出ると言われているエリアで泳ぐ場合には、手足をしっかり覆えるウェットスーツを着用するなど、上手な予防策を取り入れるようにしましょう。

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