いずれにしても、「年金制度改革は失敗した」「もはや年金だけでは老後の生活は困難」と政府が白旗を揚げたということです。では私たちは、どうすればよいでしょうか。老後不安を少しでも解消するために、今からどう行動すべきかを考えてみました。
老後に向けて今からやっておくべきことは?
1.年金に過度な期待をしないこと
これに異を唱えたり、政府の対応を糾弾したりすることはたやすいですが、言ったところでどうにもならないでしょう。であれば、「自分の老後は自己責任で対処する」と割り切り、問題解決に向けて思考をフル回転させたほうが生産的というものです。まず第一に、年金に過度に依存するのではなく、「あればラッキー」程度に捉え、年金がなくても送れる生活基盤を構築することです。なぜなら、年金に依存すればするほど、いざ頼れなくなったときにどうしようもなくなるからです。
逆に年金に期待していなければ、年金はプラスのお小遣いのようなもので、想定以上のゆとりある老後を迎えることができるでしょう。
2.資産運用能力を身に付ける
次に、貯蓄を切り崩しながら生きるスタイルではなく、利子や配当、賃料収入といった「定期安定収入源」を獲得することです。そういえば前述の報告書によると、「資産寿命(老後の生活を営んでいくにあたって、これまで形成してきた資産が尽きるまでの期間)」を延ばすことが必要とのことです。
これが尽きてしまえば、後は年金だけで生活するほかなくなり、生活保護よりも低い生活水準になる懸念があります。そのため貯蓄だけで長生きすることは、めでたいどころかリスクに直結してしまう可能性も。
もちろん、定年退職後もどこかに雇用されるべく、エンプロイヤビリティを高めたり、副業を始めて独立できる状態を作っておくことも重要です。しかし、「働けなくなる日が来る」「働きたくなくなる日が来る」ことも想定するならば、就業や起業以外にも収入源を確保しておくことは、安心感につながるでしょう。
そこで現役時代から、「配当性向の高い株式への投資」「格付けが高く金利の高い債券への投資」「賃貸用不動産や太陽光の売電事業への投資」といった、継続的に安定した収入を生んでくれる金融商品やリアル資産への投資を推進することです。
3.節税しながら貯蓄を増やす
3つ目に、節税と運用を両立できる保険への加入です。iDeCo(個人型確定拠出年金)や、自営業者なら国民年金基金や小規模企業共済などに加入すれば、掛金全額が所得控除の対象となるため、税金という支出を減らしつつ、貯蓄することができます。あるいは所得控除の上限はありますが、最大の保険料控除を受けられる最小の金額だけ、貯蓄型の生命保険・医療保険・個人年金に加入します。そして、満期返戻のタイミングを、たとえば65歳、70歳、75歳などと分散させておくのです。
4.現役時代から健康に配慮する
そして、日本人の生涯医療費の半分が70歳以降でかかるといわれていますから、現役時代から健康に留意しておくことも大切です。「健康」というと多くの人が食生活の改善に注目しますが、健康を阻害する最も大きな要因はストレスと睡眠です。ストレスは免疫力を弱め疾病リスクを増大させますし、十分かつ良質な睡眠がとれていないとホルモンバランスが崩れて代謝や細胞の修復が滞り、脳や心臓の疾患にかかりやすくなります。ストレスと休息のマネジメントこそが、健康への第一歩です。
食事に関していえば、「これを食べるとよい」「これを摂取すると健康によい」などとプラスで加えていくのではなく、あまり気にせず、まんべんなく腹八分で抑えることです。生活習慣病のほとんどが、「食べ過ぎ」「栄養過多」によって起こるのですから。
5.生活コストを見直す
最後に、生活コストの削減です。特に、収入の多寡と関係なくかかる固定費を減らすことです。たとえばスマホは格安SIM業者で十分だし、もはや固定電話も不要でしょう。まもなく始まる5G通信全盛の時代になれば、スマホとデザリングのみで事が足り、自宅の光回線も不要となるかもしれません。さらに、新聞やテレビも必要なければ解約。これだけでも生涯コストは大きく減らせるはずです。加えるならば、家は持ち家にして定年退職と同時に完済するようにしておけば、老後の住居費は格段に抑えることができます。
今からどう行動するかで老後が決まる!
老後に向けて今からできることを紹介してきましたが、「ふう~ん」「そんなの無理」「わかっているけどなかなか……」という感想を持つ人がほとんどだと思います。そうやって多くの人は「考えるのが面倒くさい」「行動するのはもっと面倒くさい」と、思考と行動を放棄して無策のまま老後に突入します。
老後に笑うのは自ら考え、戦略的に行動してきた人だけである、というのが私の予想です。そしてあなたは、将来はどちら側に立ちたいでしょうか。
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