お金の悩みを解決!マネープランクリニック/50代以上の家庭のお金悩み相談

51歳貯金9000万円。体調を崩して転職したが、新たな職場も不安(2ページ目)

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。今回の相談者は、前職での激務で体調を崩し、51歳で転職をした会社員男性。ただし、そこも思っていた業務と違い、続けていくことに不安を感じるとのこと。老後が迫り、今後どの程度の収入なのか……。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

あるじゃん 編集部

執筆者:あるじゃん 編集部

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アドバイス1 資金的には明日からリタイアも可能

今後の収入をどのくらいに設定すれば老後が乗り切れるかということが、メインのご相談ですが、極論をいえば、ゼロでも構いません。明日からフルリタイアされても試算上は問題ないということです。
 
では、ぴろあさんが新しい職場も退職し、今月から無収入になったら、その後のキャッシュフローはどうなるのか。それを見ていきます。

ただし、これまで「奥様は別財布」とのこと。それは、奥様の収入は一切生活費に関わっていなかった(ぴろあさんの収入だけで家計も貯蓄もまかなっていた)のか、あるいはあくまで貯蓄等を分けていただけなのか。その点が不明ですが、ここでは前提として、リタイア後は奥様の収入で生活費をまかなう形で試算をします。
 
まず、世帯収入ですが、社会人のお子さんの収入は考慮しませんので、奥様の給与20万円とボーナス30万円。対して、支出ですが、毎月の生活コストは基本的に変わらないとします。また、毎月の生活費以外のコストとして、固定資産税と自動車の維持コスト(税金、保険、車検等)がありますが、これは奥様のボーナスでちょうどカバーできるでしょう。あとは、ぴろあさんが健康保険では奥様の扶養に入るとしても、国民年金保険料は発生します。これを加算すると、毎月の生活費は29万円ほど。したがって、毎月9万円、年間108万円の赤字となります。
 
奥様が定年となるまでの10年間で赤字幅は1080万円。今ある貯蓄からそれを補てんすると、残りは7920万円。また、このときクルマの買い替えをしたとすると、手持資金は7400万円ほど。ただし、途中で介護保険の解約返戻金が1000万円入るとのことですから、それを加えれば8400万円となります。
 

アドバイス2 教育費がなくなったら「自分」のために使う

奥様は定年後も65歳まで働くとします。その間の収入は未定ですが、とりあえずパート程度=年間100万円の手取り収入と想定します。一方、生活費では夫婦とも60歳以降、支払い保険料がなくなります。お子さんが独立すれば、食費や水道光熱費なども下がるでしょう。

また、教育費もお子さんの大学院修了とともに発生しませんが、ここではあえて差し引きません。教育費がなくなって以降、月5万円は、ぴろあさん、あるいはご夫婦のお小遣いとしてカウントします。新たに加算される生活費としては、社会保険料(ぴろあさんの国民年金保険の支払いは終了)に固定資産税等。これらを月割りにして加算して、おおよそ26万円としました。結果、年間の赤字額は210万円ほど。奥様64歳になるまでの4年間で840万円。64歳以降はぴろあさんが公的年金を受給しますので、奥様60~65歳の5年間で家計赤字は900万円前後。それでもまだ、7500万円が手元に残ります。
 
奥様65歳以降は夫婦ともリタイアされて、収入は公的年金だけとします。現時点で示された年金受給額は、確かにこのままでは老齢厚生年金部分は減りますが、それでも夫婦合算での手取額は250万~260万円にはなるのではないでしょうか。したがって、年間の家計赤字を50万円前後。100歳まで生きて35年間、トータルの赤字は1750万円。つまり100歳の時点でまだ4750万円、手持資金が残っている計算になります。
 
もちろん、今後どのような支出が発生するかはわかりません。想定されるものとしては住宅リフォーム、介護費用、医療費用、長生きリスクなどですが、その費用が一般的な範囲であれば、それらを考慮しても資金的にはまず老後は問題ないと考えていいでしょう。
 

アドバイス3 大事なのは仕事を離れ、休息すること

ただ、「明日からフルリタイアが可能です」と言われても、それを希望していなければ、すぐに気持ちは切り替えられないはず。それはそれで構いません。大事なことは、今のぴろあさんには休息が必要だということです。
 
これまでの激務と環境の変化で体調を崩されたわけですから、きっちりと治すことが最優先です。「早急に体調を整えて」とありますが、慌てることの方がリスクがあるのでは。時間をかけて健康を取り戻すことです。そのために多少支出が増えても問題はありません。教育費がなくなってからの5万円はそのまま小遣いとしたのも、そのためです。
 
何年後かに体調が回復して、もしも働きたくなったら働く。そういうスタンスでいいと思います。収入よりも無理のない仕事、興味のある仕事をアルバイト程度にすれば十分。社会と接点を持つというだけで、働く意味があります。
 
あと、運用について悩まれているとのことですが、候補となっているiDeCoは収入があることでの税制のメリットを活かしたいところ。もし、ぴろあさんに収入がない場合、奥様が自分の給与で始めた方が、世帯としてはメリットが大きいことになります。

もちろん、売却益や配当等に対して非課税というメリットもあります。ただし、それを得るなら、60歳以降でなくては資金が引き出せないiDeCoより「NISA」「つみたてNISA」の方が使い勝手がいいといえます。

そもそも、老後資金は十分用意できています。わざわざ新たなリスクを抱える必要はありません。したがって、運用をするなら金額の枠をきっちり決めること。今から始めるなら、金融資産の多くても2割以内。そして、60歳以降は徐々に投資比率を下げることも重要です。
 
最後に保険について。ご夫婦とも、死亡保障は不要です。加入されているのは定期付き終身保険だと思われますが、ともに払済保険に。また個人年金保険は、残りの保険料は前納してはどうでしょう。それだけの余裕は十分にあります。
 

相談者「ぴろあ」さんから寄せられた感想

3つのアドバイスを頂き、誠にありがとうございます。神経質で生真面目な性格なため、転職期間中の1カ月半の間、働かないことによる社会的つながりが薄れることが気になりました。今回、資金的にはそれほど問題ないことがわかりましたし、程々の収入で職種を選り好みしなければ、人手不足の今のご時世、健康であれば何とかなる(する)ことができそうということも学ぶことができました。多分、転職の機会がなければ、私を含む家族全員、年金、保険などについても知らないまま定年を迎えていたと思います。今後はペースを落としたかたちで、健康に気をつけながら仕事を続けていこうと思います。


教えてくれたのは……
深野 康彦さん
 
 

 


マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。近著に『55歳からはじめる長い人生後半戦のお金の習慣』(明日香出版社)、『あなたの毎月分配型投資信託がいよいよ危ない!』(ダイヤモンド社)など

取材・文/清水京武


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